医学部合格のチャンスを増やす「推薦入試」の活用法

 駿台予備学校は、2024年8月4日「医学部推薦・総合型選抜対策講演会」を開催した。当日は医学部専門の市谷校舎で副校舎責任者を務める細谷一史氏が登壇。情報戦と言われる医学部受験において合格のチャンスを増やす「推薦・総合型選抜」の活用法とは。

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医学部合格のチャンスを増やす「推薦入試」の活用法
  • 医学部合格のチャンスを増やす「推薦入試」の活用法
  • 講演会に登壇した医学部専門の市谷校舎で副責任者を務める細谷一史氏
  • 2024年8月4日開催「医学部推薦・総合型選抜対策講演会」資料
  • 2024年8月4日開催「医学部推薦・総合型選抜対策講演会」資料
  • 2024年8月4日開催「医学部推薦・総合型選抜対策講演会」資料
  • 2024年8月4日開催「医学部推薦・総合型選抜対策講演会」のようす
  • 熱心に聞き入る参加者たち
  • 講演会に登壇した医学部専門の市谷校舎で副責任者を務める細谷一史氏

 依然として難関の医学部入試。国公立・私立問わず定員が限られるため、受験生としては少しでもチャンスを増やしたいところだろう。

 医学部への圧倒的な合格実績を誇る駿台予備学校は、2024年8月4日「医学部推薦・総合型選抜対策講演会」を開催した。当日は医学部入試に精通したプロフェッショナルとして、医学部専門の市谷校舎で副校舎責任者を務める細谷一史氏が登壇し、推薦・総合型選抜の最新情報を伝授。情報戦と言われる医学部受験の中でも特に情報収集が難しいテーマだけに、参加申込が殺到し、複数の教室で数百人が聞き入った。同講演会で細谷氏が語った、医学部合格のチャンスを増やす「推薦・総合型選抜」の活用法とは。

「推薦入試=合格確定」ではない

 今や多くの大学が実施している推薦・総合型選抜。医学部でも推薦入試が全定員の2割強を占めるが、「医学部の推薦入試は他学部とは別物」と考えたほうが良さそうだ。細谷氏によると、医学部の場合、最大の課題は、高い評定平均値が求められることに加えて、学科試験が課せられることだと言う。

 「親世代の感覚だと、『推薦=100%合格』で年内に進学先が確定し、一般入試より入学しやすいイメージをもたれるかもしれません。ところが実態は、出身高校で高い評定平均をキープし、無事に推薦を受けられたとしても、医学部では一般入試と同様に大学独自の学科試験、または共通テストを受けなければならず、その成績次第では普通に“不合格”になることもある入試なのです」(細谷氏)。

駿台予備学校市谷校舎副校舎責任者の細谷一史氏

 つまり、推薦入試で合格を狙うには、早いところでは推薦枠の学科試験が行われる11月までに全教科すべての範囲を仕上げておく必要があるということになる。また、共通テストを必須とする大学では、共通テストの結果が判明する2月まで合否が判明しないため、不合格だったケースに備えて一般入試の対策を続けざるをえず、不合格への不安というプレッシャーに長期間さらされながらも、勉強のペースを緩めるわけにはいかないのだ。さらに厳しいのは、推薦入試でも一般入試同様、共通テストでは8割以上の高得点が必要とされるという。

 「全体の定員から考えると、推薦入試は全体の約23%であるのに対し、一般入試が全体の約77%。数で見れば、推薦入試には全国で2,000人を超える枠が用意されているものの、一般入試には7,000人以上。一般入試でも、3月後期に行われる試験は定員が少なく、そこにたくさんの受験者が集まるので、全入試方式の中で一番倍率が高くなる。したがって、あくまでも本命には私立大学や国公立大学・前期日程という大きな枠を見据えるのが正攻法。推薦入試から一般入試までは半年近い長丁場のため、医学部受験は体力勝負。どの入試形態で臨めば一番学力が伸ばしていけるかを計画的・戦略的に考えなければ本末転倒です」(細谷氏)。

 このような点から細谷氏は、推薦入試の正しい捉え方として、「年明けに本格化する私立大学と国公立大学・前期日程の前に、もうひとつ受験機会を創出すること」だと述べた。

「地域枠」を使う際に気をつけたいこと

 推薦入試で目を引くのは、「地域枠」の人数の多さだ。たとえば徳島大学では医学部の全定員100名に対して推薦枠が37名と多く、一見これはねらい目かと思いがちだが、細谷氏は次のように釘を刺す。

 「アドミッションポリシーには、徳島の医療を担う強い意志をもっている人と書かれています。地域枠とは、どんなに学校の成績や学科試験の成績が良くても、そこがどんな土地なのか、何が課題なのかといったことへの興味・関心と、その地域医療に貢献する熱意と使命感があって、初めてスタートラインに立てるもの。入学後に馴染めば良いという程度の姿勢では門前払いになるでしょう」(細谷氏)。

