「急成長する都市の裏側で、教育にも支援にも届かない」ーーNPO法人結び手、インド・グルガオンの移住世帯20世帯を調査

学齢期の子どもがいる19世帯のうち89.5%で一人も通学せず。政府支援を受けていない世帯も70%に上り、書類・情報・住所証明・就労事情など、複数の障壁が重なる実態が明らかに。



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NPO法人結び手(代表理事:福岡洸太郎)の調査部門「結び手研究所」は、2026年5月、インド・グルガオンのSector 67のスラムに暮らす移住世帯20世帯を対象に、公的書類の保有状況、政府支援の利用状況、子どもの就学状況に関する聞き取り調査を実施しました。
調査の結果、学齢期の子どもがいる19世帯のうち17世帯、89.5%では、世帯内の子どもが一人も学校に通っていませんでした。また、政府支援を受けていない世帯は20世帯中14世帯、70%に上りました。
子どもが学校に通えず、世帯が政府支援にもつながっていない背景には、一つの共通した原因があるわけではありませんでした。

利用できる制度に関する情報不足、公的書類や住所証明の不足、行政窓口での対応、手続きのために仕事を休めない事情に加え、教育にかかる費用、兄弟姉妹の世話、言語の違い、保護者の教育に対する認識など、複数の障壁が世帯ごとに異なる形で重なっていました。
調査対象世帯の80%は、インドで本人確認に広く利用されるAadhaar Cardを保有していました。しかし、一つの公的IDを持っていても、制度ごとに必要な書類や住所証明が揃っていなければ、政府支援や子どもの就学にはつながりません。

今回の調査が示したのは、外部環境が一つの壁ではなく、複数の障壁が連続した構造であるということです。結び手は、調査結果を発表して終えるのではなく、世帯ごとに子どもの就学や行政支援への接続を妨げている要因を確認し、必要な支援の実施とその後の変化の追跡につなげます。
なお、本調査は、結び手が教育活動を行う地域で協力を得られた20世帯を対象とした予備的な調査です。結果をSector 67全体やグルガオン全体の割合として扱うことはできません。
調査報告全文はこちら


■都市開発が進むグルガオンのスラムで暮らす移住世帯
今回の調査は、結び手が教育活動を実施している、グルガオンのSector 67で行いました。
Sector 67は高層住宅や商業施設の開発が進むグルガオンの中にありながら、その周辺では、建設、清掃、廃品回収、日雇い労働などに従事する移住世帯が暮らしています。
結び手はこの地域で、学校に通っていない子どもや、基礎的な読み書き・計算を十分に学ぶ機会がなかった子どもを対象に教育活動を行っています。
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グルガオン教育活動の様子

日々の活動を通じて、子どもが学校に通えていない背景には、家庭の収入だけでは説明できない問題があることが見えてきました。
例えば、子どもの出生証明書がなく、入学手続きを進められない世帯があります。政府の支援制度を知らない世帯や、制度を知っていても、住所証明や必要書類がなく申請できない世帯もあります。
公的書類を持っていても、申請方法が分からない、行政窓口で資格がないと言われる、手続きのために仕事を休めないといった理由で、実際の支援にはつながっていない場合があります。
こうした現場での観察をもとに、今回の調査では、次の三つがどのように関係しているのかを確認しました。
- 公的書類の保有状況
- 政府支援の利用状況
- 子どもの就学状況

~調査概要~
[表: https://prtimes.jp/data/corp/122032/table/46_1_98cd617564340d22db13c7e052a07926.jpg?v=202608041316 ]

