増加する共働き家庭の小学校受験、我が子にあった志望校選びとは

 小学校受験が身近なものとなっている昨今は、共働きの家庭で目指すケースも多いという。近年の「志望校選び」について、教育図書21の新中義一氏に話を聞いた。

教育・受験 未就学児
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  • 教育図書21代表取締役の新中義一氏
  • 教育図書21代表取締役の新中義一氏
  • 教育図書21代表取締役の新中義一氏

 昨今、首都圏を中心に受験者数を伸ばしていると言われている「小学校受験」。その背景には、中学受験の激化や、共働き世帯を受け入れる体制を整える私立小の出現など、時代の変化に連動した理由が推察される。

 「小学校受験が、ごく一部の限られたご家庭が取り組むものというイメージから、選択肢のひとつとして一般化しつつある」と語るのは全国最大の小学校受験模擬テスト「小学校受験統一模試」を主催している教育図書21の代表取締役の新中義一氏だ。昨今の小学校受験の傾向や、コロナ禍を経て小学校受験はどのように変わるのかなどを聞いた前回に引き続き、今回は、「志望校選び」に焦点を当てた。

我が子にあった志望校の選び方

 受験時の大きな悩みのひとつは学校選びだろう。どのようにして、我が子にあった受験校を決めれば良いのだろうか。

 新中氏は「第1志望校は合格可能性などは勘案せずに、純粋に行きたい学校で良いのではないか」と言う。そのうえで、第2志望校以降は合格可能性をしっかりと見極めて固める必要がある。合格の可能性は、模試で我が子の立ち位置を理解するとともに、学校の人気度もチェックすべきだ。新中氏によれば、手堅いのは出願者数と合格者数で割り出す倍率が3倍以下だそうだ。

 「多くのご家庭は、受験する可能性がある学校すべてに出願するため、実際の受験数よりも多くなります。さらに、学校側も少しバッファをもって合格者を出します。そう考えると、実質倍率は2倍程度ということになるでしょう」。

「第1志望は行きたい学校に」と語る、教育図書21の代表取締役・新中 義一氏

 それでは、どのように学校選びをすれば良いのだろうか。これは、行動観察でどのようなことが評価されているかという点が判断のひとつとなるという。

 親としては理想の学校を見つけた際、子供の性格よりも行動観察に受かりやすい行動を教え込もうとする場合がある。ある意味受験対策ともいえるが、注意が必要だと新中氏は指摘する。「子供が長い時間を過ごすことになる学校ですから、無理をしすぎも良くありません。子供の個性と学校の校風が合っていた場合、無理な対策をしなくてすみますし、入学後も学校生活を楽しめるでしょう」。

 また、日常の生活も考えて志望校を決める必要もある。小学校受験と言えば、専業主婦家庭しかできないものと考えられていた時代もあったが、ここ十数年の間にアフタースクールを学内に用意する学校も出てきた。民間学童に学校から直接行くことを許可する学校も珍しくない。

 「共働き家庭が小学校受験をする場合、学校説明会などで平日の保護者の活動がどのくらいあるのか等は聞いておく必要があります。運動会などの行事は週末に実施する学校も多いですが、意外と平日に保護者を集める学校もあるので、確認してみると良いでしょう。以前であれば共働き家庭で小学校受験は難しいと言われていましたが、今はそんなことはありません」。

 小学校受験が一般化し、学校側の対応も時代の変化に合わせて柔軟に変わってきている。合同説明会は、学校との出会いの場だ。それを活用しつつ、気になる学校には実際に足を運んでみると良いだろう。

プロが考える小学校受験をするメリットは「家族力」

 小学校受験のメリットを新中氏に聞いた。

 「小学校受験の最大の良さは、家族で立ち向かえる最後のイベントという点です」。

 中学受験も親子の受験とよばれているが、内容が高度だからこそ、子供のパートナーは親ではなく塾(と塾の講師)という側面が強いと新中氏は言う。

 「小学校受験は、完全にご家族で一致団結して乗り越える受験です。いつもは仕事で忙しい親が、子供と向き合い、成長を見つめる。そして、子供の良さを伝えるための面接の準備をし、力を合わせる家族力が問われます。小学校受験までの準備の過程は濃い家族時間として思い出になり、子供にとって人生の糧となるでしょう」。

「家族力が問われるのが小学校受験です」と新中氏

 さらに、行動観察のための対策は、小学校入学以降の生活や人生における基礎的なスキルを身に付けることにつながると新中氏は続ける。

 「行動観察で問われる能力や社会性は、協調性やリーダーシップ、課題発見能力や、それを解決する能力です。つまり、ソーシャルスキルトレーニングともいえる成長に必要なスキル。それを小学校受験対策として身に付けられるのは、小学校受験の結果に関わらず意義のあることだと思います」。


 希望の学校に合格し、望む教育環境で小学校からの長い成長期を過ごすことができれば、最高だ。しかし、結果はどうであれ、小学校受験に家族で挑むことが大きな魅力であると、新中氏は教えてくれた。

新中 義一氏 プロフィール


教育図書21 代表取締役 
全国最大の小学校受験模擬テスト「小学校受験統一模試」を、300以上の幼児教室と共同開催している。そのほか、幼稚園・小学校受験情報誌の出版、さらに幼児・小学生学習教材専門の出版、小学校受験の総合ポータルサイト「みつめる21」も運営。

《田中真穂》

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