 地域枠は、現在その土地に住んでいなくても出願できるケースは少なくない。最近では、私立大学医学部医学科最難関の慶應義塾大学で栃木県枠1名が新たに設けられて話題になったほか、国公立大学医学部医学科最難関のひとつである東京医科歯科大学(2024年10月1日からは東京科学大学)にも2024年度入試では5名の長野県枠があり、全国から受験が可能だった。

 しかし当然ながら、大学によって期間は異なるものの、少なくとも数年間決められた地域、さらに特定の医療機関に従事しなければいけないという制約がある。前述の東京医科歯科大学の長野県枠の場合、6年間の学費貸与を受ける代わりに9年間長野県内での就業義務を負うもので、これでは30代半ばあたりまでその土地を離れることはできない。したがって、医学部の地域枠に挑むには、細谷氏の言葉どおり「使命感」と「覚悟」が求められることになる。

推薦入試は浪人生こそチャンス

 推薦入試といえば現役生のみが対象かと思いきや、「実は高卒生が受験できるところも結構ある」と細谷氏。つまり、現役生にとっては、推薦入試にも強力なライバルがいることを意味する。推薦入試が行われる秋の時点では、現役生は数Ⅲや理科ですべての範囲を履修しきれていないケースが少なくない。一方、ほとんどの浪人生は早々に出題範囲を一巡し、仕上がった状態なので、現役生は準備が不十分な段階で浪人生と同じ土俵で戦うことになる。

 「医学部入試は学科試験に加えて、志望理由書や小論文、面接など、対策すべき課題が膨大にあるため、現役生にとっては非常にタイトなスケジュールにならざるをえません。推薦入試ですら、受験可能な大学であれば、浪人生のほうに一日の長があるというのが今の入試の構造なのです」(細谷氏)。

 また、限定的ではあるものの、推薦入試と一般入試とを併願できる大学もあるため、特に最近は高倍率になる傾向があるようだ。細谷氏は「結局のところ、一般入試で受けたほうが実は倍率も低くて入りやすかったというのはよくあること」と言い、「繰り返しになるが、推薦入試は、受験機会をつくるという点からお勧めしたい一方で、ハードルはそれなりに高いことを留意しておくべき」と語った。

「推薦入試であっても、現役生より浪人生のほうが有利」と細谷氏

推薦入試にも戦略的な大学選びを

 ひとくちに推薦入試といっても大学によって出題形式はさまざまだ。細谷氏はいくつかの大学を例にあげ、その違いを説明した。

 まずは国立の新潟大学。ここは面接の結果と出願書類に加えて、学科試験として共通テストを受ける必要があるが、受験を要する教科・科目は一般入試の前期日程と同じ比率となっている。「これは、推薦に特化した対策は必要なく、前期日程の入試に合わせてしっかりと対策すれば良いケース。早めに共通テスト対策を徹底的にやれば良いということで、受けやすい推薦入試だといえます」(細谷氏)。

 次にあがったのは、私立の東京医科大学。日本語と英語それぞれの小論文2課題と面接、書類審査に加えて、基礎学力検査では数学・物理・化学・生物からマークシート形式で出題される。理科3科目という、通常の受験勉強に特化した内容とは異なるうえ、70分間で30問の設問を解くスピード重視の試験はなかなかハードだ。

 「小論文36点、面接24点、書類審査12点。書類審査では調査書、志望の動機、推薦書、中学からの学歴および職歴(予備校含む)が見られます。そして基礎学力検査が100点の合計172点。面接の得点が著しく低い場合は合計点に関わらず不合格となることがあると明記されつつも、合計得点が同点の場合は基礎学力検査の点数によって順位付けを行うとあります」(細谷氏)。

 また、面接と志望理由書の比重が高い大学として、私立の聖マリアンナ医科大学をあげた。この大学は、一般入試に比べて推薦入試で面接を重視しているという。また、基礎学力試験では推薦入試の方が英語の配点が高く、一般入試では理科の配点が高い。つまり、「英語が得意なら推薦入試でチャレンジしておくべき大学」と細谷氏は言い、「先ほどの東京医科大学の学科試験は大学のWebサイトに問題が公開されていますが、スピード重視とはいえ実はそんなに難しくはありません。試しに解いてみて『これはできそうだ』と感じたら、その大学の試験に向いているということ。つまり推薦入試でも、英語が得意とか小論文を書くのが好きだとか、面接でアピールしたいことがあるなど、自分の得意なところを存分に活かせる入試かどうかを見極めることが大事になってくるのです」(細谷氏)。

 推薦入試にも戦略的な大学選びが不可欠だということだ。

志望理由書で欠かせない3つのポイント

 推薦入試では避けて通れないのが、志望理由書だ。志望理由書は、一般入試でも出願時に求められることが多く、面接の際には参考資料として使われる。

 細谷氏は、医学部受験生の多くが書きがちな理由として、「子供の頃病気になり、お世話になった医師が優しかったから」「親が医者だから」といった例をあげ、「生成AIでも書けることは志望理由にならない」と一刀両断。また、カリキュラムや施設を理由とするのも、「オリジナリティを出すために学校の特徴を書きたいのだと思うが、実際のところ医学部というのは国家試験に向けてどこも似たカリキュラムでやっており、施設も大学同士の差はほとんどない。そのため、面接官にしてみればうちの魅力はそれだけなのかとなる」とも指摘。ただし巷では、こうした内容を推奨する添削指導もあり、注意が必要だとした。

