共通テスト本番まで、ラストスパート。新課程になってから初の共通テストは科目の追加や再編、出題傾向や時間などさまざまな変化があり、受験生もその対策に追われる中、不安を抱えているのではないだろう。そこで東進ハイスクール運営元であるナガセの広報部長・市村秀二氏にインタビューを行った。
東進ハイスクールで行われている模擬試験から集められたデータをもとに、新課程で行われる共通テストの特徴や求められる力について聞いた前回に引き続き、今回は、受験生が本番までの間にどのような対策をするべきなのか、「各教科の具体的アドバイス」を聞いた。
取組み方次第でまだまだ得点力は上げられる
--共通テストで高得点を取るために、直前1か月の学習にどのように取り組むべきか、教科ごとにアドバイスをお願いします。
現役生はここからまだ伸びます。東進からの難関大合格者データから編み出した、共通テストで実力を発揮するための「必勝の3つのシナリオ」をご紹介します
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1.現状を把握する
得意な科目・分野と苦手な科目・分野を正確に把握するために、今まで受験した模試の成績表、特に直近のものを徹底的に分析しましょう。今の段階から、新しい問題集などに取り組むことはお勧めしません。
2.苦手科目・分野を選別する
苦手科目・分野の中には、今まで学習時間を十分にかけられなかったために得点力が低い「課題分野」と、今まで苦手を克服しようとあれこれチャレンジしてきたけれどなかなか得点できない「不得意分野」とがあります。前者の「課題分野」は、直前期に大きく伸びる可能性を秘めています。「1」の分析の結果、苦手分野を特定したら、それが時間をかけても伸びにくい「不得意分野」なのか、「課題分野」なのかを選別しましょう。
3.伸びそうな分野を一気に仕上げる
科目・分野ごとに分析した後は「不得意分野」よりも「課題分野」の演習に集中的に取り組みましょう。演習後はすぐに復習し、確実に自分のものにしていく姿勢が直前期には必要です。
この3つをぜひ心掛けてください。
科目ごとのアドバイスは以下の通りです。
英語リーディング
読解問題がすべての割合を占める。これまでの共通テスト型の模試を活用し、時間を短く設定して、その時間内で読み切る力をつけたい。問われるのは「必要な情報を探し出す」こと。読解のスピードをあげるために、単語や文法の力も不可欠。最後までメンテナンスを並行して行おう。
英語リスニング
もっとも大切なのは「集中して聴く」こと。事前に選択肢に目を通すことは重要だが、読みあげが始まったら、聞き取りに集中しよう。できなかった問題を次の問題に引きずらない練習もしておこう。
数学I・A
高校数学の土台ともいうべき数学I・A では、数理的に捉えることや問題を解決する過程を重視している。新しい傾向の出題については、これまでに受けた模試などを復習して、対応力が身に付いているかを確認しよう。
数学II・B・C
計算力以上に問題を解決する過程に焦点を当てた出題が多くなっている。その場で「原理を理解し考える力」を鍛えておきたい。ただし時間内に解き切るため、計算力を疎かにしてはいけない。
現代文
今までに解いた模試や講座などで出題された漢字・語句の意味は必ず確認しておこう。文章読解力に加えて、「複数の素材を比較し整理して判断する力」が求められる。詩・短歌・俳句など韻文の出題を視野に入れた問題演習も行おう。
古文・漢文
古文は基本的な知識に抜け落ちがないか、もう一度チェックしておこう。最重要古語と文法知識は古文の読解に必要なすべての土台となる。漢文も重要漢字と句法、知識問題がわかれば、内容理解に大きな力を発揮する。
物理
「考察の過程にあたる物理の本質的理解」また「現象をモデル化する過程」を問われる出題が予想される。ひとつひとつの概念が的確に理解できているか確認を行おう。
化学
融合問題の出題が予想されるため、理論化学、無機化学、有機化学の各知識とその活用について確認しておこう。リード文や図から必要な数値を読み取って解答を求めるものがあるので、時間配分にも注意が必要だ。
生物
単なる用語の暗記ではなく、教科書の知識の本質的な理解力と応用力が求められる。図表や写真にも目を通しておこう。実験問題、計算問題対策も忘れずに。
地学
図表やグラフを読み解く力を問うものが多く出題される。特に地質図や天気図などは要注意。模試などを復習しておこう。
世界史(歴史総合、世界史探究)
問題演習の答え合わせをする際には、用語集などで関連する同時代、同地域の出来事にも目を通しておこう。地図や図版とともに設問文もよく読み込むことが重要だ。初見の資料を使用した思考力を問う問題が出題されても、ベースとなる世界史の知識を使って答えが導けるので慌てないこと。
日本史(歴史総合、日本史探究)
複雑な問題設定から、各設問で何が問われているか、どのような資料・前提をもとに考えるかを的確に見抜く必要がある。知識を問う設問と思考力を測る設問、どちらにも共通する基礎知識はしっかり確認しておこう。限られた時間内で必要な情報を読み取って次々と答えを導く、情報処理能力が求められる。
地理(地理総合、地理探究)
知識の暗記だけではなく、知識を前提として、いかに思考・判断して考察していくかが重要。いずれの大問も、図・写真・表などが多く使用されることが予想される。図の読み取りと関連する事柄の組み合わせを2つ選ぶタイプの問題など、初めて見る出題形式に対応していく力も必要。
