東大附属病院、思春期における心理的困難さと脳の発達の関連を解明

 東京大学大学院博士課程の臼井香大学院生(研究当時)らの研究グループは、思春期における心理的困難さの変化と脳の発達との関連について明らかにしたことを発表した。思春期の心の不調のメカニズム解明に役立つ可能性があり、心の健康増進に貢献することが期待される。

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思春期で心理的困難さが高まる人ほどミスマッチ陰性電位が低下(マイナスの振幅が低下)
  • 思春期で心理的困難さが高まる人ほどミスマッチ陰性電位が低下(マイナスの振幅が低下)
  • 心理的困難さの程度によってミスマッチ陰性電位の発達的な変化が異なる

 東京大学大学院医学系研究科医学博士課程の臼井香大学院生(研究当時)らの研究グループは、思春期における心理的困難さの変化と脳の発達との関連について明らかにしたことを発表した。思春期の心の不調のメカニズム解明に役立つ可能性があり、心の健康増進に貢献することが期待される。

 発表は、東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻精神医学分野医学博士課程の臼井香大学院生(研究当時、現・国立精神・神経医療研究センター リサーチフェロー)、笠井清登教授、東京大学バリアフリー支援室の切原賢治准教授らの研究グループによるもの。

 思春期は、高度な精神機能が成熟する重要なライフステージである一方、心の不調や精神疾患の発症が多い時期でもあると知られている。大脳皮質を中心に脳の発達が生じる時期でもあり、これまでの研究より、思春期における脳の発達と心理的困難さとの関連が報告されている。しかしその多くが、精神疾患やそのリスクの高い人をおもな対象としていたり、一時点における脳の指標と心理的困難さを調べたりしたものであったという。

 そこで、臼井大学院生らの研究グループは、一般の思春期集団を対象に調査を計画。東京大学・総合研究大学院大学・東京都医学総合研究所の3つの機関が連携して行っている、思春期を対象とした東京ティーンコホート調査の参加者のうち、協力を得られた67名を対象に調査を実施した。

 参加者は、13歳と16歳の2回のタイミングで、脳波計測とアンケートを実施。参加者へ脳波計を用いたミスマッチ陰性電位(脳波で測定される指標)の計測と、参加者の親によるアンケート回答により心理的困難さを評価した。

 その結果、13歳から16歳にかけて、ミスマッチ陰性電位が低下する人ほど心理的困難さが増加することが示されることが判明。さらに、16歳の時に心理的困難さが高いグループでは、13歳から16歳におけるミスマッチ陰性電位が年齢とともに低下する一方、心理的困難さが低いグループでは低下しないことが明らかになったという。

 この結果より、思春期におけるミスマッチ陰性電位の発達的変化は、心理的困難さの変化と関連することが明らかになり、また、心理的困難さの程度によってミスマッチ陰性電位の発達的変化が異なることも見出したという。今回の研究結果は、今後思春期の心の不調のメカニズム解明に役立つ可能性があり、心の健康増進に貢献することが期待される。

 なお、同研究は米国科学誌「Cerebral Cortex」(オンライン版:10月10日)に掲載された。

《木村 薫》

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