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金融サービスの「販売場所」が変わる――銀行アプリから、Eコマース、旅行、医療、通信、業務ソフトウェアへ
市場拡大の本質は、金融サービスそのものの需要が増えることだけではありません。顧客が金融サービスを利用する「場所」が変わっていることが重要です。Eコマースでは購入画面に決済や後払いを組み込み、企業向けプラットフォームでは売上入金、法人カード、融資などを業務フローの中に組み込み、旅行、配車、ヘルスケア、通信、小売などでも金融機能をアプリケーションに直接接続する動きが広がっています。これにより、利用者は別の金融機関やアプリケーションへ移動することなく、必要な金融サービスをその場で利用できるようになります。企業側にとっても、決済手数料などの既存収益に加えて、融資、保険、ウォレット、カードなどを組み合わせることで、新たな収益源と顧客接点を構築できる点が大きな意味を持ちます。
2025年は「組み込み決済」が最大、次の成長軸は「組み込み融資」へ
2025年の市場では、組み込み決済が収益面で最大の市場シェアを占める見込みです。キャッシュレス取引、Eコマース、デジタルウォレットの普及によって、利用者がサービスを離れずに決済を完了できる仕組みへの需要が拡大しているためです。一方、2035年に向けて最も大きな成長機会が見込まれるのが組み込み融資です。即時融資、後払い、AIを活用した信用判断などの普及によって、金融機関の窓口や従来型のローン申請を経由せず、商品購入や業務プロセスの中で資金調達を完結させるモデルが拡大すると予想されます。調査対象となった世界の融資業界経営幹部への調査では、今後5年間で融資の約45%が非金融の場面で利用される可能性が示されており、組み込み融資が次の競争領域となる可能性を示しています。
主要市場のハイライト
● 組み込み金融(Embedded Finance)市場規模は2025年に950億米ドルと評価され、2035年までに4,300億米ドルに達すると予測されており、2026年から2035年までの予測期間において16.3%という堅調な年平均成長率(CAGR)を記録する見込みです。企業がAPIとBanking-as-a-Service(BaaS)モデルを通じて、決済、融資、銀行、保険、投資サービスを非金融のデジタルプラットフォームに統合する動きが加速していることから、市場は急速に拡大しています。
● 2025年には、小売、旅行、医療、テクノロジープラットフォーム全体でデジタル決済、Eコマース、シームレスな決済体験の採用が拡大したことを受け、組み込み型決済が最大の市場シェアを占めました。一方、即時融資、BNPL(後払い)ソリューション、AIを活用した融資プラットフォームへの需要の高まりにより、2035年にかけては組み込み型融資が最も急速な成長を遂げると予想されます。
● 2025年、北米は、成熟したフィンテックエコシステム、オープンバンキングの広範な普及、金融テクノロジーへの多額の投資、および主要な組み込み型金融プロバイダーの強力な存在感に支えられ、世界の組み込み型金融市場を独占しました。フィンテック企業、銀行、デジタルプラットフォーム間の提携の増加は、イノベーションと地域市場の拡大を引き続き加速させています。
主要企業のリスト:
● Cybrid Technology Inc.
● Stripe, Inc.
● PAYRIX
● Walnut Insurance Inc.
