寛ぎの空間で家庭学習をサポート…SAPIXの滞在型学習教室

 サピックス・代ゼミグループの株式会社ピグマコミュニケーションが運営する、小学1~4年生を対象とした新形態の学習教室「PIGMA kids(ピグマキッズ)」が話題となっている。

教育・受験 学習
SAPIX YOZEMI GROUP 共同代表/ピグマコミュニケーション 代表取締役社長 高宮敏郎 氏
  • SAPIX YOZEMI GROUP 共同代表/ピグマコミュニケーション 代表取締役社長 高宮敏郎 氏
  • ピグマコミュニケーション ピグマキッズ事務局 事務局長 安田秀明 氏
  • リビングをイメージしたラウンジ。照明も教室とは変えて温かみを出している
  • 家にいるときのような居心地の良さを追求し、インテリアにもこだわっている。個々に収納スペースも用意されている
  • 7~8人が一緒に勉強できる広さの教室が2つ用意されている
  • 教室内にはパソコンや辞典が用意された調べ物コーナーもある
  • 入室時には、お子さんがインターホンを押し、シーダーが入口まで出向いてドアを開ける
  • Felicaカードを利用した入退室管理システムで、入退室時には保護者に連絡メールが届く
 SAPIX(サピックス)・代ゼミグループの株式会社ピグマコミュニケーションが運営する、小学1~4年生を対象とした新形態の学習教室「PIGMA kids(ピグマキッズ)」が話題となっている。ピグマキッズは、自宅感覚で放課後を過ごしながら、中学受験に実績・定評のあるサピックスの通信教育「ピグマキッズくらぶ」の教材をお母さん代わりのシーダー(指導員)とともに学習するという、“滞在型”の学習教室だ。

 今年2月に「ピグマキッズ荻窪」、5月に「ピグマキッズ白金高輪」をオープンしたピグマキッズのカリキュラムやサービスについて、代表取締役社長の高宮敏郎氏と事務局長の安田秀明氏に話を聞いた。

--設立の経緯について教えてください。

高宮氏:今年で10年目になる通信教育の「ピグマキッズくらぶ」は、近くにサピックスがなくて通えないお子様にも学習教材を提供するということからスタートし、自宅でお母様と一緒に学習するスタイルをとっています。しかし昨今、キャリアも続けたいと考えるお母様が多くいらっしゃることから、代わりにお子様の学習をみてあげられないかと考え、このピグマキッズを立ち上げました。

 ピグマキッズは一般的な塾とは一線を引いています。私たちは指導員を「シーダー」(種をまく人の意)と呼び、シーダーが先生となってお子様に教えるのではなく、一緒に考え、学習する姿勢を身につけられるようにお子様を手助けします。

 中学受験は小学3年生の後半から本格化するのが最近の傾向ですが、その前の低学年の時期をどう過ごすかで、受験勉強にスムーズに入っていけるかどうかが決まってきます。ピグマ教材は、たとえば割り算の場合、ただドリルでやり方を勉強するのではなく、仕組みを理解することに力点を置いた内容になっており、こうした本質的な理解を促すことが、その後の受験勉強に役立ってきます。

 その一方で、サピックスも今年で23年目を迎え、卒業生の中にもお子様をお持ちの方がたくさんいらっしゃるようになりました。そういった方々にキャリアを続けていただけるように、今のお母様のライフスタイルに合わせたサービスを考えた結果、学習だけでなく、放課後の時間をお預かりするという学童保育の機能も備えた「滞在型学習教室」にたどりつきました。

--どのような学習カリキュラムになっていますか?

安田氏:お預かり時間の中で、まず学校の宿題を済ませ、それから1科目につき60分(学習45分・休憩15分)のタイムスケジュールでピグマ教材の国語と算数、オプションの「児童英検」に取り組んでいただきます。ピグマ教材への取り組み方は、お子様によって変わってきますので、お預かりする時間や日数と保護者様の要望に合わせて、シーダーがお子様ごとに1か月の学習予定を前月に組み立てます。

 「教材は全部やらせたいが、教室では時間が足りない」という場合は、つまずきやすい個所を重点的に学習したり、意欲のあるお子様には宿題を出すこともあります。また、「学校の宿題はきっちりやって欲しいが、教材は最低限のところを抑えてくれればよい」という場合は、教材については毎月提出する添削問題が解ける程度にするなど、保護者様とのお打ち合わせのもとでカリキュラムを決めていきます。他教材の持ち込みについても、無理のない範囲で対応しています。