回答は原則として各世帯からの申告に基づいており、行政機関が保有する記録や学校の在籍・出席記録との照合は行っていません。

■学齢期の子どもがいる世帯の89.5%で、一人も学校に通っていない
学齢期の子どもがいる19世帯のうち17世帯では、世帯内の子どもが一人も学校に通っていませんでした。割合にすると89.5%です。
回答者本人に学校教育を受けた経験がない世帯は20世帯中11世帯、55%でした。この11世帯すべてで、学齢期の子どもが一人も学校に通っていませんでした。
一方、回答者に学校教育を受けた経験がある世帯でも、学齢期の子どもがいる8世帯のうち6世帯、75%では、子どもが一人も通学していませんでした。
保護者自身の教育経験と子どもの就学状況には一定の関係がある可能性がある一方、保護者が教育を受けていれば子どもが学校に通える、とは限らないことも確認されました。
また、子どもが収入を得るために働いていると回答した世帯は3世帯、15%でした。この3世帯では、いずれも子どもが一人も学校に通っていませんでした。


■公的IDを持っていても、政府支援を利用できるとは限らない
調査対象世帯で最も保有率が高かった公的書類は、インドで本人確認に広く利用されているAadhaar Cardでした。20世帯中16世帯、80%が保有していました。
一方、その他の主な公的書類の保有率は、次のとおりでした。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/122032/46/122032-46-0ce6d17bdfe0fe64b7ad73f19b3fee2c-1200x708.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


また、調査対象とした重要書類を一つも持っていない世帯は、20世帯中4世帯、20%でした。
Aadhaar Cardを持っていることと、生活支援、食料配給、教育など、必要な行政サービスを利用できる状態にあることは同じではありません。
制度ごとに異なる書類や住所証明が求められる場合、一つの公的IDを持っていても、政府支援や子どもの入学にはつながらないことがあります。

■保有する書類が多い世帯と少ない世帯で、政府支援の受給率に40ポイントの差
公的書類を4種類以上持っていた10世帯のうち、政府支援を受けていたのは5世帯でした。受給率は50%です。
一方、公的書類の保有数が3種類以下だった10世帯では、政府支援を受けていたのは1世帯のみで、受給率は10%でした。
今回の調査では、保有する書類が多い世帯と少ない世帯の間で、政府支援を受けている割合に40ポイントの差がありました。
この結果は、公的書類が政府支援へ接続するための重要な要素である可能性を示しています。
ただし、書類を多く持つことが、政府支援の受給につながったと断定することはできません。
同じ地域に長く暮らしている世帯ほど、書類を取得する機会と、行政窓口に接触する機会の両方が多い可能性もあります。
実際、グルガオンでの滞在期間が12か月以上の世帯では、4種類以上の書類を持つ割合が66.7%でした。一方、滞在期間が12か月未満の世帯では25%でした。
移住して間もない世帯ほど、住所証明や出身地での手続きなどに阻まれ、必要な公的書類を取得しにくい可能性があります。
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■政府支援に届かない最大の障壁は「利用できる制度を知らないこと」
政府支援を受けていない14世帯に、その理由を複数回答で尋ねました。
最も多かった回答は、「自分が利用できる制度を知らない」で、14世帯中11世帯、78.6%でした。
続いて、次のような回答がありました。
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行政支援を利用するためには、まず制度の存在を知り、自分が対象となるかを確認し、必要書類を準備したうえで申請する必要があります。
制度を知らなければ申請は始まりません。制度を知っても、必要書類や住所証明がなければ手続きを進められません。窓口を訪れても、仕事を休んで再び手続きを行うことが難しい世帯もあります。
一つの原因ではなく、情報、書類、住所証明、行政窓口、就労状況など、複数の障壁が連続していることが分かりました。

■子どもの不就学は、書類不足だけでは説明できない
子どもが一人も学校に通っていない17世帯に、不就学の主な理由を尋ねました。
最も多かった回答は、「保護者が学校教育を有用だと考えていない」で23.5%でした。
そのほか、次のような理由が挙げられました。
[画像6: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/122032/46/122032-46-a8125443548957542f5bc4d41313d740-1200x766.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


今回の結果では、不就学を説明する一つの圧倒的な原因は確認されませんでした。
書類がない世帯には、出生証明書や入学手続きの支援が必要です。費用が障壁となっている世帯では、学費、制服、教材など、何が負担となっているのかを確認する必要があります。
子どもが兄弟姉妹の世話を担っている場合は、入学できたとしても、通学を継続することが困難です。言語が異なる場合は、学校へ行っても授業についていけない可能性があります。
書類を取得して入学させるだけでなく、子どもが通学を継続できる状態まで支える必要があります。

