英国で175年以上の歴史を誇る屈指の名門校「ノース ロンドン カレジエイト スクール(NLCS)」。2025年に神戸・六甲アイランドにジュニアスクール(Grades1-5)を開校し、2028年には六甲山にシニアスクール(Grade6-12)と寄宿舎の完成を予定している。日本での開校の背景には、実業家として世界を舞台に挑み続けてきたNLCS Kobe代表・池田浩八氏の強い危機感と教育への熱い思いがあった。今回、学校設立に至った池田氏の原体験から、NLCS Kobeならではの教育哲学について詳しく話を聞いた。
【池田浩八氏 プロフィール】
1977年大阪府生まれ。慶應義塾大学卒業後、外資系コンサルティングファーム、インターネットベンチャー企業の役員を経て、八光エルアール株式会社に入社。英国ラグジュアリーカーの正規ディーラー事業を基盤に、イノベーターが集うサードプレイス「ESC Garage&Club」や「六甲山サイレンスリゾート」など、上質なライフスタイルを提案する事業へと領域を拡大。さらに、世界で活躍する次世代人材の育成を目指し、英国の名門インターナショナルスクール「North London Collegiate School Kobe」を開校。「COLOR OUR LIFE」のビジョンのもと、自動車、教育、ライフスタイルなどの領域を横断し、人と人とのつながりから新たな価値と豊かな社会を創造することを目指している。
教育への関心、きっかけは日本と世界の「ネットワーク力」の差
--実業家として成功を収めてこられた中で、なぜ教育分野に挑戦しようと思われたのでしょうか。ご自身の原体験や教育への思いをお聞かせください。

私自身は日本の教育を受けて育ちました。中学受験をして中高一貫校に進み、慶應義塾大学を卒業した後はアクセンチュアに入社しました。海外拠点の同僚と一緒に、フィリピンやマレーシアの工場でサプライチェーンを構築するなど、数多くのグローバルなプロジェクトに取り組みました。
その後はネットベンチャーを経て、家業である輸入車ディーラーの事業に携わり、欧米、中国、インドなど、世界各地の経営者と交流する機会が増えました。その中で強く感じたのは、日本と世界では国際的なネットワークを作る力に決定的な差があるということです。
私の場合、輸入車を扱う仕事なので、世界中のディーラーが集まる会議に出席するのですが、そうした場で日本人はどうしても日本人だけの輪にとどまってしまいがちな一方、多様なバックグラウンドをもつ人たちと自然に関係性を築いている人が大勢います。コミュニティや人材を紹介しあうなど、互いに助けあいながら、商機があれば電話1本で話をまとめる。そこには壁がなく、信じられない気安さとスピード感で次々と新しいビジネスが生まれていくのです。
ではなぜそんなことができるのか。それは彼らの多くは大学、あるいはそれ以前から、自分とは異なる文化や価値観をもつ人とも自然に対話でき、一緒に課題に向きあって解決を目指す経験を積み重ねてきているからです。そして自分自身がその恩恵を感じているからこそ、わが子にも同じ環境を与えられる教育を選んでいる。
これはもう、社会に出てからでは遅いと感じました。だから日本にも、もっと早くから世界のコミュニティの一員として生き、国境を超えて仲間をつくれる力、多様な仲間と新しい価値を生み出せる力を育てる学校が必要だと考えるようになりました。
卒業生4割が世界トップ20大へ―高い学業成績を支える秘訣
--「ノース ロンドン カレジエイト スクール(NLCS)」は、世界的には学業成績がトップクラスの名門校として知られていますね。
はい。NLCSは175年以上の歴史をもち、高いアカデミックな実績を誇る学校で、卒業生の4割がオックスフォード、ケンブリッジを含む世界トップ20の大学へ進学しています。国際バカロレア(IB)の試験結果では、NLCS UKは45点満点中、平均43.22点(2026年)という驚異的なスコアを記録し、英国1位、世界トップクラスの成績を収めています。

