本リリースのポイント
- 同じ乳児の左右を比較し、頭蓋骨のCT値61例と頭皮血流10例で、扁平な側の低値を確認。形状に加え、局所の骨の指標と頭皮血流を調べる手がかりとなりました。- 新生児医療と放射線領域の協働により、鑑別診断のための低線量CT画像から生まれた疑問を、定量的な研究へ発展させました。
- 富山で培った低線量CTの知見を三重中央医療センターへ共有。同院による実装、病的頭蓋変形の早期発見、専門医療への紹介へとつながった経緯も示します。
株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー(東京都中央区、代表取締役CEO 大野秀晃、以下当社)は、富山大学附属病院 周産母子センター長・吉田丈俊教授らとの共同研究成果が、国際学術誌「The Journal of Craniofacial Surgery」に2026年7月23日、オンライン先行掲載されたことをお知らせします。当社は、2025年度共同研究公募で採択した本研究に、共同研究資金を提供しました。
中等度~重度の位置的斜頭症でヘルメット治療を完了した乳児61例の診療データを解析したところ、同じ乳児の扁平な側の頭蓋骨のCT値は、反対側より低いことが確認されました。頭皮血流を測定した10例でも、扁平な側で低い値が認められました。治療後に追跡した一部の症例では、左右差の縮小が観察されています。
測定した血流は頭皮のもので、脳血流ではありません。また、未治療群との比較がないため、治療後の変化を自然な成長とヘルメット治療それぞれの影響に分けて示したものではありません。
研究の出発点は、病的頭蓋変形との鑑別のために低線量CTを取り入れた富山の臨床です。この診療で生まれた疑問が今回の研究へ発展する一方、蓄積した撮影技術と診療運用の知見は、教育を通じ三重中央医療センターの早期診断にもつながりました。研究と三重の事例は、同じ臨床実践を基盤とする二つの展開であり、今回の研究結果が三重の早期発見を直接もたらしたという意味ではありません。
┃掲載論文と研究の概要
論文名:Cranial Bone Density and Scalp Perfusion in Positional Plagiocephaly: Quantitative Assessment Using Low-Dose Computed Tomography論文名の参考訳:位置的斜頭症における頭蓋骨密度と頭皮血流:低線量CTを用いた定量的評価
著者:Taketoshi Yoshida, Yasuhiro Kawahara, Takaaki Oyama, Mitsuhide Nagaoka, Satomi Inomata, Kenta Matsumura, Aki Kido
著者所属:富山大学附属病院、富山大学、青森県立保健大学(所属詳細は論文参照)
掲載誌:The Journal of Craniofacial Surgery
オンライン先行掲載日:2026年7月23日
研究の種類:単施設の後ろ向き観察研究。治療前のCT解析は61例、頭皮血流の測定は10例。治療後CTの追跡は13例(論文本文・図3の記載に基づく)。
共同研究支援:ジャパン・メディカル・カンパニーが研究資金を提供。資金提供者は研究デザイン、データ収集、解析、解釈、論文執筆に関与していません。
- 論文掲載ページ
- 書誌・抄録(PubMed)
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/46445/186/46445-186-5f5faa5bd52859a19f899c6bda4700c5-1564x1006.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
治療前の左右比較。頭蓋骨のCT値は61例、レーザードプラ法による頭皮血流は10例の平均値。論文の結果に基づきジャパン・メディカル・カンパニー作成。
┃低線量CTによる適正な頭蓋健診が、新たな研究の問いを生んだ
