113番元素は、理化学研究所RIビームファクトリーが10年近い年月をかけて中3原子を合成し、発見したもの。113番元素は現状、人々の生活に直接関わることはないと考えられているが、理研は「元素は世界の構成要素」であり、「物質の存在に関わる基礎研究の深化は、未来の科学、ひいては科学技術と社会の発展に大きな貢献をする」ことは間違いないとしている。
◆命名は初、は誤り?
理研によると、新元素への命名権を獲得したのは今回初だが、命名したのは初めてのことではない。過去には故・小川正孝氏が「ニッポニウム」の研究を行い、原子量が約100の43番元素を精製、分離したと主張。小川氏はその元素をニッポニウムと命名して発表したが、ほかの誰も結果を再現できなかったことから、「幻の元素」と呼ばれた。ただし、小川氏の死後、精製・分離した物質はレニウムであることがわかり、小川氏が1908年に新元素を見つけたのは事実だったと証明されている。
◆なぜ「ニホニウム」? ニッポニウムが使えない理由
日本が発見した元素であることから、ネットでは「ニッポニウム」「ジャポニウム」のほか、発表した理研の名を引用し「リケニウム」はどうか、などの案がさまざまあげられている。しかし、国際純正・応用化学連合(IUPAC)の命名ルールによると、正式・非正式に関わらず、一度付けられた名前を利用することはできない。よって、過去にあがった「ニッポニウム」は今回、名案の対象にはならない。また、企業名や組織名を冠することも不可能。
◆「待っていれば、絶対に来る」…森田浩介准主任研究員の言葉も掲載
理研の特設サイト「9年で3個、400兆回の衝突の末」では、研究者インタビューを掲載。森田浩介准主任研究員に対し、2012年に初めて3個目の113番元素の合成を確認したときの気持ちや今回の発表に至る発見過程、研究の手法、さらに研究員とのエピソードも尋ねている。
IUPACによる正式な名称発表は、6月8日夜(日本時間)の予定。理研は今後、119番と120番元素の合成を「次の挑戦」としている。日本発の元素から目が離せない。