◆デジタル時代の教科書の検定基準 デジタルは紙よりも情報量が膨大なため、情報量についても検討の対象となる。外部サイトなどリンクまで検定の対象に入れるかという問題については、「これまでも過去の教科書に誘導先などが掲載されているが、検定で情報を定めてしまうと、新しい情報を入れにくくなってしまう。その意味でも、検定の対象から外すべきだ」と、堀田氏は語っている。 そもそも「デジタル版教科書」の範囲はどこまでなのかということも、ひとつの論点として挙がっている。コンテンツだけでなくビューアやハード、周辺機器、どこまでが教科書とするのか。また、たとえば「履歴」という機能は、紙の教科書にはない。この部分は本来の教科書検定にとってはオーバースペックではないかという疑問もある。このほか、クラウドに蓄積される個人情報はどうするかなど、枚挙にいとまがない。◆当面は紙とデジタルの併用が無難か 今後の検討材料として「定価認可」も挙げられる。紙ではなくデジタルにどんな価格をつけていくのか。定価認可という制度も今後意味がなくなっていくかもしれない。さらに、デジタル教科書が無償措置の対象になるかどうかという問題もある。もし紙とデジタルを併用して使う場合、単純計算でコストは2倍となってしまう。 環境の整備という面では、2020年までに生徒1人に1台推進計画が進められているなか、「都道府県によって環境が整備されているところとできてないところで、格差が大きくなっている」(中村氏)という現状がある。これに対し、堀田氏は「2015年の全国平均では、コンピュータ1台あたりの生徒数は6.4人。1人1台になるには6.4倍と、かなりの加速が必要となる。みんなで気運を高めて推進していかなければならない」と語った。 このパネルディスカッションだけでも、かなりの問題点やこれからクリアすべき課題が挙がったが、「問題は紙かデジタルかということではない。よりよい教育環境をつくるためのものであり、日本の将来において重要」(中村氏)として、政府や民間などが一丸となってプライオリティを高めていくという話で結んだ。 DiTTでは今後も定期的にシンポジウムを予定しており、次回は12月に開催される。テーマは今回も挙がった「著作権」。デジタル化の大きなハードルとなる著作権問題に絞ったものになる。