ただし、だからといって入試に向けた対策ばかりをやっているわけではありません。
冒頭でお話ししたとおり、私は教育について課題を感じるようになったものの、考えれば考えるほど「優秀な子」を育てることが目的ではないと強く感じるようになりました。では何が大切なのか。その答えがNLCSにありました。
NLCSの教育は「Academic Excellence(卓越した学問)」「Pastoral Care(パストラルケア)」「Rich Co-curricular Life(豊かな課外活動)」という三本の柱で、学業以外にスポーツ、音楽、演劇、アート、科学、ディベート、社会貢献なども積極的に行っています。
NLCSの教員は皆、自身の専門分野に情熱をもって教えているため、子供たちも自然と「もっと知りたい」「学ぶことは楽しい」と内発的な動機が高められます。教員自らが学ぶ姿を見せながら、子供たちひとりひとりの挑戦や成長をそばで支えるからこそ、自分の興味・関心のあることに出会え、探究を深めていける。子供たちが幸福感をもって学ぶことを好きになり、自ら学びに向かう力を育てる。その結果が、高い学術的成果につながっているのだと思います。
--NLCSは英国本校に加えて、すでにドバイ、シンガポール、韓国にも展開されています。グローバルなネットワークを生かした取り組みはありますか。
どの校舎も決してNLCSという看板を借りているだけではありません。教員は採用が決まると必ずロンドンで研修を受け、NLCSの教育理念をしっかりと学びます。生徒たちは他校との交流の機会が頻繁にあります。神戸からは今年2月にシンガポール校で行われた模擬国連に参加し、5月には韓国チェジュ校の生徒が神戸を訪れて合同で合唱祭を行いました。10月にはロンドンでの音楽祭に参加します。こうした体験を通じて、子供たちは世界のあちこちに「顔の見える仲間」との関係を築いていくのです。

ハロウやラグビーとの違いは?NLCSを誘致した理由
--すでに日本に開校しているハロウやラグビーといった伝統校と比較した際、NLCSならではの強みはどこにあるとお考えですか。
ハロウやラグビーは、イギリスで「ザ・ナイン(The Nine)」と呼ばれる名門ボーディングスクールのひとつです。どれも素晴らしい学校で、それぞれ異なる歴史や強みをもっており、優劣は付けられません。しかし日本でも、御三家のような伝統校がある一方で新興の進学校が台頭しているように、伝統の有無が教育の質や子供との相性を決めるわけではないと思っています。
NLCSの最大の強みは、高い学術性と子供のウェルビーイングの両立にあります。多くの学校がイギリス式のIGCSE(国際中等教育修了資格)やA-Level(大学入学資格試験)を採用する中、NLCS KobeはIB(国際バカロレア)を導入し、知識の習得にとどまらず、探究心や多角的論理的思考力、行動力、そして折れない心や学びに向かう力といった非認知能力を育てる教育を実践しています。さらにIBは各国の歴史や文化を学びに生かすため、単に欧米の教材をそのまま使うのではなく、日本の文化・地域・自然といった身近な題材に置き換えて探究できる点も大きな強みです。
--池田さんはなぜ、数ある世界の名門校の中からNLCSを日本に誘致しようと決めたのですか。
大きく2つあります。ひとつは、NLCSの「成功する子供は幸せな子供である(Successful children are happy children.)」という明確な教育理念です。子供、教員・保護者すべてのウェルビーイングが満たされてこそ、学びに向かう力、学びを楽しめる力が生まれる。私はここに深く共感しました。
もうひとつは、その思想を実現する仕組みです。難関大学への高い進学率を誇りながらも、決して学業成績だけで子供を見ない。NLCSでは教員と生徒の比率を8対1以下に保ち、ひとりひとりの小さな変化や興味の芽を見つけて背中を押す体制を徹底しています。学ぶ面白さを伝えられる熱意ある教員とさまざまな課外活動を通じて、夢中になれるものに巡り会える機会を提供する。夢中になれるものを見つけた子供は、誰に言われるでもなく自発的に学び始めます。NLCSには子供たちが幸福感を抱き、安心して挑戦できる環境があるのです。
特に私が印象的だったのは教員に求める資質です。NLCSでは教え方が上手か否かだけでなく、その教員が自身の担当科目にどれだけの情熱をもっているか、それを子供に伝えられるかを重視しています。この理念に共感する優秀な教員が世界中にたくさんいる証として、NLCS Kobeでは10人の募集に対してわずか1週間で世界中から約150人の応募がありました。
大学進学で学ぶことをやめてしまう人ではなく、生涯にわたって好奇心をもち、学びを通じて自分を成長させ続ける。その教育を本気で実践している学校だからこそ、日本に誘致しようと決意しました。

