2018年12月に実施した「イード・アワード2018通信教育 幼児の部」で、ベネッセコーポレーションの「こどもちゃれんじ」が最優秀賞のほか、2つの部門で受賞した。「子どもが好きな通信教育」部門における受賞は、2012年からの7年連続となる。
昨年で30周年を迎えた「こどもちゃれんじ」が、世代を超えて支持され続ける理由とは。ベネッセコーポレーション・こどもちゃれんじグローバル本部・グローバル商品開発部・部長の縄井一郎氏に、その理由と今後の展望について聞いた。
自主性を育み、幼児の生活すべてを学ぶ機会に
--この度は「イード・アワード2018通信教育 幼児の部」での最優秀賞、おめでとうございます。
ありがとうございます。「子どもが好きな通信教育」部門では、これまでも毎年賞をいただいておりました。お子さまが「自分でやりたい」「こどもちゃれんじが好き」と思ってくれることは、私たちにとってもっとも大事なことなので、その部門を連続受賞できたことももちろん嬉しく思います。とは言え、最優秀賞は初めての受賞ですので、ようやく受賞できたと非常に感慨深いです。
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インタビューに応じる、こどもちゃれんじグローバル本部・グローバル商品開発部・部長の縄井一郎氏
--お子さまと、保護者の方から支持されている理由は、どのように考えられていますか。
お子さま自ら「やりたい」と学習に取り組んでいるという声は、保護者さまからも多く寄せられます。保護者の方が、お子さまに身につけてほしいこと、やってほしいことは、学習内容や学ぶ姿勢づくりも含めて、たくさんあると思います。私たちの教材の根底には、まず「子どもが自分の意志ですすんで取り組める教材にしたい」という思いがあります。保護者が強制的に勉強させるのではなく、自主性を育んでいくことが目的です。そこが皆さまにご支持いただいているポイントだと思います。
--御社サービスのこだわりや、他社の教材との違いを教えてください。
お子さまが、自分からやりたいと言ってもらえるコンテンツと、実際に自分で取り組める部分を多く設けています。また、他社の教材は、学習に特化したものも多いのですが、私たちは領域をさらに広げ、幼児の生活全般が学びの機会として捉えられるように配慮しています。たとえば生活習慣を身に付けられる教材や、低年齢向けにはダンスでリズム感を養うDVD教材も提供しています。
2世代・3世代で支持される理由は、安心感と安全性
--どのくらいの年齢から入会を検討される方が多いのでしょうか。
0・1歳児向けの「こどもちゃれんじbaby」も提供していますので、0歳児から始める方もたくさんいます。1・2歳の誕生日から始めるご家庭も多いですね。その後は、進級する春のタイミングや、クリスマスプレゼントとしてご入会される方もいらっしゃいます。
--入会理由としては、どんなことがありますか。
まだ小さなお子さまでしたら、歯磨きをいやがるとか、オムツがはずれないなど、成長過程における生活面での困りごとから検討を始める方がたくさんいらっしゃいます。上の年齢になると、保育園や幼稚園で行うような学習的な内容に自宅でも取り組みたい、数字やひらがなを読めるようにしたい、といった具体的な学習面での課題解決策として選んでいただくことが多いです。お子さまの年齢ごとにニーズが変わってきます。
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「イード・アワード2018通信教育 幼児の部」最優秀賞の受賞トロフィー
--今回「ブランドの信頼性の高い通信教育」部門においても、部門賞を受賞されました。
保護者ご自身が「こどもちゃれんじ」を受講されていたご経験から、自分の子どもにもぜひ、という方がここ数年増えています。そういった背景もあり、祖父母の方からの「プレゼント受講」を検討される方も多くいらっしゃいます。教材は受講されるお子さま、つまりお孫さまのご家庭にお届けし、お支払いなどの手続きは御祖父さま宛にご連絡させていただくというシステムです。30年間続けてきたからこそ、ブランドとして成熟し、世代を越えて愛されるサービスに成長することができたと感じています。
--「子どもが好きな通信教育」部門の受賞については、いかがでしょうか。
