宇宙と実験室でちがう「小惑星リュウグウ」の不思議

 産業技術総合研究所(産総研)は2023年9月27日、小惑星リュウグウのデータについて公表した。採取した測定データと探査機「はやぶさ2」の観測データでは、違いがあることがわかった。その原因は宇宙風化したことで、水の痕跡が隠されたことだという。

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小惑星リュウグウ
  • 小惑星リュウグウ
  • 「はやぶさ2」搭載機器によるリュウグウの赤道付近を上空から観測して取得した可視~近赤外域の反射スペクトルと、リュウグウ粒子を測定して得られた反射スペクトルを直接比較
  • 観測データ結果

 産業技術総合研究所(産総研)は2023年9月27日、小惑星リュウグウのデータについて公表した。採取した測定データと探査機「はやぶさ2」の観測データでは、違いがあることがわかった。その原因は宇宙風化(宇宙線や宇宙塵にさらされ変質)したことで、水の痕跡が隠されたことだという。

 小惑星は、おもに火星と木星の間に分布する小惑星帯。太陽の周りを公転する天体のうち、惑星や準惑星、衛星を除く小天体の1つだという。

 小惑星リュウグウは、太陽系ができた当時の情報を、今も保持していると考えられる始原的小天体で、地球に近い軌道をもつ「近地球型小惑星」に分類される。水や有機物を含むため、地球や生命の起源に迫るデータとして期待されている。

 始原的小天体がどのような物質でできているかを知るためには、「望遠鏡や探査機からの遠隔観測や隕石分析」「小惑星で探査機が採取した試料を地球へ持ち帰り測定する」の2つが重要だとしている。

 小惑星探査機「はやぶさ2」は、2020年に2回のタッチダウンを行い、小惑星リュウグウの粒子(リュウグウ粒子)を採取することに成功。その後、各機関においてデータを解析した。小惑星探査機「はやぶさ2」による小惑星リュウグウの表面を、上空から観測したデータと、採取したリュウグウ粒子による測定データを解析すると、水の有無を知る鍵となる「OH吸収」が、観測データでは測定データの半分よりも弱いことが判明。これはおもに、「宇宙風化度の強弱」「粒子の大きさ(粒径)」「粒子間の隙間の程度(空隙率)」の3つによる要因が考えられるという。

 今後は、NASAの小惑星探査機「OSIRIS-Rex」などを使用し、さらなる検証を実施。分析結果により「リュウグウが現在までにたどった形成進化過程」「地球・海・生命の原材料間の相互作用と進化の解明」など、太陽系科学の発展に期待が寄せられている。

《宮内みりる》

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