なぜ神戸なのか?英国本部スタッフが絶賛した稀有な環境
--NLCSは「神戸」という立地を選んだ点もユニークですね。神戸にはどのような魅力があるのでしょうか。
神戸には多様な文化を受け入れ、多くの外国人が暮らしてきた歴史があります。そして何より、これほど近くに海と山、そして利便性の高い都市が共存する環境は世界的に見ても極めて稀で、NLCSの本部スタッフがイギリスから訪れた際には、「こんな場所は世界中探してもない」と絶賛したほどです。私たちの教育の核となるウェルビーイングを考えたとき、神戸はまさにベストな立地でした。
現在ジュニアスクールの子供たちが通う六甲アイランドキャンパスは、国際的で利便性の高い都市型キャンパスです。近隣にはカナディアンアカデミーや神戸ドイツ学院インターナショナルもあり、外国人居住者も多く、多国籍・多文化な環境です。また、2028年開設の六甲山キャンパスは国立公園の中にあり、こちらは自然の中でじっくり自分と向きあうと共に、仲間との関係を深めることのできる素晴らしい環境で、通学生と寄宿生が共に学ぶシニアスクールとなる予定です。
さらに神戸は京都・奈良・大阪にも近く、日本の歴史や文化に触れる機会が多いうえ、京都大学、大阪大学や研究機関も充実しており、最先端の学術にもアクセスしやすい環境です。IB教育の柱である、地域に根差し、充実した課外活動を実現するという点でも、神戸は日本の中でも非常に恵まれた場所であると思います。

語学力だけが国際性ではない…日本だからこそできる教育
--NLCS Kobeのカリキュラムでは、なぜ独自に日本語の習得や日本文化を重んじた内容を取り入れているのでしょうか。
語学力だけが国際性ではありません。NLCSではよく“Celebrating Differences”(多様性を祝う)という言葉が使われます。つまり真の国際性とは、自分自身の文化や価値観を理解したうえで、自分とは異なるバックグラウンドをもつ人と対話できることです。ですからNLCS Kobeでは日本語の習得、日本の歴史や文化、地域社会や自然との関わりを教育の重要な柱として位置づけています。
わが子に国際性を育みたいと考える際に、ボーディングスクールなど海外へ拠点を移すという選択もあります。しかしそれは、ときに日本語力や日本人としてのアイデンティティの形成に悩むケースが少なくありません。
だからこそNLCS Kobeでは、日本語という母国語、日本の歴史や文化をしっかり学びます。茶道や禅、生け花、伝統工芸などを通じて学ぶのは、知識として知るためだけでなく、日本独自の美意識や感性、自然に対する畏怖や謙虚さ、相手への尊重といった日本人としてのルーツに触れるためです。
生け花の「花の命をいただく」とはどういうことかとか、京都の創業280年余りの帯屋と着物を通じて歴史やサイエンスを学ぶとか、海外から集まった教員は非常に前向きに日本らしさを取り入れた授業をつくってくれています。ですから、教員も外に出て、見て聞いて触って、実際に体験する。11月にも京都で研修をします。

