日本の大学でも秋入学制度の導入が検討されるなど、世界で活躍するグローバル人材の育成が急がれるなか、海外留学の必要性も改めて注目されている。大学・大学院レベルでの留学とはどのようなものなのか。フィンランドのヘルシンキ芸術大学大学院に留学した経験をもつYuka Takahashi氏に聞いた。◆条件が合えば場所はどこでも良かった--留学のきっかけは何でしょうか。 大学で工具のデザインを学んでいたのですが、もう少しデザインの幅を広げたいと思いました。 イギリスに行こうと思い大学のゼミの先生に相談したところ、スウェーデンやフィンランド、オランダの大学が面白いと教えてもらいました。英語の授業もやっているとのことでした。--ヘルシンキ芸術大学に決めた理由を教えてください。 毎年1人選ばれる関西フィンランド協会の交換留学制度に合格したので、ヘルシンキ芸術大学に決めました。 この留学制度では、文化や音楽・デザイン・アートなどの専門分野を持っている学生の中から年に1人選ばれますが、ヘルシンキ芸術大学はフィンランド国内でも人気のある大学でしたので、とても嬉しかったです。 ◆フィンランドは学生が優遇されている国--現地での生活はいかがでしたか。 学生の受け入れ態勢が整っていて、とても暮らしやすかったです。大学のサポートも素晴らしかったので、フィンランド語を話せない私でもまったく困ることがありませんでした。 フィンランドは安全な国だと思います。最低限の自己管理は必要ですが、お財布を掏られたり、タクシーで多額のお金を要求されるような経験がまったくありません。 24時間オープンのコンビニやスーパーがなく、日曜日にはすべてのお店が閉まってしまいますので、最初は戸惑いました。でもそれはそれで、映画を観たり家の掃除をしたり、美術館に行ったりと、休日をゆったりと過ごすことができるようになりました。--日本からの留学生は他にいましたか。 毎年、短期の交換留学を含めて約10人。その中で正規の学生は2人位で、大学全体から見たらほんのわずかです。--学生としての生活はいかがでしたか。 学生会に入ると、80ユーロ/月(約8,000円)で生活できます。学食は2.5ユーロ(250~300円)と半額で食べられます。バスや電車も半額なので、学生の時はフィンランド中を旅行しました。フィンランドの政策が素晴らしいので、学生のサポートが充実していて、経済的に親もサポートされています。--日本との違いは感じましたか。 フィンランドでは1年の中で入学時期が4月と9月で選べ、受験が2回あります。夏休みまで働いて1年間の生活費を貯めてから受験をする人、高校を卒業して軍隊に入って働いてから入学する人、1年間働いてから受験している人など、多くの学生が経済的に自立していました。 また、フィンランドでは、希望すれば小学生の頃から留年することができます。勉強を理解しないまま進級するよりも留年を選ぶ方が子どもの将来の為になると保護者も考えているようです。【Yuka Takahashi氏】 神戸芸術工科大学卒業後、6年間の工具製造業デザイナーとしての勤務を経てフィンランドのヘルシンキ芸術大学大学院に留学。修士課程取得後もフィンランドでデザイン制作を続け、夫のPekka Harni氏とともにデザイン事務所Harni-Takahashi Ltd.を設立。2012年3月に東京のギャラリーで個展を開催した。