
明治大学商学部の加藤拓巳准教授と荒畑徹汰(商学部商学科4年)の研究グループはNHK連続テレビ小説「虎に翼」が明治大学卒業生のロイヤルティに対する学業・研究活動の効果を高めることを実証し、その成果が学術誌Journal of Promotion Managementに採択されました。
大学に市場原理が導入され、世界規模で成長競争が激化している中、卒業生のロイヤルティ向上は極めて重要な課題です。ロイヤルティを通じて、寄付金や大学グッズの販売強化に繋げる施策は、世界の多くの大学で採用されています。ロイヤルティの源泉としては、大学のブランドイメージやスポーツ活動に依存する例が多く、明治大学でもその傾向が顕著です。大学の本業は学業・研究活動であるにもかかわらず、それが卒業生のロイヤルティ向上に効果的に機能していない例が散見されます。なぜなら、学業や研究は専門性の高い内容であり、一般的に理解されにくいからです。広く社会への理解を促進するサイエンスコミュニケーションが重視されているものの、研究者は研究時間の確保を優先する傾向にあり、モチベーションの低さが指摘されています。そこで、本研究は、ビジネスで頻繁に利用されるドラマを通じたマーケティングプロモーションの知見を、大学のサイエンスコミュニケーションの文脈に適用しました。明治大学の卒業生1,614人への調査に基づいて、2024年4月1日から9月27日に放送されたNHK連続テレビ小説「虎に翼」が卒業生のロイヤルティに対する学業・研究活動の効果を強化することを実証しました。
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図1. 卒業生のロイヤルティ要因
表1. ドラマの印象の有無別のロイヤルティ要因
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【本件のポイント】
- マーケティングコミュニケーションの領域で、ドラマの効果は顕著であることが知られており、積極的に利用されています。主な方法としては、ブランドをドラマの中に意図的に組み込むブランドプレイスメントや、ブランド広告にドラマ形式を採用するストーリーテリングがある。ただし、ブランドそのものがドラマの主軸となる例は少ないです。
- その中で、NHK連続テレビ小説「虎に翼」は、ブランドそのものがドラマの主軸となっています。明治大学では、女性弁護士を初めて認めた1933年の弁護士法改正に先行して、1929年に法学を志す女性に門戸を開くために当時の専門部の一部門として女子部を設置し、1931年には女子部卒業生の法学部入学を認めました。三淵嘉子氏は1935年に明治大学に入学し、卒業後に日本初の女性弁護士となり、その後は判事・裁判所所長を務めました。このドラマは、その過程での困難に立ち向かい、道なき道を切り開いてきた情熱あふれる姿を描いています。
- 本研究では、明治大学の卒業生1,614人への調査結果に基づき、卒業生のロイヤルティの要因を評価しました。図1に示すとおり、大学ブランドイメージとスポーツ活動がロイヤルティに対する大きな効果を有しています。大学の本業である学業・研究活動も正の効果があるものの、それらに比べると影響は限定的です。学業や研究は専門性の高い内容であり、一般的に理解されにくいことが原因です。
- そこで、「虎に翼」の印象を有する卒業生と、有さない卒業生で、ロイヤルティに対する学業・研究活動の効果を比較した結果、表1に示すとおり当該ドラマは学業・研究活動の効果を高めることが明らかになりました。このようなコンテンツは、大学が学業・研究活動の成果を広く社会に訴求する際の重要な役割を果たす資産となります。
【論文情報】
論文:Kato, T., & Arahata, T. (2025). Effects of university-related dramas on the intention to purchase university merchandise. Journal of Promotion Management. Taylor & Francis.
【この記事に関連するページ】
加藤拓巳准教授Webサイト:https://takumi-kato.com/
プレスリリース提供:PR TIMES