東大で新学事暦めぐり討論「マインドは変わらない」「ゼミの質向上」他

 メリットには海外大学との交流がしやすくなることがあげられている。濱田純一総長および海外留学経験のある学生3名、東大に現在留学中の学生1名、各学科教授が現在の学事暦、新学事暦を導入することの是非について話し合った。

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濱田総長と語る集い―教育改革と新学事暦で学生は変わるか
  • 濱田総長と語る集い―教育改革と新学事暦で学生は変わるか
  • 教育改革と新学事暦で学生は変わるか
  • 東京大学総長の濱田純一氏
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 2015年度に、新学事暦4ターム制導入を控える東京大学。今の学事暦だと何がいけないのだろうか。学事暦を変えることでメリットがあるのだろうか。

 メリットとしては、海外大学との交流がしやすくなることがあげられている。濱田純一総長および海外留学経験のある学生3名、東大に現在留学中の学生1名、各学科教授が現在の学事暦、そして新学事暦を導入することの是非について話し合った。

◆手続き面で楽になるのはありがたい

 「留学すると(日本に)戻ってくる時期が、重要な履修選択期間とかぶったり、ゼミの途中参加の交渉が必要になる」など手続き面で煩わしい(法学部・4年・女)点が指摘された。また同学生は日本での試験と重なるために、海外で開催されるプログラムへの参加を断念した経験もあるそうだ。

 一方で「学事暦的な困難は特にないと思う。けれど、留学中に、わざわざ先生に相談して海外からレポートを出したり、海外での授業と国内での課題を同時並行でこなさなければならなかったことは、苦労した点と言えるかもしれない。」と、制度を変えるほどの必要性は感じていない旨の発言もあった(教養学部・4年・男)。

◆制度が整っても変わらない

 また、制度的・形式的な変革を行ったところで学生のマインドは変わらないのでは、という点を指摘する声も会場から投げられた。

 入学後すでに複数回の海外渡航を経験する学生からは「自分は、制度が整っていなければ、それを乗り越えればいいと思ってやってきた。海外にパソコンを持って行って教授とやりとりしてきたし。逆に制度が整ったとしても外に出るマインドがない人は変わらないのでは」と懐疑的立場からのコメントが出された。

◆東大内のゼミの質は向上する

 一方、日本から海外にではなく、海外から日本へ移動する学生が増加する点について、秋入学で海外の学生用のプログラム運営を行う東京大学大学院情報学環の林香里教授がコメントした。

 「秋入学カリキュラムを作ってから、留学生は多様に、そして数も増えた印象をもっている」

 そして、留学生が増えることでゼミの“社会学的な洗練”がなされるため、意義深いとした。具体的には、「たとえば、原発や慰安婦問題といった、同じ社会的トピックを(学生の議論のために)投げるにしても、留学生が混じっていることで、日本人からは得られなかった視点での意見が出たりする。研究も活発化する。」

 また、付け加えて留学というのは、ただ“遠いところに行く”とか“英語を勉強する”という意義ではなくて、それが“裸の自分で戦う修行”と捉える見方をしてほしい、という点もコメントされた(林氏)。

 同会は10月15日「濱田総長と語る集い―教育改革と新学事暦で学生は変わるか」と題し、公益財団法人東京大学新聞社の協力により行われた。開催場所は東京大学駒場キャンパス21KOMCEE Westレクチャーホール。
《北原梨津子》

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