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【韓国教育IT事情】韓国の教育ママが注目する子ども向けICT

教育ICT その他

e-Learning Korea 2011
  • e-Learning Korea 2011
  • 多くの高校生も来場
  • Storybeam。明るいため見えづらいが壁に投影されている
  • Smart Penでタッチしてタイトルを読み上げる
 9月6日から8日まで韓国ソウルで開催された「e-Learning Korea 2011」の展示会は、数あるIT展示会の中でもITと教育の融合に焦点があてられている。そのため、公務員、教師、教育会社、海外バイヤーだけでなく、小中高生や主婦グループの見学者も多く見られた。

 国家の教育政策である「スマート教育推進戦略」が6月に発表され、2014年からデジタル教科書が全面的に使われるということから、2014年以降に小学校に入学する幼児のいるママ達のブログには、「展示会に行ってデジタル教科書を体験してきた」という書き込みが多々見られる。「未来の教室やデジタル教科書は今の教育環境とはまったく違うので、子どもの勉強を見てあげられないかも…」と落ち込むママもいれば、「タブレットパソコンで楽しく授業しているのを見たら、最近の小学生はいいな〜羨ましくなった」と前向きなママもいて、ブログの書き込みを見ているだけで韓国のデジタル教育に対する世論が見えてくるようだ。

◆専門分野をもつ主婦ブロガー

 韓国ではワイフロガー、パワーブロガーといって専門分野で活躍する主婦ブロガーが多い。日常生活や料理、ペット、育児といった日常のことをつぶやいたり写真を載せる主婦ブロガーももちろんたくさんいるが、教育政策、政治、読書、家電、メディア批評、不動産投資など自分なりの専門分野をもつワイフロガーが多く、ブログをきっかけにテレビ出演したり、本を出版したり、会社を立ち上げた人もいる。そんな中、教育分野を専門とするワイフロガーの間で話題になった教育アイテムを紹介したい。

◆100冊の絵本がFlashアニメに

 「e-Learning Korea 2011」を前後してもっとも話題になったのは、eラーニング優秀企業コンテストで、教育科学技術部が選定した最優秀賞を受賞したWoongjin社の「ストーリービーム」である。

 100冊の絵本がFlashアニメーションになって小型プロジェクターの中に保存されていて、子ども部屋の天井や壁をスクリーンにして絵本を見せてあげられるデジタル絵本である。韓国語の絵本が75冊、英語の絵本が25冊保存されている。

 Flashアニメーションには音楽と音声もあり、声優の声で絵本を読んでくれる。Woongjin社は育児雑誌や幼児・小学生向け学習誌を出版している韓国最大手の出版社である。出版社は本を売る会社という常識を覆し、絵本アニメとプロジェクターをセットにして売り出したところヒットした。

 「ストーリービーム」の面白いのは、声優さんの声の代わりにお母さんやお父さんの声を録音して絵本を見せることもできるという点だ。値段は絵本込みで399,000ウォン(約2万6,000円)。100冊でも足りない、という子どものために、ストーリービーム専用サイトから絵本を追加でダウンロードできるようにもしている。英語の絵本もあり、子守唄のように英語を読み聞かせ、英語に慣れさせたいというママ達の要望から、英語の絵本ラインアップを増やしているという。

 Woongjin社が「ストーリービーム」を開発することになったきっかけは、共働きの親が増えていることだった。毎日寝る前に親が子どもに絵本を読んであげることで読書する習慣が生まれ、親との親密感も高まり、言語能力も発達し、想像力も豊かになるといわれているが、共働きの親は帰りも遅く、毎日子どもに絵本を読んであげるのはとても大変だからだ。

 それに子どもに喜んでもらうにはキャラクターごとに声を使い分けて演じることも必要だが、毎日してあげたいのは山々でも、いつリストラされるかわからない競争の激しい韓国企業で働き生き残るためには、この束の間の時間も許されないことが多い。子どもと一緒にいたいけど、一方では子どものためにお金も稼がないといけない。何かいい方法はないかという親の悩みに応えるために開発したのが「ストーリービーム」というわけだ。子どもと親が一緒にベッドに横になって「ストーリービーム」を見ながら眠りにつく、というのもなかなかいいものである。「ストーリービーム」は声優さんのやさしい声と音楽で、子どもが気持ちよく眠れる効果もあるという。

 「ストーリービーム」はトイレットペーパー1個分ほどの大きさなので場所を取らず、3メートル離れた距離から最大70インチの画面を再生できる。リモコンも付いていて、2時間連続使用可能なバッテリーも内蔵されている。絵本だけでなく、家族写真や自分で撮影した動画を保存して再生することもできる。