● Lendflow
● Finastra
● Zopa Bank Limited
● Fortis Payment Systems, LLC
● Transcard Payments
● Fluenccy Pty Limited
● その他の主要なプレイヤー
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2025年・2026年・2027年・2031年・2035年――組み込み金融を変える市場進化のポイント
● 2025年:金融機能の「組み込み」が実際の事業展開へ移行
2025年には、決済、カード、預金、融資などの金融機能を非金融プラットフォームへ統合する具体的な取り組みが相次ぎました。RailsrとEquals Moneyは2025年に統合し、組み込み金融インフラと国際決済、マルチカレンシー口座などを組み合わせる方向へ事業基盤を拡大しました。さらに、MarqetaはTransactPayの買収を完了し、英国および欧州経済領域におけるカードプログラム管理や電子マネー関連機能を強化しました。SolarisとTomorrowの提携では、2025年2月に貯蓄口座が追加され、組み込み型バンキングが決済だけでなく預金商品へ広がっていることも示されています。
● 2026年:決済・口座・資金移動を一体化する競争が加速
2026年には、組み込み金融の競争軸が単一サービスの提供から、口座、カード、決済、資金移動、本人確認などを一体化した金融インフラへ移行しています。Marqetaは2026年5月、Banking Circleとの連携を通じて欧州30カ国へ口座および資金移動機能を拡大すると発表し、2022年から2025年にかけて欧州カードプログラムの取扱高が8倍に増加したことも公表しています。 また、Stripeは2026年の発表で、複数の金融サービスを共通の顧客情報・本人確認基盤から利用できる仕組みなどを拡充しており、プラットフォーム企業が金融サービスを自社エコシステム内で拡張する動きを強めています。
● 2027年:組み込み金融は「機能追加」から「収益モデル設計」へ
2027年に向けては、単に決済や融資をアプリへ追加するだけではなく、顧客接点、取引データ、ウォレット、カード、融資を連動させ、プラットフォーム全体の収益性を高める設計が重要になると考えられます。特に、企業が自社顧客の取引データを活用しながら、決済から信用供与、保険、資産形成などへサービスを拡張することで、顧客単価や継続利用率を高める余地が広がります。その一方、金融商品を扱う範囲が広がるほど、本人確認、マネーロンダリング対策、消費者保護、データ管理などの対応能力が事業拡大の前提となります。
● 2031年:非金融プラットフォームが金融エコシステムの中心へ
2031年に向けては、Eコマース、業務ソフトウェア、旅行、モビリティ、通信、ヘルスケアなどのプラットフォームが、顧客との接点を活用して複数の金融サービスを提供する構造がさらに進展すると予想されます。決済を入口として、ウォレット、カード、融資、保険、投資へと金融機能を横展開することで、非金融企業が金融サービスの流通チャネルとして存在感を高める可能性があります。市場参加企業にとって重要なのは、どの金融商品を提供するかだけでなく、「どの顧客接点を保有し、どのデータを活用し、どの金融機能を組み合わせるか」というエコシステム設計です。
● 2035年:950億米ドル市場から4,300億米ドル市場へ、組み込み金融がデジタル事業の基盤に
2035年には、組み込み金融市場は4,300億米ドル規模に達すると予測されています。2025年から10年間で市場規模は約4.5倍となり、金融サービスが金融機関だけの専有領域ではなく、デジタルプラットフォーム上の顧客体験を構成する基盤へと進化することが示されています。特に組み込み融資の拡大は、企業の販売、決済、資金調達を一体化させる可能性があり、金融機関、フィンテック企業、プラットフォーム事業者、ソフトウェア企業の競争関係にも影響を与えると考えられます。
北米が市場を先行、今後は地域間の金融インフラ競争へ
地域別では、2025年に北米が組み込み金融市場をリードしています。成熟したフィンテックエコシステム、オープンバンキングの普及、金融テクノロジーへの投資、主要プロバイダーの集積に加え、銀行、フィンテック企業、デジタルプラットフォーム間の提携が市場形成を後押ししています。2026年には、Marqetaが欧州30カ国へ口座・資金移動機能を拡張するなど、地域をまたいで金融インフラを展開する動きも確認されています。 今後は北米の先行事例を他地域へ展開するだけでなく、各地域の規制、決済インフラ、消費者行動に適応した組み込み金融モデルを構築できるかが、国際展開における重要な論点となります。
