聖心女子学院初等科が校内学童を設置した狙いと反響

 「小1の壁」「小4の壁」として語られる小学生の放課後問題は、ワーキングマザーが仕事と子育ての両立の難しさに直面する厳しい現実のひとつだ。そんな社会的背景によって、2011年ごろから共働き家庭を前提にして校内学童・アフタースクールを設置する小学校が増えている。

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ジョアニークラブのようす
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  • 聖心女子学院初等科の大山江理子校長

NPO法人が学校内で展開するアフタースクール



アフタースクールの利用状況



 ジョアニークラブを提供する「放課後NPOアフタースクール」は、導入校の方針に柔軟に対応する。聖心女子学院の利用状況は、曜日固定のレギュラーで利用する児童が20名ほど。そのほかに1日単位でのスポット利用も可能で、利用者数は通常の20名前後から、保護者会の日などは100名前後になることもあるという。

 開室日や開室時間は、学校行事のスケジュールに連動しており、一斉下校や保護者会、個別面談のある日には利用者が増えるため、状況に合わせてサポート人員を増やして受け入れ体制を調整するほか、運動会翌日の休校日や夏休みなどの長期休校期間には朝から開室するなど、学校と密な連携をとりながら運営されていることも特徴だ。柔軟な運営の姿勢は、保護者にとっての利便性を高めるとともに、子どもたちの安心にもつながる。

 もうひとつの特徴は、就労の有無に関わらず家庭の事情に合わせて利用できること。ジョアニークラブでは、全校児童の6~7割、今年度の1年生は9割近くの家庭が登録し、必要に応じて利用している。

校内資源を活用した子育てインフラ



 放課後NPOアフタースクールは、小学校を活用したアフタースクールモデルを展開することで、安全でより豊かな放課後を支える社会の子育てインフラを目指している。同団体のエリアマネージャーの柏木さんによると、「校内の空きスペースを活用することにより、移動の手間を省き、安全性の確保、子どもたちの多彩な活動を叶える場所資源の有効活用、低コストでの運営など、さまざまなメリットがあるだけでなく、何よりも、多くの学友と一緒に過ごせるという心の充実感、保護者は安心して仕事ができる環境を整えることができるのです」と話す。

学校の方針に合わせた柔軟な対応



 個別のお稽古などのプログラムを展開するアフタースクールもあるが、ジョアニークラブでは、お友達と楽しく過ごしたり、静かに読書や学習をする時間を大切にしている。またときには、さまざまなゲストを招き、アート系の活動や、文化理解、SDGsなどの世界について考えたり、子どもたちの世界を広げる多様な体験の機会を提供したり、子どもたちが中心となって取り組む会議プロジェクトなど、子どもたちが主体的に遊び、発想や創造性を発揮できる場も提供している。取材当日も、児童たちが共同で制作した段ボールの小屋がいつの間にか出来上がっていた。カラフルな絵が描かれ、まるで秘密基地のようなその小屋は、新たな児童たちの遊び場だ。放課後NPOアフタースクールでは学校の方針に合わせて、「放課後の時間を有意義なものとし、楽しい時間にすることで、仕事をもつ保護者には安心感を、児童には学友との新たな学びの場を提供していきたい」としている。

 なお放課後NPOアフタースクールが提供するアフタースクールでは、英語やプログラミング、そろばん、アート、ピアノ、和菓子つくりや茶道などの定期開催のプログラムを展開するケースもある。

ジョアニークラブのようす
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 かつては、共働き家庭に育つ子どもは、専業主婦家庭の子どもに比べ、ともするとマイナスイメージをもたれることもあったが、私立小学校にも学童保育設置の動きが広がっている。現代のライフスタイルを考えれば、放課後を親がいない間の穴埋め・補う時間として費やすのではなく、子ども同士の交流、他の大人たちとの触れ合いといった経験のなかで、社会性や自立心を養い、自由な創造性を伸ばすためのきっかけ・挑戦の時間へと転換することもできる。高い人気を誇る名門校でも時代の変化に合わせたさまざまな取組みが行われている、そんなことを実感した取材だった。
《編集部》

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