たまにしか後席に人を乗せないのならばコンパクトカーにリアドアを設けるのは合理的ではないと日ごろから考えていたから、ラインナップ最小の『A1スポーツバック』は、アウディ流ニッチ割り算をもう一回繰り返したものだと了解していた。全長もホイールベースも変わらないが、ルーフエンドの形状を改め、後席のヘッドクリアランスを確保したというだけあって、狭くは感じない。パワートレインの洗練度とシートの掛け心地が2ドア版と変わらずに素晴らしい。舗装の良好な路面では乗り心地も、よりマイルドに進化している。ただし、舗装が剥がれ掛かっているような荒れた路面や段差などでは一転して鋭く突き上げられる狭量さもある。A1スポーツバックの完成度の高さはよく体得できたが、やはり、コンパクトなクルマは2ドア版が第一候補になるという持論は覆らなかった。でも、「現在、世界のすべての国で人口の都市集中化が進んでいる。都市では複数所有しにくいから、小さなクルマにも大勢で乗るようになる」というアウディの見立てに説得力もあり、聞き入ってしまった。5つ星評価パッケージング:★★★インテリア・居住性:★★★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★★オススメ度:★★金子浩久|モータリングライター1961年、東京生まれ。主な著書に、『10年10万キロストーリー 1〜4』 『セナと日本人』『地球自動車旅行』『ニッポン・ミニ・ストーリー』『レクサスのジレンマ』『力説自動車』(共著)など。