 また、学習の進捗状況や習熟度などをシーダーが毎日記録し、保護者様に毎週レポート提出しています。そして月末には保護様からのフィードバックをいただき、翌月の学習に反映するといった、PDCAサイクルの手法を取り入れています。

 長期休暇中については、現在、今夏の企画を考えているところですが、たとえば、サピックス主催のコンクールに、教室として団体で応募するのも面白いかなと考えています。また、「ピグマのサイエンス教材」を取り入れたり、サピックスの講師にエコに関する講義をしてもらった後、各々が実際に作ったり調べ物をするといった企画も検討中です。

--子どもたちのピグマキッズでの過ごし方について教えてください。

安田氏:お預かりのコースは、週1日コースから週5日コースまであり、それぞれで13~19時のうち6・5・4・3時間のいずれかをお選びいただけ、延長は22時まで対応しています。

 入室したら、まずはシーダーとのコミュニケーションタイムです。シーダーとの会話でリラックスしたら、宿題に取り掛かり、15時前後のおやつまでに終わらせます。その後、国語・算数・児童英検の学習タイムを終えたら、後片付けや帰宅準備をして、お迎えまでシーダーとその日を振り返りながらリラックスタイムを過ごします。

 おやつは、お子様一人ひとりのアレルギー等を配慮しながら、天然素材や無添加食品を中心に、衛生面からも個包装のお菓子を用意しています。夕食の手配をご希望の場合は、ケータリングを利用しています。

--教室の規模やシーダーの人数はどのくらいですか?

高宮氏:シーダーは荻窪・白金高輪ともに3人ずつで、シーダー1人につきお子様は最大でも7~8人と考えています。現状は4~5人です。どちらも敷地面積として30坪前後しかありませんが、今後、1教室当たりの面積を広げてシーダーも増やし、お子様をたくさんお預かりする、ということは考えていません。ピグマキッズのキャッチフレーズに「もう一つの我が家」とありますが、30坪くらいがちょうど家庭と同じくらいで、この大きさにはこだわりたいと思っています。3人の大人が目の届く範囲となると、お預かりできるお子様は1つの教室で20人前後になります。

--どのような安全対策をとられていますか?

安田氏:送迎は行っていませんが、どちらの教室も駅から近く、交通量の多い道路を横切らずに通っていただくことができます。施設内のセキュリティには警備会社のシステムを利用しています。入口のドアは内カギになっており、お子様がインターホンを押し、シーダーが入口まで出向いてドアを開けるという仕組みになっています。これも、家に帰るときと同じ感覚を大切にしています。

 お子様の入退室時には、SAPIX・代ゼミグループで共通利用しているFeliCaカードでの入退室管理システムで、保護者様に連絡メールが届くようになっています。

--どのような利用形態が多いですか?

高宮氏:我々が当初考えていたよりも、たとえば週に3日など、曜日を指定してのご利用が多くなっています。習い事のない曜日にピグマキッズに通うといったように、ご家庭ですでにポートフォリオを組まれているケースが多いという印象です。ピグマキッズでお預かりしている日に中抜けして他の習い事に行くといったことも可能ですが、実際にはそういったご利用はほとんどないようです。

安田氏:SAPIX・代ゼミグループの運営施設ということで、受験を念頭においた授業をみっちり行っていると捉えた方が多かったようです。小学1年生から中学受験を決めているわけではないけれども、選択肢は広げておきたいので、多少はサピックスの風に吹かれると言いますか、受験勉強の下地ができあがっていればいい、というような位置付けでのご利用が多いようです。

--今後の展開について教えてください。

高宮氏:現在いろいろと検討しているところですが、今後の開校については、嬉しいことに「このエリアに来て欲しい」といったお話もいろいろいただいています。しかしながら、実際に始めてみて、想定していたよりも多様なニーズがあることがわかってきましたので、今のところは、新規開校よりも、荻窪と白金高輪の2校をさらに充実させることにフォーカスし、またサピックス小学部との位置関係についても検証していきたいと思っています。

--ありがとうございました。
《柏木由美子》

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