位置的斜頭症は、向き癖などによる外からの力の影響で、乳児の頭部が左右非対称になる状態です。これまで、頭のかたちや骨の厚さに関する研究は行われてきましたが、同じ頭蓋骨の中で骨密度の指標や血流にどのような左右差があるかについては、定量的な検討が限られていました。吉田教授らの新生児医療チームと富山大学附属病院の放射線部門は、頭蓋骨縫合の評価に必要な画質を確保しながら被ばくを抑える低線量CTを、適正な頭蓋健診に取り入れてきました。先行研究では、Sn(スズ)フィルタと反復再構成法を用い、評価した撮影条件下で、単純X線2方向撮影0.011mSvに対し、低線量CT0.008 mSvの実効線量で乳児の骨縫合を描出できることを報告しています。これらは当該研究が評価した条件での値です。
その診療の中で、頭蓋縫合早期癒合症との鑑別のために撮影した画像に、扁平な側の骨が反対側より薄く見えることに気づきました。「なぜ左右で違うのか」。病的頭蓋変形を見逃さないための検査が、位置的斜頭症の局所の圧迫、血流、骨形成の関係を調べる研究の出発点となりました。
先行研究:Snフィルタと反復再構成法を用いた低線量CT画像による乳児頭蓋の評価
低線量CTによる画像評価と、新生児医療の診療で得られた気づきが結び付いた研究です。今回の著者には、富山大学附属病院の新生児部門、富山大学の放射線領域、青森県立保健大学の研究者が参加しています。
当社は2026年1月、富山大学附属病院との頭蓋組織の生理学的解析に関する共同研究を発表しました。前回は研究の目的を公表し、今回は実際の解析で得られた結果と、今後検証すべき課題が論文化されたことを伝えます。
2026年1月発表:富山大学附属病院との共同研究開始
富山大学附属病院との研究連携では、当社は2024年3月にも15~39歳を対象とする頭蓋変形の疫学調査について共同研究を発表しています。今回は、それとは対象・目的の異なる乳児の骨密度の指標と頭皮血流の研究成果です。
┃研究方法:頭蓋骨のCT値61例と、頭皮血流10例を別々に評価
対象は、2023年1月から2025年8月に富山大学附属病院で頭蓋縫合早期癒合症との鑑別目的の低線量CTを受け、ヘルメット治療を完了した中等度~重度の位置的斜頭症の乳児61例です。診療データをさかのぼって調べる、単施設の後ろ向き観察研究として実施しました。頭蓋骨の左右それぞれで、ラムダ縫合付近の3カ所のCT値を測定しました。CT値はX線の吸収の程度を示す数値で、単位はHU(ハンスフィールド・ユニット)です。本研究では、頭蓋骨密度を評価する代替指標として用いています。
一方、頭皮血流はCTではなく、レーザードプラ法を用いて10例で測定しました。頭の表面を覆う頭皮にセンサーを当て、扁平な側と反対側の微小循環の血流を比較しています。頭皮血流は頭蓋骨内部の血流を直接測定した値ではありません。
論文本文・図3によると、追加の同意が得られた13例では治療後も低線量CTで追跡し、頭皮血流の10例でも治療前後を比較しました。治療開始時の平均月齢は5.15カ月、治療期間は平均約6カ月でした。
┃主な結果:骨の指標と頭皮血流の両方に左右差
- 治療前は、扁平な側で低い値を確認頭蓋骨のCT値(61例):扁平な側452.2 HU、反対側653.2 HU(P < 0.001)。
頭皮血流(10例):扁平な側14.9 mL/min/100 g、反対側23.5 mL/min/100 g(P < 0.01)。
数値は平均値です。いずれも同じ乳児の左右の比較で、統計的に有意な差が認められました。健康な乳児群との比較ではなく、「健康な乳児より骨が弱い」と示した結果ではありません。
- ヘルメット治療後の追跡では、左右差が縮小
CTで治療前後を追跡した13例では、治療前のCT値は扁平な側511.0 HU、反対側689.6 HUでした。治療後はそれぞれ800.7 HU、796.5 HUとなり、左右差は統計的に有意ではなくなりました(P = 0.902)。
頭皮血流を測定した10例でも、治療後の左右差は統計的に有意ではなくなりました(P = 0.14)。有意な差を検出しなかったことは、左右の同等性や正常化を証明したこととは異なります。追跡例で観察された変化として報告しています。
┃研究の範囲と、次の検証課題
