今回は、「~唯一無二~ここにしかないぼくらのまち、わくわく探そう“新”小金!」をテーマに、20か所の旧家や寺社、店舗など小金の施設を6年生が調査。9月15日には、4、5年生に調査報告を行う発表会が行われた。
子どもの自主性を大人が見守る
松戸市小金は、江戸時代には水戸街道の宿場町「小金宿」として栄えた地域である。そうした歴史を含め、地元はどのようなところなのか、子どもたちとともに再発見しようと、1999年から「わくわく探検隊」が開催されてきた。主催は、小金小学校と、住民の有志で作られた「小金引前倶楽部」。地域の大人たちと小学校とが連携したイベントである。
「わくわく探検隊」はまた、小金小学校の「総合的な学習の時間」としての取組みでもあり、6年生が、1学期と2学期の初め、ときには夏休みも使ってグループごとに対象施設を調査。発表会当日は、4、5年生がグループごとに施設を巡り、6年生の調査結果の発表を聞く。5年生にとっては、来年は自分たちがやることになると思いながら、参加することになるわけだ。なお2012年には、子どもたちの自主的な取組みが評価されて、「わくわく探検隊」は千葉教育大賞を受賞している。
4、5年生のグループが施設を巡るようすを見ていて印象的だったのは、横断歩道付近はもちろん、さまざまな街角に大人たちが立ち、子どもたちを見守っていたことだ。子どもたちのグループには引率の大人がいるわけではなく、自主的に施設を巡っていく。ときには5年生が「2列だよー」と、遅れる子に声をかけながら進むわけだが、いたるところでスタッフらしき大人たちがそのようすを優しく見つめていた。
聞けば、PTAの母親や“パパさぽ”の方々が見守りを担当しているとのこと。その慣れたようすに、「わくわく探検隊」というイベントが根付いているのだと改めて感じた。
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玉屋の前で見守っていたパパさぼメンバー。以前はパパさぽという名ではなく、おやじの会だったのだとか
地元の危険を発見・調査、無電柱化を目指す
東漸寺幼稚園で発表されたのは、「小金の防災について」。6年生たちは、夏休み中の8月10日に、千葉大生とともに学校周辺を見て回り、危険だと思われる電柱、壁、建物、看板には地図にマークを付けていった。壊れかけたブロック塀や落ちてきそうな看板、災害時に倒れそうな電柱など、50か所もの危険がマークできたという。なおこの地図作りには、千葉大学大学院木下勇研究室と一般社団法人子ども安全まちづくりパートナーズが協力をしている。
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地図作りには、千葉大学大学院木下勇研究室と一般社団法人子ども安全まちづくりパートナーズが協力
地図ができたあとは発表の準備が待っている。6年生たちは、調査をわかりやすく4、5年生に伝えるために、パネルや立体紙芝居へと作り込んでいった。
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発表の準備を行う6年生たち
15日の発表当日には、「危険物=モンスター」と位置付け、モンスターを防災マンがやっつけるという設定で、劇を交えて地元の危険を説明。そして最後に、パネルで「まちの取組み」について報告した。実は、小金では近い将来、旧水戸街道の電柱を地中化する予定だという。
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防災マンが町のモンスターをやっつけた! 15日の発表会の一コマ
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発表パネル
現在電柱は、景観を損ない、歩道を狭くし、災害時の救援活動を妨げるものとして課題となっている。国土交通省を中心に無電柱化が進められており、2020年のオリンピック・パラリンピックを視野に入れ、次期の計画が検討中だ。
千葉大生から頼もしい支援
今回の調査に協力した大学生は、千葉大学大学院園芸学研究科で地域計画学を学ぶ木下ゼミの学生たちである。担当されている木下勇教授は、もともと水戸街道の宿場町だった地域の特徴を活かそうと、「町並みをよくする会が16年前に立ち上がった」のだと教えてくれた。そして、宿場町らしくしようと町をデザインしていき、「電線の地中化にいたった」のだという。そのために、無電柱化を実現した長野県松本市にも見に行ったそうだ。
