【中学受験2013】安全志向の高まりか? 御三家で志願者減少…SAPIX9月模試

 9月に実施された、2013年度入試に向けた第1回「合格力判定サピックスオープン」の志望状況をもとに、SAPIX執行役員 広報・企画部長の広野雅明氏に、2013年中学入試について聞いた。

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サピックス教育情報センター本部長の広野雅明氏
  • サピックス教育情報センター本部長の広野雅明氏
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 夏休みの集中講座でひととおりの総復習を終え、合格判定模試が始まるのが9月。その結果をもとに、志望校を絞り込み、勉強の仕上げをしていくのが10月から11月。9月の志望状況を受け、志望校を再考する受験生も多い。

 9月に実施された、2013年度入試に向けた第1回「合格力判定サピックスオープン」の志望状況をもとに、サピックス教育情報センター本部長の広野雅明氏に、2013年中学受験について聞いた。

◆2013年入試の傾向

 ここ最近の「面倒見がいい学校」に加え、理系や語学に力を入れている学校の人気が高い傾向がある。不景気もあり、6年間、しっかり勉強を教えてくれて、塾や予備校へ行かなくても、大学進学ができる学校を望む保護者が増えているようだ。

 実は、そうした「面倒見がいい学校」の数は多い。しかし、その良さを保護者に伝えられている学校はそれほど多くないと、広野氏は説明する。学校の姿勢をきちんと保護者に伝えている学校、つまり説明会など広報が上手な学校が、順調に受験生を集めているのだという。

 心配要因としては、いじめ、経営不振、教師の不祥事など、私学のスキャンダルが相次いだことで、他塾の模試ではその影響がはっきりと志願者数に表れているところもあるという。これが、入試の難易度にどのように影響してくるのか、見守っていく必要がありそうだ。

 また、中学受験においても「安全志向」の高まりを感じていると広野氏はいう。男女御三家をみると、開成を除き、志望者が減少傾向にあるという。しかし、難関校は成績上位者が志願することには変わりなく、合格層に大きな変化がないため、倍率の減少が単純に難易度(偏差値)に反映することはなさそうだ。

 以下、9月の模試の志願状況を、男子校・女子校・共学校別、受験日別に、昨年の同じ時期の模試(2011年度 第1回「合格力判定サピックスオープン」)の志願者数からの増減を中心に紹介する。なお、参考に2012年の入試結果・実質倍率も併記する。

 例年、この時点の模試から、実際の志願社数には変動があること、また、この数値はSAPIX小学部が実施した模試の結果であり、他塾では志願者の増減において異なる結果がでる可能性があり得ることを理解のうえ、参考にしていただきたい。

 9月の「合格力判定サピックスオープン」は9月23日に実施され、5,219人が受験。うち、93.9%がSAPIX塾生だった。

◆男子2月1日

 9月模試で、前年より志願者数を大きく伸ばしたのは、駒場東邦(前年同月比135%、2012年入試倍率2.5倍)と開成(同121%、2.9倍)だ。海城の2回(2012年入試倍率3.1倍)、早稲田の1回(同3.7倍)、そして攻玉社の1回(同2.3倍)も増やした。

 麻布(同2.3倍)は、今回の模試では前年をやや上回ったが減少の兆しが見えており、慶應普通部(同3.2倍)、早大高等学院中(同3.4倍)、武蔵(同2.8倍)が前年より減少したという。

◆男子2月2日

 増加したのが巣鴨の2回(2012年入試倍率3.2倍)、聖光学院の1回(同2.7倍)、攻玉社の2回(同2.2倍)、世田谷学園の2回(同2.3倍)など。

 巣鴨が伸びた背景には、この2年間の東大合格実績など、出口の実績のよさ、文武両道で厳しく鍛えながらしっかり学校で力をつけてくれるという印象があること、また、新校舎を建設中でこれから環境が良くなることへの期待感もあるという。

 聖光学院は、昨年は、傾向や難易度で似ている栄光学園が人気だったことの反動で、志願者数を減らしたが、今年は盛り返した。きちんと勉強させてくれるというイメージや、新校舎が建設中であることも、人気の理由ではないかと広野氏は説明した。

 減っているのは、城北の2回(同1.9倍)。同じ通学圏の巣鴨の志願者が増えたことの反動か。慶應湘南藤沢(同1.9倍)も減少した。

◆男子2月3日

 海城の2回(2012年入試倍率3.1倍)、浅野(同2.7倍)が前年より志願者数を増やしている。

 海城は、完全中高一貫校になり、6年間きちんと面倒を見てもらえることへの期待感が人気の背景ではないかという。一方で減少しているのは、学習院の2回(同2.9倍)。

◆男子人気校の傾向

 最近の傾向として、自由な校風の学校よりも、面倒見がよく、きちんと勉強をさせてくれる印象の学校の人気が高まってきていると、広野氏は分析する。

◆女子2月1日

 フェリス(前年同月比132.7%、2012年入試倍率2.0倍)、早稲田実業(同140.8%、3.5倍)、頌栄女子(前年同月比2.2倍)の志願者数が増えている。

 減少しているのが、女子学院(同2.6倍)、桜蔭(同2.2倍)、雙葉(同3.5倍)。

 フェリスが大きく増えたのは、これまで神奈川近辺在住で都内の桜蔭などを志願していた受験生が、震災の影響で遠方の学校ではなく地元の学校を選択するようになったことも影響していそうだという。

