受験指導のプロが警鐘「高学歴な親はなぜ子育てに失敗するのか」

 小林公夫氏の「高学歴な親はなぜ子育てに失敗するのか」が中公新書ラクレより刊行されている。同書では、高学歴な親たちが陥った典型的な失敗例を、リアルなケーススタディとして描いている。

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「高学歴な親はなぜ子育てに失敗するのか」中公新書ラクレ
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 小林公夫氏の「高学歴な親はなぜ子育てに失敗するのか」が中公新書ラクレより刊行されている。

 同書は、ベストセラー「勉強しろと言わずに子供を勉強させる法」の著者であり、30年に及ぶ受験指導で多くの医師・弁護士の親子を知る“受験指導のプロ”小林氏による子育てアドバイス書。執筆にあたっては、能開センター教育本部の野原正貴氏が取材協力を行っているという。

 同書では、高学歴な親たちが陥った典型的な失敗例を、リアルなケーススタディとして描く。たとえば、代々医者の家系に生まれたある子どもは、決められた講義には出席せずにゲームセンターやパチンコ店を徘徊する日々だが、親は「自由に育ててきましたから」と胸を張る。また「有能である私の息子が、なぜ成績が振るわんのか」と塾に乗り込んで指導法を叱責するなどの例が紹介されている。

 筆者によれば、こうした高学歴な親は2つのタイプに大別されるという。1つは「家系エリート」。3代、4代以上続いた名家で、大企業のオーナー、学者、医師、法曹関係、芸術方面、地元の名士に多いという。もう1つの「頭脳エリート」は有名企業のサラリーマンや国家公務員、勤務医、法曹関係、学者などに多く見られるとし、それぞれのタイプについての子育て上の「落とし穴」を明快に整理している。

 「家系エリート」の場合、「家柄、血筋は万能であると過信している」「子どもに対して過干渉であるのに、それに気づいていない」「勉強以外のわが子の才能に目を向けない」「恵まれた環境に甘えてついつい脆弱な子育てをしてしまう」「自分たちの住む世界と一般社会の常識とのギャップに、親も子も気がつかない」などの特徴があるという。

 また「頭脳エリート」の場合は「私の子どもが馬鹿であるはずがないと信じ込んでいる」「知育優先で、しつけを軽視してしまう」「他者から発信される情報に流されて、自分自身で分析できない」「公立は駄目だから私立という短絡的な意識が強い」「子どもの目的意識の欠如に気づいていない」などの問題が見られるとしている。

 さらに同書では、高学歴な親ならではの成功例や子育てアドバイスも豊富に掲載するほか、筆者の行ってきた受験指導が単に勉強だけを教えるものではなく、「あなた方をまっとうな人間にするために向き合っているんだよ」というメッセージを伝えている。

◆「高学歴な親はなぜ子育てに失敗するのか」小林公夫著(中公新書ラクレ)
判型:新書判
ページ数:232ページ
定価:798円
《前田 有香》

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