今回参加した大学4年生の宮崎一郎さんは、「小学生は僕たちよりも背が低いので、大人では危険だと感じないブロックでも危険物だと発見できた」と、小学生ならではの視線が役立ったと話していた。小学生にとっても、大学生のお兄さん、お姉さんと一緒に調査し、地図を作成できたことはとてもよい経験だったに違いない。
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協力してくれた千葉大生たち
160年前の旅籠「玉屋」で歴史や秘密を知る
小金宿と呼ばれていた当時の名残を示すものは、今では残り少なくなっているそうだが、そのなかでも、旅籠「玉屋」は現在も残されている大切な建物だ。ここも、わくわく探検隊の対象施設だ。
「玉屋」はおよそ160年前に建てられたのだという。原則として内部は非公開だが、小金宿祭りやわくわく探検隊が活動する際には特別に立ち入りが許される。いつもは入れない扉を、頭を低くして子どもたちが入っていくと、囲炉裏のある畳敷きの部屋がある。その部屋で6年生たちが、玉屋の歴史、玉屋の建物の特徴などを寸劇やクイズ形式で調査報告してくれた。
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寸劇では、偉い人が来たときに慌てて階段をのぼり、2階への入口を閉じることが演じられた。これは、玉屋が2階建てではなく、1階建てであるように見せかけるためだという。というのも、水戸街道を大名が通るときに、2階から見下ろしてはならないからだ。これは旅籠である玉屋ならではの秘密である。
こうした玉屋の歴史や秘密が説明されたあとには、クイズタイム。正解するとプレゼントがもらえるクイズである。
「玉屋は何代まで続いているでしょう?」「昔のお金は1枚当たりいくらでしょう?」といった問題が出題され、4つの選択肢に対して、「これだ!」と思うものに手をあげる。ちなみに1問目の答えは5代目、2問目の答えは37円。残念ながら全問正解者はいなかったが、1問でも正解した人にはプレゼントが贈られた。
発表後には、1枚当たり37円の寛永通宝がお披露目され、子どもたちは興味津々にお金の入った箱を覗く。小金小学校の堀合先生から「触ってもいいんだよー」との声がかかると、初めての古い通貨に触りはじめ、わいわい話が盛り上がっていた。
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寛永通宝を皆で見る
小金の6年生ならではの思い出
次の発表が始まる前に6年生たちに話を聞いたところ、1学期と2学期で合計10回ほど、皆で集まって調査をしたのだという。調査方法はいろいろで、玉屋のご主人への取材はもちろん、本やインターネットでも調べたとのこと。また、発表の際の役割は、皆が平等になるように話し合って分担したのだという。劇をやる人だけは“ちょっとだけ”もめたそうだが、あとはスムーズに決まったそうだ。こうしたわくわく探検隊での発表の機会が持てるのは6年生だけ。「よい思い出だね。これからもがんばってね」と言うと、「はい!ありがとうございます」と元気な声がかえってきた。
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玉屋で発表してくれた、元気いっぱいの6年生たち
地元に生きる人を知る
わくわく探検隊の対象施設は、歴史、食、仕事、まちの4つに分けられ、今回は20か所が選択されていた。今回ここで紹介したのは、「まち」から千葉大学木下教室の町の防災に関するものと、「歴史」から玉屋の2つだけだが、ほかにも興味深い施設がたくさんあった。
たとえば、「仕事」分野ではマツモトキヨシ資料館がある。実は、マツモトキヨシの第1号店は小金の水戸街道沿いだという。ほかにも、町の歴史を知ることができる寺社や、町にあるレストランや和菓子屋さんの仕事の調査など、町を知ることはもちろん、地元の身近な人たちがどのように暮らしているのかを子どもたちが知る絶好の機会となっている。
また、20年間開催し続けてきたことで、地元の恒例行事となり、子どもたちも6年生になると調査・発表をするのだと自覚していることも素敵なことではないだろうか。まさに地域ぐるみで子どもたちの成長を見守る行事として、教室ではできない勉強をするのがわくわく探検の時間だと実感した。