 細谷氏によると、志望理由書を書くコツとして、「各大学のアドミッションポリシーをよく読み、どんな人材がほしいかを正確につかむこと。そのうえで、もっとも重要なのは具体性だ」と言い、「無理に医療知識にこだわる必要はない。自分にしか書けないオンリーワンのエピソードを入れてほしい」と語った。

 大学側が見たいのは、合格を目的にしていないかどうか。その受験生が抱く未来へのビジョンであり、「想像できないことは実現できない。今は妄想でも良いから、卒業後のビジョンを具体的に伝えること。自分という人間に期待を抱いてもらうことが何よりも大事だ」と強調した。

【志望理由書で押さえるべき3つのポイント】 
 1. 志望理由が明確に書けているか(具体性)
 2. これまで生きてきた中で成長したこと、成功・失敗体験から学んだことが書けているか(オンリーワンのエピソード)
 3. 大学での学びをもとに、いかに成長し、将来どうやって社会に貢献していくか(未来へのビジョン)



合否に直結する面接、どう乗り切るか

 もうひとつ、細谷氏は面接の重要性について触れた。医学部の入試では、国公立、私立すべての大学で面接は必須とされ、学科試験の成績が十分であっても、面接の内容によっては不合格になることがある。「配点によっては面接で合否が逆転する大学もある。それだけ医学部入試では面接が重要視されており、早めの対策と準備が不可欠だ」と細谷氏。医学部入試の面接はおもに次のような形態に分けられるという。

個人面接:受験生1名に対し、面接官1~3名以上による対話型

 例<2022年合格者アンケートより>
 「再生医療に興味はあるか」(北海道大学)
 「挫折した経験について」(東京大学)
 「1分間で自己紹介」(東京医科歯科大学)
 「最近の気になるニュース」(大阪大学)

集団面接・討論面接:受験生、面接官共に複数名が向き合い、対話や議論型

 例<2022年合格者アンケートより>
 討論テーマ「医学部で面接をする意義、どのような質問をすると良いか」(日本医科大学)

MMI(Multiple Mini Interview):受験生に複数の面接室を巡らせ、多様な課題を短い時間で答えさせる

 例<2022年合格者アンケートより>
 「(日本の男女の健康寿命と平均寿命の分布図を見て)読み取れることを考察する」(東京慈恵会医科大学)
 「患者の情報を病院外にもち出そうとしている友人への対応」(東邦大学)

メモを取りながら、参加者たちは熱心に聞き入っていた

 大学によってどの形態かは異なるものの、よく聞かれる問いとしては、志望動機(大学・医学部)、将来のこと(診療科・研究分野)、地域のこと(残る意志)、自分自身のこと(自己分析)のほか、医系知識や一般常識を聞かれることもあるようだ。細谷氏は「こうした問いへの答えは事前にしっかりと準備を」と述べたうえで、「将来のビジョンは明確にもっておくこと」と訴えた。

 アドミッションポリシーは、同じ大学でも推薦と一般で異なる場合があり、注意が必要だ。ただし、だからといって「決まった正解を見つけようと、他人に考えてもらった答えを丸暗記してもすぐにバレる」と細谷氏は警鐘を鳴らす。

 「ここは誰かに頼るのではなく、面接においてもじっくりとアドミッションポリシーを読み、自分の過去を振り返りながら現在から未来を見据え、自分なりの正解を組み立てるべき」「面接の練習で、それを身近な保護者に聞いてもらうのが一番」と言い、「保護者は面接官になったつもりで聞いてあげてほしい」と家庭でのサポートを促した。

 最後に細谷氏は、「推薦一般問わず、医学部受験では、志望理由書と小論文、面接は三位一体なので、これらの内容がブレないように連動させること」とアドバイス。「駿台には、あらゆる大学の医学部に合格し、進学していった卒業生からの声をまとめた膨大なデータが蓄積されており、校内生ならいつでも閲覧できる。また、これらをベースに、志望理由書の添削や小論文指導、模擬面接の実施を通じて、一人ひとりの志望大学に合わせた万全なサポートをしていく」と結んだ。


推薦が得意科目の活用や医師のキャリア選択のひとつに

 医学部入試の皮切りとなる推薦受験。秋の時点からすでに医師になるための覚悟が求められ、強い意志と強靭な精神力、思考力、戦略に基づいた入念な準備などが必須となることをつぶさに伝えた講演会であった。推薦入試は秋時点で一般入試でも合格するほどの完成度が必要となり、決して楽な受験ではないものの、細谷氏の言うとおり受験機会を増やすことができ、また、得意な入試科目を生かしたり、キャリアや進路を考えたうえで地域枠を申し込んだりと、使いようによって有利な選択もできるだろう。そこには、医学部受験に抜群の実績を誇る駿台のサポートが役立つに違いない。

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《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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