政治・経済(公共、政治・経済)
設問が複雑に構成されていて、文章量や資料が多く、解答に時間がかかると予想される。また、資料に関する問題や読み取り問題など、倫理分野、政治分野、経済分野から幅広く出題されるため、教科書をしっかりと読み、太字を中心に思想、制度、理論の大枠をとらえる。
倫理(公共、倫理)
青年期、現代社会分野、源流思想、日本思想、西洋近現代思想がまんべんなく出題されるため、バランスの良い復習が求められる。また絵画・写真など視覚資料を用いた出題などでも、歴史的背景など倫理の知識をしっかり身に付ければ解答が導ける。高得点を目指して、「公共」の範囲である「政治・経済」の内容もしっかり確認を。
情報I
「情報社会の問題解決」「コミュニケーションと情報デザイン」「コンピュータとプログラミング」「情報通信ネットワークとデータの活用」以上4つの分野からまんべんなく出題される。なかでも、プログラミングの配点が高くなると予想される。教科書をしっかり押さえることと、新設科目のため過去問がない分、これまでの模試を見返して抜け漏れがないか確認をすること。
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直前期、点数を伸ばすための「秘訣」
--毎年、東進ハイスクールからは難関大学への現役合格者が多数輩出されています。御社のデータから、共通テスト1か月前から点数を伸ばした事例があれば教えてください。
2023年度の受験生(東進生)の成績分析をご紹介します。国公立大学一般選抜合格者のうち、12月時点で5教科7科目900点満点で60%以下の生徒を対象として、共通テスト本番までの伸びを調査しました。
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すると、12月から本番までの1か月間、1日あたり1.8点(約54点)の得点アップが確認されました。1日1点を実現した東進生も72.2%おり、毎日着実に力を付けているのだと自信をもって直前期の学習に取り組んでもらいたいです。
まさに「現役生は最後まで伸びる」を証明する個別の生徒の事例をご紹介します。
九州大学歯学部志望の高3女子ですが、共通テスト模試の得点は900点満点中、8月が523点、11月が577点、12月の最後の模試でも606点で、合格可能性はE判定でした。しかし、ここで諦めることなくあくまで第一志望にこだわる強い気持ちで、残りの1か月を課題科目・分野(特に選択科目)の克服と、英語などの得意科目についてはさらなる強化に取り組みました。その結果共通テスト本番で英語はなんと満点、5教科7科目で760点(得点率84.4%)を獲得。12月の最終模試から約1か月で144点伸ばし、一気にA判定に。その後の二次試験も突破し、見事第一志望合格を果たしました。この生徒は、直前期に限らず普段から真面目にコツコツと頑張ってきましたが、その頑張りがなかなか得点に反映されずにきました。しかし最後の1か月でその努力の蓄積が一気に爆発したと分析しています。このように普段の努力が最後の最後に一気に得点に現れるという現象は特に現役生の場合は珍しくはありません。最後まであきらめないことが何より大切です。
--学習法や、受験した模試など、直前期にぐんと力をつけた受験生の共通点を教えてください。
この時期には、すでに自分の弱点や、もっと伸ばせる分野などをある程度把握できていると思います。つまり、前述した「課題科目・分野」あり、それは今まで時間をかけてやってきたが伸びていない科目・分野ではなく、まだ十分にやっていないために得点できない伸びしろ十分の科目・分野です。そこに集中して取り組むことで得点力を最大化することができます。
また、本番を想定した時間配分で問題に取り組み、「時間をかければできたけれど、時間が足りなくてできなかった」という問題について、前述のように、すべての問題文を隅から隅まで読むのではなく、設問を読み、解答に必要な情報を探しだすという訓練を今からでも繰り返すことによって、得点力は確実に高まります。
東進の講師陣の多くが口を揃えて言うことですが、とにかく不安に陥らないことが重要です。最後の模試の結果で落ち込み、この直前期になって「志望校を下げたほうが良いかな」と不安になる受験生は毎年大勢いますが、諦めずに強気で前に進んでください。
本番で実力を最大限発揮するためには、普段からできるだけ本番を真似た環境で、過去問や実践問題演習に取り組むことも有効です。たとえば、開始時間を当日通りに設定する、机の上には当日に出せるもの以外は置かないなど、本番環境を作り出しましょう。
また、本番では、満点を狙う気持ちをもちながらも、戦略的に解いていくことが大切です。満点は難しくても、時間内で自己最高得点を取れることを目指しましょう。そのためには、いざ本番を迎えたら試験中も試験後も、一喜一憂しないこと。次の問題、次の試験に向けて淡々とやるべきことをやっていきましょう。
本番では前だけを向く。これが成功した受験生に共通する秘訣です。
--ありがとうございました。
本番までの残り少ない日々をいかに過ごすかで、「受験生の得点力はまだまだ伸ばすことができる」という市村氏。いかなる時も前を向き、ひたすらに続けた努力は、必ずや実を結んでくれることだろう。
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