研究チームは、持続的な圧迫が頭皮などの局所の血流に影響し、骨形成や頭蓋変形の進行に関わる可能性を提示しています。形状、骨の指標、血流の関係をさらに調べることが、位置的斜頭症の病態理解を深め、評価方法や治療選択の根拠を蓄積することにつながると考えています。一方、この仕組みは現段階では仮説です。本研究は単施設の観察研究で、治療前後の追跡例数も限られています。未治療群との比較を行っていないため、観察された変化を自然な成長とヘルメット治療それぞれの影響に分けて判断するには、追加の検証が必要です。
CT値は骨密度の代替指標であり、骨の強度を直接測定したものではありません。また、測定したのは頭皮血流で、頭蓋骨内部の血流、脳血流、神経発達への影響は直接評価していません。研究対象も、治療を完了した中等度~重度の症例であり、すべての乳児に結果を一般化することはできません。
本研究だけで、個々の赤ちゃんにCT検査やヘルメット治療が必要と判断するものではありません。月齢、頭のかたち、診察所見、経過などを踏まえて医師が必要な検査と治療を判断します。
┃富山の知見を三重へ。教育を通じて、次の患者の早期診断につなぐ
富山の診療で蓄積された低線量CTの技術と運用は、研究とは別に、他施設への教育・診療支援にも生かされています。三重中央医療センターでは、外来開設に先立ち、内薗広匡先生と放射線技師が富山大学附属病院の頭のかたち外来および放射線部門を実地見学しました。学んだ撮影方法と運用を参考に、同センターは独自の工夫を加えた低線量頭部CTを院内で実装しました。三重中央医療センターの公開リリースでは、外来開設後2回目の診療日、累計初診3例目で頭蓋縫合早期癒合症を疑い、あいち小児保健医療総合センターでの確定診断へつながったことが報告されています。必要な乳児を専門医療へつなぐために、実地見学と医療機関間の連携が診療で機能した事例です。
三重中央医療センターでの低線量頭部CT導入と頭蓋縫合早期癒合症の早期発見
┃国内外の医療者と知見を共有し、新たな研究の問いへ
富山大学附属病院は2022年7月に「赤ちゃんの頭のかたち外来」を開設しました。吉田教授は、当社が共催した第33回日本産婦人科・新生児血液学会のランチョンセミナーでも「赤ちゃんの『頭の形』から見えてくるもの」を講演し、臨床で得た知見を共有してきました。2025年9月には、シンガポールのKK Women’s and Children’s Hospital(KKH)を訪問。位置的頭蓋変形と頭蓋縫合早期癒合症との鑑別、ヘルメット治療の適応判断、富山大学附属病院における低線量スズCTの活用、保護者への説明や経過観察について、現地の多職種チームと講義・意見交換を行いました。両国の診療経験の違いは、頭蓋変形診療に関する日・シンガポール共同研究を進める合意にもつながりました。
2025年12月14日の第7回位置的頭蓋変形に対するヘルメット適正治療研修会では、「斜頭症の発生メカニズムに関する研究」を発表。吉田教授は、脳神経外科や放射線科など異なる専門分野の医師から助言を受けたことを、同研修会の開催報告で述べています。研究の知見を伝え、他の診療現場からも学ぶ、双方向の交流を重ねています。
┃研究責任者・吉田丈俊教授のコメント
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/46445/186/46445-186-9951295611f7af036d5c8d507fc577f6-1447x1836.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]吉田丈俊先生
富山大学附属病院 周産母子センター長・新生児部門 教授
乳児の位置的斜頭症を診療する中で、「扁平化した側では、頭蓋骨を取り巻く環境にも左右差があるのではないか」という疑問から本研究を始めました。その結果、斜頭側では反対側に比べて頭皮血流と頭蓋骨密度が低下し、ヘルメット治療後にはその左右差が縮小することを確認しました。これは、頭蓋変形の背景に局所の圧迫や血流、骨形成が関係する可能性を示す結果です。今後はカルシウムなどの元素動態も含めて機序をさらに検討し、より適切な診療や治療につなげたいと考えています。本研究を支えてくださったジャパン・メディカル・カンパニー様のご支援に、心より感謝申し上げます。
