音楽教室の著作物使用料、新規定で合意

 音楽教育を守る会と日本音楽著作権協会(JASRAC)は2025年2月28日、新たな音楽教室規定に関して合意に至ったことを発表した。

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音楽教室規定に関する音楽教育を守る会とJASRAC の合意について
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 音楽教育を守る会と日本音楽著作権協会(JASRAC)は2025年2月28日、新たな音楽教室規定に関して合意に至ったことを発表した。レッスンの著作物使用料は、大人の受講者1人当たり年額750円(税別)、中学生以下の子供のレッスンについては、受講者1人当たり年額100円(税別)とする。

 音楽教室規定は、音楽文化の発展とそれを支える音楽教育の継続性、著作権の適切な保護の両立を目指し、音楽教室における著作物利用のあり方を明確にするものである。

 新しい音楽教室規定は、音楽教室事業者が支払う使用料を具体的に定めている。大人のレッスンの著作物使用料は、受講者1人当たり年額750円(税別)であり、中学生以下の子供のレッスンについては、受講者1人当たり年額100円(税別)とする。また、普段は管理楽曲を使用しないが、年に数回程度利用する場合の「極少利用」に対しては、レッスン単位および曲単位での使用料が設定されている。

 この合意に至るまでには、最高裁が示した著作権の範囲に関する解釈に多くの時間を要したため、判決から2年をかけて協議が行われた。今回の規定の主旨は、音楽の未来を守ることであり、特に子供のレッスンにおいて楽曲の選定に制約が課されないよう配慮されている。なお、個人で経営する教室については、これまでどおり適用対象外とされる。

 新しい規定の実施日は2025年4月であり、音楽教室事業者は管理開始(2018年4月)に遡って支払いを行うことになる。音楽教育を守る会とJASRACは、新しい音楽教室規定に沿った運用を進めていく。

 音楽教育を守る会の会長・大池真人氏は、「音楽は、人の心を豊かにし、人と人との繋がりを促し、社会にとって無くてはならない要素です。音楽文化の発展には、利用の促進、権利者の保護、そして演奏人口の拡大の好循環が必要であり、今回の事案はその在り方が問われたものでした。8年間という時間の中で、著作権に関する新しい法解釈が生まれたこと、そして未来を担う子供たちへの配慮がなされた新しい料率規定が定まったことは大きな成果です。我々音楽教室事業者は今回の決定を真摯に受け止め、より一層演奏人口拡大に向けた取り組みを進めてまいります」とコメントしている。

 JASRACの理事である伊澤一雅氏も、「音楽教育を守る会との間で使用料規定について合意が整いました。8年間という時間のなかで、著作権の保護と利用のバランスについて改めて検討を行い、特に教室に通う子供たちにとって、多様な音楽に接する機会を確保することが持続的な音楽文化の発展のために重要であるとの認識のもと、今回、良い形で新たな使用料規定について合意ができました。JASRACは、新たな使用料規定での管理の開始にあたり、音楽教室事業者の皆様に事前に丁寧なご案内を行ったうえで、安心して音楽をご利用いただけるよう、取り組んでまいります」と述べている。

 音楽教育を守る会は、音楽教育事業を営む7つの企業・団体が、JASRACによる音楽教室における著作権料徴収の動きに対応するために2017年2月に結成された。その後、関係各社、各団体への参加を呼びかけ、会員法人数は300以上に増えている。

 一方、JASRACは作詞家、作曲家、音楽出版社等の権利者から音楽の著作権の管理委託を受け、音楽を利用する人々に利用を許諾し、その対価として支払われた著作物使用料を著作権者に分配している。1939年に国内初の著作権管理団体として設立され、85年にわたり、著作権管理のプロフェッショナルとして音楽文化の発展に向けた努力を続けている。

 今回の合意により、音楽教室における著作物利用のあり方が明確になり、音楽教育の継続性と音楽文化の発展が期待される。音楽教室事業者は、新しい規定に基づき、音楽教育の充実を図っていくことが求められる。

《風巻塔子》

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