「ちはやふる」原作者インタビュー、お気に入り文具や夢への軌跡

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末次由紀先生が描かれた「ちはやふる」ネーム( (c)末次由紀/講談社)
  • 末次由紀先生が描かれた「ちはやふる」ネーム( (c)末次由紀/講談社)
  • 「ちはやふる 1巻」の表紙((c)末次由紀/講談社)
  • 「ちはやふる 31巻」(講談社)の表紙((c)末次由紀/講談社)
  • 取材時の末次由紀先生がお持ちの文房具
  • 末次由紀先生の描き下ろしイラストが表紙になったコクヨのキャンパスノート(BE・LOVE(2016年2・3号)の読者プレゼント (c)末次由紀/講談社)
  • 『ちはやふる -上の句-』のポスター((c)2016映画「ちはやふる」製作委員会  (c)末次由紀/講談社)
  • 『ちはやふる -上の句-』((c)2016映画「ちはやふる」製作委員会  (c)末次由紀/講談社)
  • BE・LOVE(2015年21号)の読者プレゼントになったダイアリーの百人一首暗記帳((c)末次由紀/講談社)。43番が末次先生のお好きな句
 2007年にBE・LOVE(講談社)に掲載され、現在も好評連載中の青春マンガ「ちはやふる」。主人公たちの競技かるたへの情熱、友情が鮮烈に描かれ、多くの読者の胸を熱くさせ続けています。

 この「ちはやふる」の作者、末次由紀先生の描き下ろしイラストが表紙になったコクヨのキャンパスノートが、BE・LOVE(2016年2・3号)の読者プレゼントになりました。また、「ちはやふる」の舞台の1つがキャンパスノートの工場がある滋賀県ということで、体感できるステーショナリーショップ「コクヨハク」(2016年4月1日(金)~3日(日)に開催)でも「ちはやふる」のパネル展示を予定しています。

 そこで今回は、文房具好きでもある末次先生にお会いして、お気に入りの文房具や熱いマンガを生み出すまでの道のりをお聞きしてきました!

◆初めて興味を持った文房具は消しゴム

-- マンガを描きはじめた小学生のころに好きだった文具はありますか?

 私は、なぜか親に欲しいものを買ってと言えない子でした。極端に貧乏だったわけではないのになぜだか言えなくて、輪ゴムをいっぱい結んでかたまりにして、消しゴム代わりにしていたんです。

 お小遣いをもらうようになってからは、消しゴムを集めるのが好きになって、その当時流行っていた色のついたものとか、においのするもの、お弁当の中身みたいなものなど、全種類の消しゴムを集めようと思ってました。

 世界にどれだけ消しゴムがあるかを知らない子どもの、壮大な、絶対にかなわない夢です(笑)! 普通の文房具屋さん1軒でさえ、消しゴムを買い占めることは無理なのに。

-- どれくらい集めたんですか?

 結局、20個くらい集めたときに、無理だと気がつきました(笑)。お金もないし、置く場所もない。 それと、しばらくしてそういう消しゴムは、本来の消しゴムの機能としてはだめだ、と気づきました(笑)。きれいな消しゴムが汚れていくのも悲しいし、使いにくいですし。たとえばきれいなぶどうの形をした消しゴムも、使って減っていったら、気に入っていたぶどうではなくなる。この、使うのに抵抗がある感じもだめだと思ったんです。

◆マンガを描くにはお金がかかる!

-- そのころ、マンガを描くときには何を使われていましたか?