お友だちの家に遊びに行ったときに教材を見かけて、ちょっとだけ借りたら楽しかったとか、お友だちが楽しそうに取り組んでいるのをみて自分もやりたくなった、という理由で入会されるお子さまも多いですね。持ち運びやすいサイズなので、バッグに教材を入れてお友だちの家へ遊びに行き、一緒に勉強して帰ってくるなど、お子さま自身の日常生活に取り入れやすいことも身近に感じてもらえるひとつの要因かもしれません。
ニーズに合わせてコースやオプションを強化
--2018年4月から4歳児の教材「すてっぷ」、5歳児の教材「じゃんぷ」を、それぞれ特色ある3つのコースから選べるようになりましたね。
はい。この年齢になると、毎月届くワークブックである「キッズワーク」で勉強したい、という理由で入会するお子さまも多くなります。ただ、同じ年齢とは言え、4月生まれと早生まれのお子さまを比べると発育にも差があるのは事実です。問題を解ききれずワークを消化できない子もいれば、もっとたくさんの問題をやりたい、もっとレベルの高い内容をやりたいなど、ニーズが二極化する傾向にあり、私たちも課題を感じていました。
--子どもの発達や個性に合わせて、3コースに分けたということでしょうか。
はい、そうです。もっと机に向かって勉強として取り組みたいというお子さまは、より学習に特化した他社サービスや通塾に切り替える方もいらっしゃいます。一方、ワークを消化しきれないと退会する方もいらっしゃいます。私たちは、そういったご家庭それぞれに合う教材を提供したいと考えています。その解決策として、今回のコース選択があります。しっかりと基礎を押さえる「総合コース基礎」、発展的な内容も交えてバランスよく学べる「総合コース基礎+応用」、ワークと添削課題を中心として豊かな思考力を養う「思考力特化コース」の計3コースです。
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選べる3つのコースの教材(上・総合コース基礎、左・総合コース基礎+応用、右・思考力特化コース)
特に「思考力特化コース」は、これまでのワークより保護者の方が関わりながら解く問題が多く、お子さまにしっかり関わり、一緒に学びたいというご家庭に好評をいただいています。
--さらに、ニーズに合わせて追加されるオプション「こどもちゃれんじプラス」も用意されていますね。
はい。こちらも従来の「リズムプラス」「表現プラス」に加えて、3つのオプションを追加しました。昨今の理数系教育への注目を受けて「サイエンスプラス」は、映像や実験キットを使って、科学への興味を引き出す内容に仕立てています。そのほか、1歳児向けの「ぷち」と2歳児向けの「ぽけっと」には、早くから知育学習に取り組みたい方への「知育プラス」、3歳児向けに「ほっぷ」は絵本を通して言葉と感性を養う「読み聞かせプラス」が加わりました。
--オプション教材への反応は、いかがですか。
ご家庭ごとに学習内容をアレンジできるという点で、とても好評をいただいています。「知育プラス」は、1・2歳から丸や三角など、形や色などの概念理解について取り組みたい、という要望がかねてからあり、それに応えられたと思います。「サイエンスプラス」は、少し難易度が高いため、保護者の方と一緒に取り組む内容になっています。シャボン玉を作る実験や、映像が動いて見えるしくみなど、小学生レベルの内容を遊び感覚で楽しめるように工夫しており、先取りして学びたいニーズのある教育熱心なご家庭から評価をいただいています。
--本格的な器具で実験できて、とても楽しそうですね。一方で安全面への取組みは、どのようにお考えでしょうか。
安全を最優先するあまり、これまで「こどもちゃれんじ」本体の教材では提供できないものもありました。ご両親ともに仕事をされてお忙しいご家庭も多い中で、お子さまと一緒に取り組んでいただくことを安全性の前提にしてしまうと、保護者の方にもご負担をかけてしまいます。
それをオプションとして提供することで、お子さまとの距離感や学習に割ける時間によって自由に教材を追加し、ご家庭ごとにアレンジできるようにしました。
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充実のオプション「こどもちゃれんじプラス」