AI、リアルタイム決済、デジタルウォレットが次の競争軸に
組み込み金融市場では、APIやクラウドインフラに加えて、AIを活用した信用評価、不正検知、パーソナライズされた金融商品の提示などが次の技術テーマとなっています。2026年にはMarqetaがゼロハッシュと提携し、ステーブルコインをカード決済へ組み込むためのインフラ連携を発表するなど、組み込み型の決済体験そのものが新たなデジタル資産インフラへ接続する動きも見られます。 一方で、米国では2026年に決済用ステーブルコイン発行者に対するマネーロンダリング対策や制裁対応に関する規則整備も進んでおり、金融イノベーションと規制対応を同時に実現する能力が、今後の事業展開において重要になります。
市場拡大の一方で、規制・コンプライアンスが企業戦略を左右する
組み込み金融の成長を阻む主要な課題の一つが、金融サービス特有の規制・コンプライアンス対応です。非金融企業が融資、保険、決済、預金などを提供する場合、金融機関と同様に消費者保護、本人確認、マネーロンダリング対策、データ管理などへの対応が求められる領域が増えていきます。2026年には米連邦準備制度理事会が顧客確認制度における検証可能なデジタル資格情報について新たなFAQを公表するなど、金融サービスのデジタル化を支える制度面の整備も進んでいます。 したがって、今後の市場競争では、単に金融機能をAPIで接続できる企業よりも、規制対応、リスク管理、本人確認、データセキュリティまで含めた運用基盤を提供できる企業が重要な位置を占める可能性があります。
セグメンテーションの概要
タイプ別
● 組み込み決済
● 組み込み融資
● 組み込み保険
● 組み込みバンキング(BaaS)
● 組み込み投資
提供形態別
● プラットフォーム/ インフラ
● API
● BaaS
● サービス
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チャネル別
● B2B/B2B2C
● B2C
統合モデル別
● API/SDK
● ホワイトラベル
● マーケットプレイス
最終用途産業別
● 小売とEコマース
● 旅行とモビリティ
● ヘルスケア
● SaaS/テクノロジー
● 物流
● その他
企業にとっての焦点は「金融商品を売ること」から「顧客体験を金融化すること」へ
組み込み金融市場の拡大は、金融業界だけのテーマではありません。Eコマース企業にとっては購入率と顧客単価、業務ソフトウェア企業にとっては顧客の継続利用と新たな収益源、モビリティ企業にとっては決済や保険との統合、旅行・小売企業にとってはウォレットや後払いなど、金融機能を既存事業の成長装置として活用する余地が広がっています。2026年にはStripeがマーケットプレイス向けの組み込み型ウォレットなどを打ち出し、マーケットプレイス自体を金融エコシステムへ発展させる方向性を示しています。
2035年に向け、勝負を分けるのは「接続力」と「金融運営力」
2025年の950億米ドルから2035年の4,300億米ドルへ――組み込み金融市場の拡大は、金融サービスが「銀行や金融機関の商品」から「デジタル事業に組み込まれる機能」へ変わる過程を映しています。今後の市場では、決済だけを提供するモデルから、口座、カード、融資、保険、投資、ウォレットなどを組み合わせた包括的な金融体験へ競争領域が広がることが予想されます。特に2035年に向けては、金融機関とフィンテック企業だけでなく、Eコマース、ソフトウェア、通信、モビリティ、旅行、ヘルスケアなどの非金融企業も重要な市場参加者となります。本調査は、こうした市場構造の変化を把握し、どの金融機能がどの業界で成長余地を持つのか、また規制・技術・競争環境が事業機会にどのような影響を与えるのかを検討するための情報を提供します。
組み込み金融市場:日本企業は「金融機能を持つ企業」ではなく「金融を組み込める企業」へ、成長投資の焦点はどこに移るのか
● 金融サービスの提供主体ではなく、顧客接点を持つ企業こそ次の成長機会を握る――組み込み金融市場で日本企業が注目すべき投資領域