◆韓国で人気の小型プロジェクター

 それに韓国では以前から小型プロジェクターが広く販売されていた。家庭用に購入し、ノートパソコンにアニメや映画を保存してリビングの壁をスクリーンにして子どもに見せる親が多かったからだ。韓国の家電売り場に行くと必ずノートパソコンや携帯電話の脇にプロジェクターが置いてあるのでベンチャーやSOHO向けに売っているのかな? と思ったら実は家庭用だった。

 この前もソウルワールドカップ競技場のすぐ近くにあるキャンプ場に遊びに行ったら、テントの中でノートパソコンとプロジェクターを使い、テント一面をスクリーンにして子どもにアニメを見せている家族がいてびっくりした。車から電源をつないでセットするのは大変そうに見えたけど、IT強国らしい光景というか、家庭にプロジェクターがあるとこんな使い方もできるのかと感動したものだ。「ストーリービーム」も内蔵バッテリーでキャンプ地でも使える、という点を強調していた。

◆電子ペンで絵本にタッチ

 「ストーリービーム」のほかに、Woongjin社の「スマーティ」という名前の電子ペンで絵本をタッチすると中身を読んでくれるものも展示会で大変人気があった。絵本にチップを印刷して、電子ペンで読み上げる仕組みになっている。幼児から英語を教えるのに熱心な韓国らしく、「スマーティ」が使える絵本は英語の絵本ばかりだった。

◆名門大学の先輩が質問に答えるアプリ

 展示会でeラーニング優秀事例に選ばれた「グンゴッジル」というアプリケーションも教育ママの間では広く知られている。これは小中高生が勉強の途中でよくわからないことがある時、名門大学に入学した先輩に質問できるというリアルタイムQ&Aアプリケーションである。

 よく理解できない英語の文法や解けない数学問題を質問すると、数分内で答えが戻ってくる。小学生の子どもからテスト勉強中にわからないことがあると、「これ教えて!」と質問されたのに答えられず冷や汗をかいたというママも結構いて、ママが「グンゴッジル」を使って質問し、答えてもらった資料を使って子どもを教えるという使い方をしているというブログの書き込みもあった。

◆サイバー家庭学習

 展示会でも紹介されたが、政府機関が運営している「サイバー家庭学習」サイトも相変わらず人気が高い。教師向け、学生、保護者向けのページに分かれていて、小学生から高校生まで教科科目勉強、芸術・外国語・職業・文化・パソコン講座などを利用できるようになっている。学生向けのページからログインすると、自分の学年に合わせて予習・復習できるように参考書やテスト問題が出てくる。

 教師向けと保護者向けページからは教科別資料、教育関連イベントや講演会情報、教育討論、教科別勉強指導、入試情報、優秀授業事例動画、各種Q&A、全国小学校の子ども新聞、国立劇場の公演デジタルアーカイブなどが利用できるようになっている。

◆開発者に直接質問する教育ママ

 展示会はサイバー家庭学習を始め、学習アプリケーションを開発した担当者と会えるチャンスでもある。サイバー家庭学習の会員登録はしたものの、ママが子どもを教える時に、このサイトをどのように活用すればより効率よく勉強させられるか、資料が多すぎて何からクリックしていいかわからないといった悩みを、担当者に会ってじっくり相談し、使い方を教えてもらうために展示会に参加したという教育ママもいて驚いた。賢い!

 ITと教育の展示会である「e-Learning Korea 2011」が韓国の主婦の間でも大きな話題になっている理由は、やはり高い教育熱が影響しているのかもしれない。

◆年10%の成長を見せるeラーニング産業

 韓国ではブロードバンドが普及したばかりの2001年から動画で英語を学べるeラーニングが盛んだった。塾にお金をかけられない低所得層子ども向け受験勉強対策として、自治体が有名予備校講師を雇い英語や数学のeラーニングを提供しているほど、政府機関もeラーニングを積極的に普及させようとしてきた。

 2003年からは国内向けのeラーニングフォーラムが開催され、2004年には世界で初めて「eラーニング産業発展法」を制定し、事業者を支援してきた。2006年からは国際イベントとして大規模なeラーニング展示会とカンファランスを開催するようになった。2009年にはeラーニング法を「eラーニング産業発展および活用促進に関する法律」に改定して、国務総理が管轄するeラーニング活性化委員会も始まった。改定された法律には、小学校から大学まで教育機関でのデジタル教科書や電子黒板などをICT機材の購入と活用活性化・授業モデル研究を支援、知識財産権保護、eラーニングの払い戻しや利用範囲など利用者保護規定などが定められた

 eラーニング産業を活性化させるために国をあげて支援してきた結果、韓国のeラーニング産業規模は2004年1兆3,000億ウォン(約867億円)から2010年2兆2,500億ウォン(1,500億円)と年平均10%成長している(知識経済部調べ)。
《趙 章恩》

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