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MOOCsに高まる期待と課題、大学再編の風となるか

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北海道大学 情報基盤センター重田勝介准教授
  • 北海道大学 情報基盤センター重田勝介准教授
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  • ボーダレス教育の時代に大学はどうあるべきか
  • 大学の未来モデル1
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 10月31日、内田洋行主催で開催された「大学・高校実践ソリューションセミナー 2013」で、北海道大学情報基盤センターの重田勝介准教授によるオープンエデュケーションや大規模公開オンライン講座「MOOCs(ムークス)」に関するセミナーが開催された。

 重田氏は、教育工学やオープンエデュケーションを専門に研究を行っており、今回のセミナーでは大学におけるオープンエデュケーションとMOOCsについて同氏の考察も交えてまとめられていた。内容は、「オープンエデュケーションとは」から始まり、「大学でのオープンエデュケーションの現状」、「MOOCsに代表される新しい動きによってもたらされる変化」、そして「これからの大学がとり得る学校モデルとビジネスモデル」となっていた。

 日本版MOOCsである「日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)」が10月に設立されたこともあり、「MOOCsをやらない大学は取り残されるのか」などといったさまざまな疑問に答えるタイムリーなセミナーだった。

◆「オープンエデュケーション」とは

 オープンエデュケーションは、「教育をオープンにし、学校や年齢に関係なく学習機会を広げようという活動で、教える方も教わる方も特に制限などなくだれでも参加できるもの」と重田氏は説明する。1990年代にeラーニングの普及期があったが、当時は技術的な制限なども影響し、あまり大きなうねりとなることはなかったという。2001年になるとオープンコースウェア(OCW)という教育コンテンツを無料で公開する動きが始まり、オープンエデュケーションリソーシズ(OER)として、各種教材や資料を公開する動きにつながった。

 オープンエデュケーションの特徴は、教材をオープンにする活動、教材を探せるWebサイト、学びあい・教えあいのコミュニティの3つだという。教材のオープン化はOERの活動であり、教材が探せるサイトはiTunes UやKhan AcademyといったOCWサイトのことを指し、コミュニティの事例としてはOpenStudyやMozilla Open Badgeなどといったものが存在する。OpenStudyは人力解決サイトや知恵袋サイトのようなコミュニティ、Mozilla Open Badgeは、履修コースに認証バッジ(認定証)を発行することでオンライン学習に一定の指標を与えているという。

◆MOOCsが広まる理念的背景と実利的背景

 では、現在、なぜオープンエデュケーションや大規模公開オンライン講座と訳されるMOOCsが広まっているのだろうか。その背景として重田氏は、教育格差の是正、途上国支援、知へのアクセスといった大学の理念や本来的な意義に沿う活動であること、そして、大学にとって優秀な人材や留学生を集めることにつながったり、OERやOCWを活用することによるコスト削減になったりという実利的な側面があると解説する。また、アクティブラーニングや反転授業といった新しい取り組みや授業形態が活用されることが多いのもMOOCsが広がっている背景のひとつだという。

 MOOCsの代表例がCoursera、Udacity、edXの3サービス。Courseraは、スタンフォード大学の教授が講義をMOOCsとして公開したことが始まりで、世界で102の大学が400以上のコースを公開している。Udacityは、大学単位ではなく個人の教員や教師がコース開設できるため、大学の授業にはないような講義もある。Udacityもスタンフォード大学の教授が設立したベンチャー企業でありMOOCsプロバイダーに分類される。

 edXは、MITとハーバードが設立したMOOCsを公開する大学のコンソーシアム。世界27か国の大学が参加しており、京都大学もその中の1校だ。MOOCsの公開には、Googleが開設したmooc.orgというだれでもMOOCsを作れるオープンソースプラットフォームを利用しているという。米国以外では、英国のFutureLearnという大学連携のコンソーシアムや日本のJMOOC協議会も存在する。

 大学で実施されるeラーニングとMOOCsの違いは、学生でなくてもだれでも受講できること、学費(受講料)不要なこと、例外はあるが基本的には単位が与えられないこと、コース完了が必須でないこと、学習者が世界規模の広がりを持つこと、そしてミートアップというオフ会があることなどだと重田氏は説明する。

◆MOOCsの影、大学の自由を奪い大学間の格差を広げる可能性

 だれもが無料で受講でき、教育格差是正が期待されるMOOCsだが、大学関係者からの批判の声や問題点の指摘も多いようだ。そのひとつが、大学や講師の自由が奪われるという問題だ。MOOCsを利用することで、教材やコンテンツが指定されることになると、大学の教える自由を奪うものだとする意見があり、米国のサンノゼ州立大では、学校が決めたコンテンツ(マイケル・サンデル教授の「Justice X」)の導入中止を決定している。サンノゼ州立大は、MOOCsによる修了率改善の実績を上げている学校だが、MOOCsのコンテンツを手放しに受け入れているわけではないようだ。

 批判の背景には、MOOCsを運営する側の大学と利用する側の大学があり、使う側はプロバイダーに利用料を支払う必要があることなどが大学間の格差を生むという。学生利用者にしても、学費は不要だが事務手数料や認定証の発行手数料など、必ずしもすべてが無料なわけでもない。また、学生の学習履歴データなどは、扱いを誤ればプライバシーや個人情報に関わるもので間接的なビジネス(ビッグデータ利用など)を行うことへの合理性にも懸念が生じる可能性がある。

 この問題には、グローバルで教育予算の削減、ビジネスとしての学校経営の難しさが拍車をかけている。結果として、大学や教員の競争力が問われ、大学の価値基準さえも変わろうとしている。MOOCsが引き起こす課題は、現在の大学が直面する問題そのものでもあるのだ。

◆未来の大学モデル、MOOCsは手段であってゴールではない

 最後に重田氏は、これらの問題に直面する未来の大学モデルとして3つのパターンを挙げた。ひとつは、MOOCsなどオープンエデュケーションによって、大学を強化するモデルだ。有名大学が選択しやすいモデルだが、MOOCsを活用することで大学の優位性をアピールし、優秀な学生を集めることで、研究、知の体系化、人材育成などに集中することができる。

 2つ目のモデルは、MOOCs、OERを積極的に活用する他大学とのMOOCsの共有、連携を進めていくものだ。教育の質を落とさず経営のコストダウンが期待されるが、適用方法によっては、教員のリストラにつながりかねず、現場からの抵抗が予想される。

 3つ目のモデルは、複数の大学が連合することでMOOCsを活用していくモデルだ。複数の大学が共同でOER教材を作ったりMOOCsコンテンツを制作したり、授業改善や教育の質改善に役立てるという事例が米国に既に存在する。大学連合でトップユニバーシティのMOOCsに対応しようという考え方だ。

 オープンエデュケーションの波が時代の必然であり止められないものだとしたら、そのツールやプラットフォームをうまく使い、大学の価値や特徴をどのように出していけるかが、課題となっているようだ。システムとして授業をオンライン配信すればMOOCsだ、と安心するのではなく、講義やコースの内容、さらに教育や学習以外の大学の役割を学生や社会に対して提案して、新しい価値や機能を生み出していく必要があるだろう。
《中尾真二》

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