日本にはゲームやアニメはもちろん、酒や食文化など、さらには学術分野でも世界のトップを走っているもの、あるいは世界トップなのに眠っているままのものもたくさんあります。未来を生きる子供たちにはそれに気付き、足りないものを補いながら、もっと広く世界に展開していってほしいのです。
先日は、再生医療の世界的なパイオニアである大阪大学名誉教授・澤芳樹先生がワークショップをしてくださいました。子供たちはiPS細胞から作られた心筋細胞がドクドクと拍動するようすを実際に顕微鏡で観察して大興奮。万博でも話題になった自律して動くシートや未来の心臓の映像には感嘆の声があがり、終始鋭い質問が飛び交いました。最後には自ら考えた未来の細胞アイデアを発表するなど、探究心あふれる濃密な時間でした。
ほかにも私が仕事を通じて得たご縁で、裏千家16代家元を伯父にもつ茶道家やダボス会議など国際的な舞台で発信を続ける禅僧、世界のハイブランドとのコラボを実現した盆栽や西陣織の職人など、教員にも子供たちにもどんどん本物を見せていきたいと思っています。このような「Japan Heart(日本の心)」に直接触れる学びは、イギリスやスイス、アメリカの学校では絶対にできません。

NLCS Kobeが約束する学びの環境とは
--NLCS Kobeを、日本で、そして世界でどのような学校にしたいとお考えですか。
日本における国際教育の新しいモデルとなる学校にしたいですね。
NLCS Kobeの合言葉は“Start here, go anywhere.”(ここから始まり、どこへでも行ける)です。我々もこの言葉どおり、世界各地のNLCSネットワークとつながり、他校でうまくいっていることは積極的に取り入れたり、新しい挑戦をする際には多角的な視点からアドバイスをもらったりしながら、イギリス本校や他校のように、あるいはそれ以上に評価される教育を目指したいです。
海外で学ぶ、働く、あるいは日本で世界と関わるなど、将来どの道を選んでも、世界各地に信頼でき、力になってくれる仲間がいることは、子供たちにとって生涯の財産になるでしょう。
しかしそのためには、何よりも子供たちにとって学校が先生と友達に会いたい場所、一緒に学び、新しいことを発見できる場所、だから明日が待ちきれないくらい行きたい場所でなくてはいけません。子供たちがそんな幸福を日々実感できる学校にしたい。それが学校としていちばん大切にしたい目標であり、我々の使命だと思っています。
--NLCS Kobeから、どんな人材が羽ばたいていってほしいですか。思い描く「卒業生像」を教えてください。
与えられた課題を完璧にこなすだけではなく、自分が情熱をもって取り組めるテーマを見つけ、深く学び、困難や失敗があっても怯まずに挑戦し続けられる人。NLCS Kobeから育ってほしいのは、そんなこれからの時代を切り拓く「ゲームチェンジャー」です。
--最後に、わが子により良い教育をと願う保護者に向けてメッセージをお願いします。
英国の名門校が日本で次々に開校していますが、保護者の皆さまには学校名だけでなく、英国本校がどの程度日本校の教育に関わるのかにもぜひ注目していただきたいと思います。NLCSでは、英国本校で定められたスタンダードに沿った授業が行われているかのチェックやフィードバックが定期的に行われ、教育品質の維持・向上に力を入れています。それに加え、日本独自のカリキュラムについても非常に高く評価しています。これはNLCSインターナショナルと私の会社・八光エルアールの長期的な協働があってこそ実現できることです。
NLCS Kobeがお約束できるのは、「お子さまが安心して、ハッピーに学べる環境がある」ということ。学校も、そして神戸という街も素晴らしい環境ですので、お子様だけでなくご家族のウェルビーングのために、神戸への移住も含めて選択肢としてお考えいただけたら嬉しいです。ぜひ一度、神戸まで足を運び、NLCSの子供たちのようすをご覧ください。私たちの仲間になってくださることを心から願っています。

--ありがとうございました。
「海外で学ぶことだけが国際性ではない」という池田氏の言葉にハッとさせられた。日本で学び、自分自身の興味関心を深めながら、自らのルーツを理解する。しかし同時に、小学生の頃から世界の仲間とつながるネットワークも築いていく。自分自身を深く理解したうえで、多様な他者を尊重しながら対話、協働ができ、新しい価値をつくれる人を育てる。池田氏が構想するNLCS Kobeでの学びのあり方は、少子化が進む日本に欠かせない、真に世界と繋がる人材を育てるための1つ有力な解となるのではないだろうか。
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