■調査結果を発表して終わらせず、世帯ごとの支援へ
今回の調査から見えてきたのは、外部環境が一つの壁ではなく、複数の障壁が連続した構造であることです。
住所証明がないため、公的書類を取得できない。公的書類が不足しているため、政府支援へ申請できない。利用できる制度を知らないため、申請そのものが始まらない。仕事を休めないため、手続きを継続できない。子どもの教育では、そこに費用、保護者の認識、家庭内のケア負担、言語などの問題が重なります。

結び手は今後もSector 67での教育活動を継続するとともに、調査によって明らかになった課題に対し、世帯ごとの状況に応じた支援を進めます。
具体的には、次の取り組みを想定しています。
- 利用できる可能性のある政府制度の情報提供
- 申請に必要な公的書類の確認
- 公的書類の取得方法の案内
- 行政窓口へのアクセス支援
- 学校への入学や通学継続に向けた保護者との対話
- 支援後の書類取得、政府支援の利用、就学・通学状況の継続的な確認

結び手が目指すのは、支援を実施したという事実を成果とすることではありません。
公的書類を取得できたのか。政府支援を受け始めたのか。子どもが学校へ入学し、通学を継続できているのか。世帯の負担がどのように変化したのか。
実施後の変化まで追跡し、支援が実際に生活や教育機会の改善につながったかを確認していきます。

■本調査の限界と今後の調査
今回の調査対象は20世帯に限られています。
結び手が教育活動を行う地域で接触でき、調査への協力を得られた世帯を対象としており、地域の世帯から無作為に抽出したものではありません。
また、回答は各世帯からの申告に基づいており、行政機関の記録や学校の在籍・出席記録との照合は行っていません。
そのため、本調査で示した割合を、Sector 67全体やグルガオン全体の実態として扱うことはできません。また、公的書類の保有状況と政府支援の受給状況についても、因果関係を示すものではありません。
今回の調査は、現場で確認されている課題を整理し、今後の調査と支援方法を設計するための予備的な調査です。
今後は対象世帯を広げ、居住地域、出身州、滞在期間などの偏りを抑えた追加調査を検討します。
また、支援前、支援後、3か月後、6か月後、12か月後など、継続的に状況を確認することで、公的書類の取得支援や就学支援が、実際に世帯の生活や子どもの教育機会を変えたのかを検証していきます。
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■結び手研究所について
結び手研究所は、NPO法人結び手が、インドを中心とする活動現場の実態を調査・記録し、社会へ届けるために設けている調査・発信部門です。
国内外の貧困、教育、女性を取り巻く課題について、既存の統計や調査結果に加え、現地で継続的に活動しているからこそ把握できる人々の生活や課題を取りまとめ、調査記事やレポートとして発信しています。
また、企業や大学などからの個別の調査依頼も受け付けており、農村部におけるスマートフォンの利用状況、地域住民の生活実態、都市部における所得層別の通勤状況などについて、調査設計、現地での聞き取り、分析、レポート作成を行ってきました。
現場で得た事実を発信するだけでなく、支援活動の改善や、企業・研究機関による事業、サービス、研究の検討に活用できる情報を提供することを目指しています。
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■NPO法人結び手について
NPO法人結び手は、「外部環境が原因で努力できない人に機会を提供する」ことを目指し、インドを拠点に活動する団体です。
教育を受ける機会が限られている子どもへの基礎教育、女性の自立に向けた職業訓練、医療へのアクセス改善など、地域の状況に応じた活動を行っています。
団体名:NPO法人 結び手(Musubi-Te Foundation)
代表理事:福岡洸太郎
公式サイト:https://www.musubite.org/
公式Instagram:https://www.instagram.com/npo_musubite
■本件に関するお問い合わせ先
NPO法人 結び手(Musubi-Te Foundation)
広報/取材窓口:info@musubite.org

プレスリリース提供:PR TIMES
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