【PISA2022】数学的リテラシーはトップレベル…一方で「数学的思考力育成」低く

 国際的な学習到達度調査「PISA2022」の結果が2023年12月5日に発表された。日本は科学・数学的リテラシーの2分野で、OECD加盟37か国中1位となったものの、実生活における課題について数学を使って解決する自信が低いことがわかった。

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平均得点および順位の推移
  • 平均得点および順位の推移
  • 3分野の得点の国際比較(概要)
  • 数学的リテラシーの平均得点の推移
  • 数学的リテラシーの下位尺度の平均得点
  • 習熟度レベル別の生徒の割合(経年変化・数学的リテラシー)
  • 数学的リテラシーに関係する質問調査の結果
  • 数学的リテラシーに関係する質問調査の結果
  • 数学的リテラシーに関係する質問調査の結果

 国際的な学習到達度調査「PISA2022」の結果が2023年12月5日に発表された。日本は科学・数学的リテラシーの2分野で、OECD加盟37か国中1位となったものの、実生活における課題について数学を使って解決する自信が低いことがわかった。

 「PISA(Programme for International Student Assessment)」は、OECDが中心となり実施している国際的な学習到達度に関する調査。義務教育修了段階の15歳の生徒(日本では高校1年生)を対象に、これまでに身に付けてきた知識や技能を、実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測る目的で、「数学的リテラシー」「読解力」「科学的リテラシー」の3分野について、2000年から3年ごとに調査を実施している。

得点・習熟度はトップレベル

 「PISA2022」の数学的リテラシーのOECDの平均得点は472点で、日本の平均得点は536点とOECD加盟国中1位(順位の範囲:1~2位)で世界トップレベルとなった。平均得点の推移をみると、2018年調査からOECDの平均得点は大きく低下しているものの、日本は高水準で安定している。

 日本は、「各プロセスの平均得点」「各内容知識の平均得点」を見ても、国際的に高い。OECD平均と比べて、習熟度レベル5以上の高得点層が多く、習熟度レベル1以下の低得点層が少ない傾向が、引き続き見られる。日本は、2018年のレベル5の割合は14.0%、レベル6以上は4.3%だったが、2022年はレベル5が16.2%、レベル6以上が6.8%と有意に増加している。一方、OECD平均は2018年のレベル5の割合は18.5%、レベル6以上は8.5%、2022年はレベル5が14.9点%、レベル6以上が6.7%と減少している。

「規律ある雰囲気」で授業を展開

 数学的リテラシーに関する質問調査では、「数学の授業の規律ある雰囲気」指標はOECD加盟国中1位となり、日本の数学の授業は規律ある雰囲気の中で行われていることがわかった。具体的には「生徒は、ほかの生徒がデジタル・リソース(例:スマートフォン、Webサイト、アプリ)を使っているために気が散っている」「生徒は、デジタル・リソースを使っているために気が散っている」「生徒は、授業が始まってもなかなか勉強にとりかからない」「先生は、生徒が静まるまで長い時間待たなければならない」「授業中は騒がしくて、荒れている」「生徒は、先生の言うことを聞いていない」「生徒は、勉強があまりよくできない」の7項目の回答割合から指標数を算出。指標値は、OECD加盟国37か国の平均値が0.0、標準偏差が1.0となるよう標準化されており、その値が大きいほど、数学の授業において規律ある雰囲気となっていることを示す。日本は1.09でOECD平均0.02を大きく上回った。

 また、「数学の授業における教師の支援」指標はOECD加盟国中8位となった。具体的には、数学の授業で「先生は、生徒が助けてくれる」「生徒が助けてほしいときは、先生は助けてくれる」「先生は、生徒がわかるまで何度でも教えてくれる」「先生は、生徒ひとりひとりの学習に関心を持っている」の4項目の回答割合から指標数値を算出。日本は0.24でOECD平均-0.03を上回った。

実生活で解決する「自信」低い

 一方、日本の生徒は、OECD平均に比べて、実生活における課題をについて数学を使って解決する自信が低いことがわかった。「実生活の課題にからませて、数学的な解決を求めること」について、「とても自信がある」「自信がある」と回答した生徒の割合は、OECD平均52.5%に対し、日本は30.0%と22.5ポイント下回った。さらに、「実社会の問題の中から、数学的な側面を見つけること」を「何度もやった」「時々やった」と回答した生徒の割合は、OECD平均55.5%に対し日本は37.8%となった。日本はOECD平均を17.7ポイント下回り、数学を実生活における事象と関連付けて学んだ経験が少ないことがわかった。

日常の「数学的思考力育成」平均以下

 また、日本の数学の授業では、数学的思考力の育成のため、日常生活とからめた指導を行っている傾向がOECD平均に比べて低い結果となった。具体的には、生徒に「今年度、数学の授業で、先生は次のようなことをどのくらいしたか」と9項目を質問。項目は、「先生は私たちに、日常生活の問題を数学を用いてどのように解決できるかについて考えるように言った」「先生は私たちに、数に関わる日常生活の問題をあたえて、その状況に関して判断をするように言った」「先生は私たちに、新しく学んだ数学の知識で解決できる日常生活の問題とはどういうものかを考えるように言った」「先生は私たちに、日常生活で数学がどのように役立つかを示してみせた」など。回答割合から指標を算出すると、OECD平均に0.01に対しは-0.35と加盟国37か国中36位となった。

 OECD生徒の学習到達度調査(PISA2022)は、OECDや国立教育政策研究所のWebサイトに掲載している。次回PISA2025は、2024年に予備調査、2025年に本調査の実施が予定されている。

《田中志実》

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