◆透かすと見える「オウミノカタチ」
「びわこ一筆箋」は、ReEDEN10周年を記念し新たに抄造(しょうぞう=原料を抄いて作る製紙法)した、リエデンオリジナルのヨシ透かし紙で作った特別な一筆箋です。和紙の技術を駆使した透かし模様は、「びわこ」と琵琶湖・淀川水系の固有種「こぎょ(湖魚)」の2柄で、縦書き横書きどちらにもお使いいただけます。
和紙のあたたかみを感じる風合いの紙は、一見無地に見えますが、光にかざすとこの通り!濃い色の下地を透かしても綺麗です。
◆絵柄の全貌を明らかに!
【びわこ】
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【こぎょ(湖魚)】
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◆透かし紙に初挑戦!~デザイン編~
「透かし」とは、紙を光に透かした時に模様が透けて見えるように、紙漉きの時に、パルプ(繊維)をその部分だけ少なく(薄く)する加工であり、越前和紙の伝統的な技術です。
まずは、その特性を理解しデザインを起こすところから始まりました。模様の輪郭が優しく、ぼんやりとするため、小さい・細かい絵柄や細い線は実現不可能。小さな単独パーツは、パルプが剥がれ落ちるため、つながりのあるデザインに。
また、抄造する原紙サイズは、幅約1000mmのロールです。対して、「びわこ一筆箋」の製品サイズは、タテ175×横80mm。紙の規格サイズで考えた場合、菊全判(939×636mm)から、27枚取れる計算になります。そして、仕上がった模様を思い出してください。まずは、「びわこ」。整然と同じ絵柄が並んでいると思いきや、全面透かしのびわことヨットが隠れているのです。位置はランダムとしても、この3種が27枚どこをとっても切れることなく1枚に収まるよう配置し、絵柄のパターンを構成。これが中々に大変。さらに絵柄が複雑な、「こぎょ」にいたっては言うまでもありませんね。ビワコオオナマズとニゴロブナの頭から尾ビレまで切れないように配置しています。
◆透かし紙に初挑戦!~抄造編~
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◆透かし紙に初挑戦!~抄造編~
何度もチェック・修正を重ね、ようやくデザインにOKが出たらいよいよ抄造です。折しも、1月の大雪の日、一路福井県に向かいました。滋賀の程よい雪に慣れた我々には、福井は別世界でした。色んな意味で期待と不安に胸を膨らませ、やってきたのは、いつもReEDENの風合いあるヨシ紙を漉いてくださっている、越前和紙の製紙会社さん。
始めのトライでは、びわこ(輪郭)やお魚の模様がはっきりとせず、びわこ(全面透かし)に所々パルプが入り込み、まだらになっていました。模様をはっきりさせるには、パルプを減らし薄くする必要があります。しかし、パルプを減らしすぎると紙に穴が空き、インク抜けや次の生産工程で不具合が生じてしまいます。デザイン・品質ともにベストのラインを見つけ出すにあたり、透かしの絵柄の難しさを痛感しました。さらに、紙を漉く際に機械の速度や引っ張り具合で、微妙に紙が縦横に伸び縮みするため、こだわった模様の配置は、より繊細な調整技術を必要としました。
そんな中、苦心してくださったのが紙のプロ、製紙会社さんです。長年の経験と知識を活かしつつ、新しい発想でアイデアを出し合い、この模様と向き合って下さいました。パルプの量、機械の速度、細かな調整と職人の確かな技。そして、とことん突き詰めるモノづくりへの情熱と誇り。その真摯な姿勢に胸が熱くなりました。同時に、応接室のある家屋から、工場へと続く雪の小道を往復する度に、どんどんと増えていく不良紙のロールの厚みに頭が下がる想いでした。(不良となった紙は、また紙の原料になります)
そうして仕上げていただいた紙を光に透かした時、その美しさにとても感動しました。大雪のため運転見合わせ続きの帰りの電車の中、この紙が製品になる日を想像して、できたてほやほやのサンプル紙ロールを手に胸が高鳴りました。
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◆透かして見えるは?
その特別な紙で作った「びわこ一筆箋」。万年筆でもご使用いただきやすいように、滲みどめの加工もされています。付属の罫線下敷は、透かして使用すると文字をまっすぐ書くことができます。罫線下敷の裏面は一面琵琶湖をイメージした水色となっており、こちらに透かすと「びわこ」や「こぎょ」の絵柄が優しい水色で透けてみえる様子も素敵です。
便箋ほど長くはなく、メモほど短くはない。ほんの一筆気持ちを添える一筆箋。文章に込められた気持ちと一緒に滋賀らしい魅力が透けて見えます。このコラムを読んでくださった皆様が、この紙に込められた情熱も、ほんの少し透かし見てくだされば幸いです。