 ノート、鉛筆、消しゴムとか、普通に買える道具で描き始めました。特別なものはありません。でも、こうした文具の世界とマンガを描くための画材の世界とは違います。普通の文房具屋さんで画材は売っていないので、そこに小学生の壁が…… 1枚40円のケント紙が買えない壁です。普通の紙1枚1枚に、自分で定規で図って、内枠、トンボも描いたりしてました。でも、それではマンガを描き続けるのは無理だとわかって、6年生くらいではじめて父に画材屋さんに連れて行ってもらったことを覚えています。

 それこそ、額縁などを専門に売っているようなお店の片隅にあったんです。青い内枠が描いてある原稿用紙が。文房具ならすぐに買えるけれど、画材の壁は高いものでした。

 マンガ雑誌に投稿しようにも、「サインペンはだめ、ペンで」と、書いてあるので、中1の時に一度マンガを完成させたものの、お金がないという理由で続行を断念。お小遣いを貯めて中2から投稿しはじめました。

 そのころはスクリーントーンが1枚800円くらい。1枚買って限界まで使ったり、自分でペンで描きこんだり、投稿して戻ってきた原稿をはがしてもう一回使ったり、それこそ親には「買って」となかなか言えない子なので使いまわし。だけど、1回投稿すると、賞品としてスクリーントーンセット3枚とか、特製原稿用紙がもらえるので、楽になりました(笑)。

◆マンガを描きまくった中高生時代

-- その頃、マンガはどのくらい描かれていたのですか?

 中学生のころは、2年半で32作投稿していて、毎月1作、夏休みのときなどは月2作くらい描いていました。・・・・・・部活も入っていなかったし、友だちも潤沢(じゅんたく)にはいなかったので、遊び相手がいない代わりに投稿していたんですね(笑)。何といっても出版社の人に評価されるのがうれしかった! 漫画を描くためのお小遣いももらえるし、「すてき!」と思って、やりがいを感じてたくさん描いていました。

-- 高校生で新人賞をとられましたね。その段階で編集担当の方はつかれるものなのでしょうか?

 つきましたね。でも、そこに新たな壁がありました。それまで好き勝手に描いていて、誰にボツと言われることもなかったのが、とたんにボツと言われはじめるので、描きたいのに描けなくなるんです。

 そうすると、担当さんとの打ち合わせが止まってしまう。編集担当の方も新人相手にそれほど時間を割けるわけではないので、打ち合わせすることもなくなりました。それで「受験勉強しよう、大学に行ったら考えよう」と思うように。趣味でマンガは描くけど、なにがなんでも雑誌に載ろうというのはやめました。それまでは、自分でもどうかしてるって思うくらいに描いていたのに、描けなくなったのは悲しかったですね。

-- 投稿をやめられたんですね。マンガを描くこと自体もやめてしまったのですか?

 ノートにマンガを描いて友だちにみてもらう、ということはしてました。投稿は「読みきり」を求められるので、「シリーズもの」みたいな形にして、自分で勝手に連載してました(笑)。



◆末次先生必須の文房具はちょっと意外!

-- 今、よく使われている文房具ってなんですか?

 ネームを描くときには、必ず下敷きをはさんでます。ノートに描いているので、下敷きをしないで描いていくと、裏側に色移りとかするんです。下敷きはすばらしい!

 だけど下敷きってあまり売ってないんですよね。最近では定規売り場も小さくなっていて、買えなくなるんじゃないかと不安になって、下敷きも定規も買い占めようかと思っちゃいます。以前は、定規だけでも、長いのも、短いのも、いっぱいあったのにね。

-- 定規って1回買ったら、しばらく必要ないですよね?

 定規って減っていくんですよ。ずっと使っていくと、だんだん真ん中が湾曲していくので、私にとっては、定規も消耗品(笑)。 カッター用の定規と、ペン用の定規、シャーペン用の定規というように、別々に用意しています。

 カッターでガタガタになった定規は線画には使えないので、金定規を使えばいいんですが、透明じゃないので使いづらい。金定規には部分的に透明のものもあるのでそれを使うときもありますが、部分的に重い、厚いというのが気になる。だから、ちょっと違和感を感じたときには、傷つけて消耗してしまうことを前提にクリアな定規を使ってます。透明でも軽くて削れない定規、というのが欲しいですね。

-- なるほど、勉強になります。ほかにお気に入りの文房具はありますか?