組み込み金融市場は、2025年の950億米ドルから2035年には4,300億米ドルへ拡大し、2026年から2035年にかけて16.3%のCAGRが見込まれる成長市場です。この市場を企業戦略の観点から見ると、単純な金融サービス市場の拡大ではなく、非金融企業が決済、融資、保険、口座、カードなどの金融機能を自社の顧客体験や業務フローに組み込むことで、新たな収益機会を生み出す構造変化として捉えることが重要です。特に日本では、EC、モビリティ、旅行、B2Bプラットフォーム、SaaS、流通など、すでに大量の顧客接点を持つ事業者が金融機能を追加することで、既存顧客から得られる収益機会を広げられる可能性があります。経営層にとって重要なのは「金融市場へ参入するか」ではなく、「自社の既存顧客接点のどこに金融機能を組み込めば事業価値を高められるか」という視点です。
● 決済だけでは終わらない――融資・保険・口座機能まで含めた金融エコシステム構築が、日本市場での投資判断を左右する
日本企業が組み込み金融市場で成長機会を捉えるうえでは、決済機能だけを導入する発想から脱却し、顧客の取引全体を金融面から支援する仕組みへ視野を広げることが重要です。例えば、EC事業者であれば決済に加えて後払い、分割払い、購入者向け保険などを組み合わせ、B2Bプラットフォームであれば請求、決済、売掛債権関連の金融機能を業務フローに組み込むことで、単一サービスではなく継続的な顧客関係を構築できます。今後の競争では、どの金融商品を提供するかだけでなく、顧客データ、購買履歴、業務データをどのように活用し、利用者が金融サービスを意識しなくても自然に利用できる体験へ落とし込めるかが、企業のデジタル戦略と収益モデルの双方に影響するポイントになります。
● 「自社開発か外部連携か」ではなく、金融インフラをどこまで自社の競争優位に変換できるか――日本企業に求められる投資配分の再設計
組み込み金融への投資では、金融機能をすべて自社で構築する必要はありません。むしろ金融機関、フィンテック企業、決済事業者、金融インフラ提供企業などとの連携を活用しながら、自社が顧客体験とデータ活用のどの部分を担うのかを明確にすることが、投資効率を考えるうえで重要になります。特に大企業にとっては、既存の顧客基盤や販売チャネルを活用できるため、金融機能そのものよりも「どの顧客接点に組み込むか」「どのタイミングで金融提案を行うか」「金融利用によって本業の継続率や取引額をどう高めるか」という設計が競争力につながります。経営戦略、DX、営業、商品企画、財務部門を横断して投資効果を検証できる体制を構築することも、市場拡大局面で重要な経営課題になります。
● 成長率16.3%の市場で見落とせないのは「利用者数」ではなく「取引あたりの経済価値」――収益モデルを基準に投資先を見極める
組み込み金融市場の成長を企業価値につなげるには、単純な利用者数や金融取扱高だけではなく、金融機能を導入することで本業にどのような経済効果が生まれるのかを検証する必要があります。例えば、決済導入によって購買頻度が上昇するのか、融資機能によって加盟店や法人顧客の離脱率が低下するのか、保険機能によって付帯サービスの利用率が高まるのかなど、金融機能と本業KPIの連動性を評価することが重要です。2035年に向けて市場規模が大きく拡大するなかでは、金融サービス単体の手数料収入を追求する企業だけでなく、金融機能を顧客維持、クロスセル、取引拡大、プラットフォーム強化のための戦略的インフラとして活用する企業も増えると考えられます。
● 2035年を見据えた日本企業の勝負は「金融機能を追加すること」から「金融を事業モデルそのものに組み込むこと」へ――経営層が今検討すべき成長投資の方向性
2025年の950億米ドルから2035年の4,300億米ドルへの拡大が見込まれる組み込み金融市場では、2026年以降の投資判断が将来的な競争ポジションを左右する可能性があります。日本企業にとって重要なのは、単に新しい金融サービスを追加することではなく、自社が保有する顧客接点、販売網、業務データ、デジタルプラットフォームを金融機能と結び付け、継続的な収益機会へ転換できる事業モデルを設計することです。特にCEOや経営企画、事業開発責任者にとっては、どの顧客接点に金融機能を組み込むべきか、どの領域を外部パートナーと連携すべきか、金融機能によって本業のKPIをどのように改善するのかを明確にすることが、今後の市場参入・投資戦略を考えるうえで重要な論点になります。
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