せっかくの楽しい学習の中でケガや事故につながるようなことがないように、私たちは、安全を最重視しています。弊社が提供する教材は、高い安全基準を設定し、すべてその基準をクリアしたものではありますが、さらに保護者の方が一緒に取り組んでくださることで、より高い安全性を担保できます。
新年度から「より自ら考え論理的思考につながる学び」を提供
--2020年の教育改革を踏まえての、今後の「こどもちゃれんじ」の方向性を教えてください。
30周年を機に、私たちの思いを「一生、役に立つチカラを。」というスローガンに込めました。一生役に立つチカラとは、子どもの意欲や好奇心、マインドのことです。文字や数について早くから学ばせたいというご家庭が多いのですが、実際のところ小学校に入ってからでも習得には問題ないという研究結果が出ています。
もちろん文字や数も大切ですが、それよりも将来の学びのベースになるもの、たとえば、いろいろなことに自分から興味をもったり、やってみようという気持ちなど、世の中に対して自分から積極的に関わっていく姿勢を、幼児期に育むことが大事ということを、メッセージに込めています。
--新学期に向けた具体的な取組みは、いかがでしょうか。
2019年度からは、見えないスキルを大切にしながら、保護者の方が求める見えるスキルも身につけていく「考える力プログラム」をスタートします。子どもが自分なりに気づき、それに対して疑問を持ち、考える経験を、幼児期から実践していけるような教材をお届けする予定です。小学校で必修化となることで話題のプログラミング教育についても、幼児期には概念的な理解はまだ早いので、そのベースである論理的思考につながる教材も提供したいと考えています。
「こどもちゃれんじ」は偶然の出会いや新たな発見の機会
--2020年の教育改革も含め、これからの教育にどのようなことを期待されていますか。
今後、海外で学ぶ子どもたちはますます増え、グローバル化はさらに進むことが予想されます。だからこそ横並びや同調意識ではなく、自分はどう考えるかといった主観が大切になるので、お子さまひとりひとりの持っている強みや個性を伸ばす教育が、より重要だと考えています。それぞれの個性を生かせる社会であり、教育であってほしいと願っています。
--戦後最大規模の教育改革にあたって、今後の学びや育児に不安を抱く保護者の方へアドバイスをお願いいたします。
保護者の方はみな、自分の子どもには幸せになってほしいと願っていますから、先が読めない状況に不安を抱く気持ちは、とてもよくわかります。でもYouTuberという職業が生まれるとは、10年前は思いもしなかったように、いくら想像しても先のことはわかりませんよね。
ですので、保護者の方も視点を変えて、まずはひとりひとりの個性を見守り、できる限りお子さまの気持ちを尊重してあげてほしいと思います。そうすれば、2019年の今は存在しない、素晴らしい職業で花開くかもしれません。
さらに、現代は商品も情報も自分の欲しいものだけが手に入る時代です。そのような時代にあっても「こどもちゃれんじ」本体の教材では、毎月定期的にバリエーション豊かな内容でお届けしますので、普段は触れることのないモノやコトに触れさせることができます。保護者の方も気付かなかったお子さまの興味や嗜好を、新しく見つけられるツールとしても、ぜひ活用していただけるとうれしいです。
--本日はありがとうございました。
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こどもちゃれんじグローバル本部・グローバル商品開発部・部長の縄井一郎氏
昆虫が苦手なお母さまは、お子さまと虫取りに行く機会はほとんどないだろう。でも、虫の鳴き声や昆虫の世界に触れたことがきっかけで、生き物に興味を持ち、才能が開花する可能性もある。ご家庭の学習だけでは網羅しきれない、バリエーション豊かな教材と学びの機会を提供してくれることこそが「こどもちゃれんじ」の良さだろう。子どもの可能性を広げながら、それぞれの得意分野も伸ばしてくれる。幅広いニーズをすくう教材が、多くの保護者からの支持につながっているのだろう。
「今回の教育改革で言われ始めたことは『こどもちゃれんじ』がサービス開始から掲げていることであり、今までの取組みは間違っていなかったと感じた」と話す縄井氏。論理的思考や伝える力、学習習慣づくりなど、子どもの日常にある360度をテーマ化し、その世界に触れるきっかけとして有効な「こどもちゃれんじ」。2019年春からの動きにも注目したい。