 そういえば、スクリーントーンが美しく削れる消しゴムがあるんですよ。それ専用に作られているわけではないけれど、ふわっと消える空を作るときに、このスクリーントーンと消しゴムの相性がすごくいいと気づきました。その後すぐ、20個くらい買い占めました(笑)。合わない消しゴムだと変なふうに偏りが出て消えてしまうのですが、この消しゴムだとやさしくこそぎとれるんです。ふわ~っと消してくれる。これは手放せなくなりました!

-- 実際にマンガを描く時に使っている文房具はありますか?

 ネームを描くときにはシャーペンを使ってます。描くスピードが速いので、ノック式だと芯が出るのが追いつかないから、振ったら芯が出るシャーペンが便利ですね。しょっちゅう振ってるから、周りの人はなんだろうって思うんじゃないかな(笑)。細かいところを描けた方がいいので、0.3mmの芯を使うことが多いですね。

 細いペンで描いた方がていねいな画になって、太いペンだとざっとしたものになる。道具によって違いますね。

-- 集中が必要なネームを描かれるときに使う、お好きな道具ってあるんですね。

 すごく、あります! いつもの筆箱を忘れて、出先で調達するしかなくて、コンビニで0.5mmのシャーペンしか売ってない、振っても芯が出てこないっていう場合には、マックスの調子ではないなと感じます。借り物のお家に住んでるみたいな、本調子じゃない、みたいな気持ちになりますね(笑)。

 それから先ほどお話しした定規もなかなかコンビニに売ってないですね。自分のクレジットカードやマドラーを使って集中線を描いたりすることもしばしば。今度から筆箱は絶対に忘れないぞ、と思います。

◆「逢ひ見ての のちの心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり」

-- 最後に、「ちはやふる」にはたくさん素敵な句が出てきますが、一番お好きな句を教えてください。

 「逢ひ見ての のちの心に くらぶれば 昔は物を 思はざりけり」(第43句)が好きです。あなたと出会って逢瀬を重ねた後だから、それより以前の自分は何も考えちゃいなかったと思うくらいに自分は恋に思い煩っている、というもの。あなたと出会うことで全部自分が入れ替わるくらいに、今までの自分は何だったの?何も考えていなかったんじゃないの?と感じる・・・・・・何かを知って自分が変わるってことが、すごくクリアに表現された句ですよね。

 「昔は物を思はざりけり・・・・・・まるで昔の自分を全否定!?っていうくらいに言ってしまっているところが、わかるなあと。良いことも悪いことも、それを知った後は、前の自分とは違う世界が見えるようになる、そんな変化が訪れることもある。あの人が私を好きだって知った瞬間から、世界が桜色になったり、逆に、降りかかった不幸を知った瞬間に、世界は色を変えると思うんです。

◆キャラクターの魅力満載の映画「ちはやふる」

-- 明日から公開の映画「ちはやふる」、ご覧になっていかがでしたか?

 この原作で面白くなるのかなって心配だったんですけど、見たらすごく面白くなっていたので、「監督、すごいな」って心から思いました。不安だった自分が失礼だったな、と。

 原作で活躍しているキャラクター達が映画で、さらに魅力を増やしていて、盛りだくさんにしてもらっているので、また違う存在として好きになってもらえると思います!

 末次先生、すてきなお話をありがとうございました!

 二部作上映の映画『ちはやふる -上の句・下の句-』は、まずは<上の句>が明日3月19日(土)から、<下の句>が4月29日(金)から全国映画館にて公開いたします。

 また、「ちはやふる」のパネル展示を予定しているコクヨハクは、4月1日(金)~3日(日)、 JPタワー・KITTE地下1階 東京シティアイ(東京都千代田区丸の内2-7-2)で行われます。

 楽しいイベントが盛りだくさん。ぜひ、足を運んでみてください!

定規も消耗品!? 映画公開間近「ちはやふる」原作者の末次先生にお気に入り文具をインタビュー♪

《渡邊淳子》

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