┃臨床・研究・教育をつなぎ、患者と家族へ還元する
富山大学附属病院での臨床を共通の基盤として、一方では病態を調べる研究が進み、他方では撮影技術や診療運用が教育を通じて別の地域へ共有されました。シンガポールKKHとの交流や国内の認定研修も、伝える側が別の医療現場から学び、新しい研究と診療の問いを育てる機会になっています。本研究における当社の役割は、共同研究資金による研究支援です。これと区別して、国内外では医療従事者が知見を共有する機会を支え、提携医療機関では製品の設計・製造と技術・運用面から診療を支援しています。研究の実施・解釈は研究者が、診断・治療判断は医師・医療機関が担います。
当社は、医療者が臨床で見いだした問いを研究として検証し、その成果と課題を公表できるよう支えます。診療で培われた知見を教育と医療機関連携へ届け、適正な頭蓋健診と適正なヘルメット治療を地域を越えて実践できる体制づくりにつなげます。
┃研究資金と研究の独立性
本研究は、当社の2025年度共同研究公募で採択された研究です。日本学術振興会の科学研究費助成事業・基盤研究(C)(課題番号:25K06073)と、当社の共同研究資金の支援を受けて実施されました。論文では、頭蓋形状矯正ヘルメットを製造する当社からの研究資金提供を開示するとともに、資金提供者は研究デザイン、データ収集、解析、解釈、論文執筆に関与していないことが明記されています。
┃吉田教授と当社の主な取り組み(過去のプレスリリース)
2023年7月5日公開 |第33回日本産婦人科・新生児血液学会:吉田教授の講演と当社の共催2024年3月27日公開 |富山大学附属病院との頭蓋変形の疫学調査に関する共同研究開始
2025年9月22日公開 |吉田教授のシンガポールKKH訪問:鑑別診断・頭蓋健診の指導と意見交換
2025年12月29日公開|第7回ヘルメット適正治療研修会:斜頭症の発生メカニズムに関する発表
2026年1月14日公開 |富山大学附属病院との頭蓋組織の生理学的解析に関する共同研究開始
2026年8月25日公開 |三重中央医療センター:富山での実地見学から低線量CT導入・早期発見へ
┃研究・医療機関の参考資料
富山大学の低線量CT研究:乳児頭蓋の評価(2025年)富山大学の研究業績ページ:本論文
富山大学附属病院:周産母子センター
・株式会社ジャパン・メディカル・カンパニーについて
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/46445/186/46445-186-d184775a92edf718cf50ca0c2a54ddc7-375x150.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
ジャパン・メディカル・カンパニーは、3Dプリンティング、3D計測、患者別設計技術を活用し、乳児用頭蓋形状矯正ヘルメットと、手術前シミュレーション・外科手術トレーニング用モデルを開発・製造する医療機器メーカーです。1897年創業の大野興業を前身とし、約130年のものづくりの技術を受け継いでいます。
2012年に初の国産頭蓋形状矯正ヘルメットAimet(アイメット)を脳神経外科医と共同開発し、2018年にジャパン・メディカル・カンパニーとして独立しました。
現在は、乳児用頭蓋形状矯正ヘルメットQurum Fit(クルクフィット)、赤ちゃんの頭のかたち測定アプリ、治療支援アプリmetto、医療用精密立体モデルKEZLEX等を開発・製造・販売しています。
当社製頭蓋形状矯正ヘルメットによる累計治療症例は21,000症例以上です。大学病院・こども病院等の採用施設数は国内最多(2026年7月当社調べ)で、適正な頭蓋健診と適正なヘルメット治療の普及、診療水準の均てん化と集約化に取り組んでいます。
■社名:株式会社ジャパン・メディカル・カンパニー
■設立:2018年5月
■代表取締役:大野秀晃
■事業内容:医療機器・医療雑品の開発・製造・販売
■URL:https://japanmedicalcompany.co.jp
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