グリセリン(Glycerin)はグリセロールとも呼ばれる単純なポリオール化合物であり、化学式はHOCH?CHOHCH?OHで表される。無色・無臭・無毒の粘性液体であり、高い保湿性と安全性を備えることから、食品、医薬品、化粧品、工業用途まで幅広く利用されている。
2025年における世界のグリセリン生産量は約356万トンに達した。特に高純度グリセリンはUSP(米国薬局方)、EP(欧州薬局方)、FCC(食品化学規格)などの厳格な品質基準への適合が求められ、医薬品および食品分野で不可欠な原料となっている。
グリセリンは、オレオケミカル、バイオディーゼル、高純度化学品産業を支える重要な基礎原料として世界的に需要が拡大している。近年の米国関税政策や各国の貿易規制強化は、グリセリンの国際流通や原料調達に影響を及ぼしている。一方で、医薬品、食品、化粧品向け高純度グリセリン需要の拡大が市場を下支えしており、サプライチェーン再編の中でも安定した成長が続いている。


図. グリセリンの世界市場規模
QYResearch調査チームの最新レポート「グリセリン―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2026~2032」によると、グリセリンの世界市場は、2025年に2766百万米ドルと推定され、2026年には2921百万米ドルに達すると予測されています。その後、2026年から2032年にかけて年平均成長率(CAGR)5.2%で推移し、2032年には3957百万米ドルに拡大すると見込まれています。
オレオケミカル産業とグリセリン供給構造
グリセリン産業チェーンはオレオケミカル産業と密接に結び付いている。上流ではパーム油、大豆油、菜種油、動物性脂肪などの天然油脂が主要原料となる。また、近年はバイオディーゼル製造時に発生する粗製グリセリンが重要な供給源となっている。
世界的な脱炭素政策の推進により、バイオディーゼル生産量は継続的に増加しており、その副産物である粗製グリセリンの供給も拡大している。最近6か月間では、東南アジアや南米を中心にバイオ燃料生産能力の増設計画が相次いで発表されており、今後もグリセリン原料供給の安定化が期待される。
高純度グリセリン市場の競争要因
現在のグリセリン市場では、単なる生産能力競争から高純度化技術競争への移行が進んでいる。特に医薬品、食品、電子材料向けでは不純物管理や精製技術が競争力を左右する重要な要素となっている。
例えば、製薬企業ではシロップ剤や注射剤の添加剤として高純度グリセリンを採用しており、化粧品メーカーでは天然由来保湿剤としての需要が拡大している。さらに電子材料分野では、半導体製造プロセスや特殊化学品用途において超高純度グリセリンの採用が増加している。これらの分野では認証取得能力と品質管理体制が市場参入の大きな障壁となっている。
地域別市場動向と成長分野
グリセリン市場を地域別に見ると、東南アジアが最大の供給拠点となっている。マレーシアやインドネシアでは豊富なパーム油資源を背景に大規模なグリセリン生産体制が構築されている。一方、欧州および北米では高付加価値の医薬品グレードや食品グレード製品への注力が進んでいる。
中国市場では電子材料向けおよび超高純度グリセリン分野への投資が活発化している。特に近年は新エネルギー、自動化設備、半導体産業の発展に伴い、高機能化学品としてのグリセリン需要が拡大している。また、日本市場では高品質志向を背景に医薬品・化粧品用途が引き続き成長している。
グリーンケミカル時代におけるグリセリンの将来展望
今後のグリセリン市場は、バイオベース材料、発酵工学、電子化学品、グリーンケミカル分野を中心に新たな成長局面を迎えると予想される。特に天然保湿剤としての需要拡大に加え、バイオポリマーや環境配慮型溶剤への応用が進んでいる。
市場競争の観点では、P&G Chemicals、KLK OLEO、Wilmar International、Oleon、IOI Group、Cargill、Kao Corporationなどの主要企業がグローバル市場を主導している。今後は高純度化技術、持続可能な原料調達、カーボンフットプリント削減が競争力の核心となるだろう。とりわけ電子グレードグリセリンおよび超高純度グリセリンは、今後最も高い成長率を示す有望分野として注目されている。
本記事は、QY Research発行のレポート「グリセリン―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2026~2032」に基づき、市場動向および競合分析の概要を解説します。
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