◆女子2月2日

 吉祥女子の2回(2012年入試倍率2.2倍)、青山学院(同6.1倍)、白百合学園(同2.5倍)、湘南白百合学園(同1.9倍)が増加。豊島岡女子(同2.7倍)はほぼ横ばい。

 減少しているのが、鴎友学園女子の2回(同2.6倍)、鎌倉女子大学の2回(同1.7倍)、光塩女子学院の1回(同1.9倍)。

 鴎友は、2回目の定員枠が少なく、難化したために敬遠されたと考えられる。光塩は、昨年の大学進学実績がよかったので、一時的に志願者が増えすぎたのが、元に戻った理由といえそうだ。

◆女子人気校の傾向

 安全志向の高まりから、無理して上の学校を目指すよりは、学力に合った学校でしっかりと勉強をさせようという考えが、特に女子では顕著に現れていると、広野氏は説明する。

 女子に目立った傾向は、理系に強いイメージがある学校に人気が集まっている点だ。特に、SAPIXの上位層の児童には、医歯薬学系志望者が非常に多いという。SAPIXを今春卒業した小6生を対象としたアンケートで、「将来、何学部に進みたいか」を聞いた結果、「まだ決めていない」という子が半分。残り半分の、決めている子のうち、男子は3分の1、女子は2分の1が医歯薬学系を志望している結果が出たという。

◆共学 2月1日

 共学でも、判定を男女別枠にしている学校はすでに男子・女子のほうで紹介したため、ここでは、男女同判定の学校についてまとめる。

 共学の1回目で大きく志願者数を増やしたのが、中央大学横浜山手(2010年より共学化/2012年入試倍率 男2.4・女2.8倍)、広尾学園(2007年より共学化/同午前 男4.2・女3.5倍)、東京都市大学等々力(2010年より共学化/同 午前 男2.9・女3.1倍)。

 いずれも共学化にともない新規スタートした進学校で、保護者の期待感から人気が高くなっているという。

◆共学 2月2日

 渋谷教育学園幕張の2回(2012年入試倍率 男6.7・女6.2倍)、明大付属明治の1回(同 男2.9・女5.8倍)、中央大学横浜山手(同 男5.3・女4.1倍)、広尾学園の医進・サイエンスコース(同 男3.1・女2.9倍)の志願者数が増えている。

◆共学人気校の傾向

 一般的に中学生くらいでは、男子は数学が得意、女子は英語が得意という傾向が強く、共学校では男女両方いることで、勉強面で互いにいい刺激になり、しっかり勉強できるという利点を感じている保護者が多いのではないかと、広野氏は分析する。

◆1月入試校

 1月入試校で大きく志願者数が増えたのは、東邦大学付属東邦(千葉/2012年入試倍率 男1.9・女2.1倍)。昨年、東大進学実績が2桁台に乗ったことが高く評価されているのではないだろうか。

 栄東(埼玉/同 男1.2〜4.8・女1.3〜4.3倍)も、出口でよい実績を出していることから人気が高い。渋谷教育学園幕張(千葉/同 男2.1・女2.8倍)は微増した。

 2008年から公立中高一貫校となった千葉県立千葉(千葉/同 男3.8・女3.8倍)も人気を集めている。都内の中高一貫校が成果を出しているので、同校に対する期待値も高まっている結果か。

 早稲田佐賀(同 首都圏:男2.3・女3.4倍)、早稲田摂陵(同 1回首都圏:男1.0・女1.0倍)も、志願者数を増やしている。早稲田ブランド志向は根強く、首都圏の早稲田系列校よりは合格しやすい寮のある学校を、お試し受験ではなく、本命とする受験生が一定数いるという。

※志願者数の前年同月比は、9月実施の第1回「合格力判定サピックスオープン」の、2012年実施分と2011年実施分の比較。
※倍率については、四谷大塚「入試情報センター」の2012年入試結果・実質倍率を参考にした。
《石井栄子》

石井栄子

子育てから、健康、食、教育、留学、政治まで幅広いジャンルで執筆・編集活動を行うフリーライター兼編集者。趣味は登山とヒップホップダンス、英語の勉強。「いつか英語がペラペラに!」を夢に、オンライン英会話で細々と勉強を続けている。最近編集を手掛けた本:『10歳からの図解でわかるSDGs「17の目標」と「自分にできること」』(平本督太郎著 メイツ出版)、『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(増田史著 ナツメ社)『13歳からの著作権 正しく使う・作る・発信するための 「権利」とのつきあい方がわかる本』(久保田裕監修 メイツ出版)ほか多数

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