学生主役のモバイルアプリコンテスト、岡山県立大学で最終選考会実施

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130点の応募から勝ち抜いてきた「企画部門」の入賞者一同
  • 130点の応募から勝ち抜いてきた「企画部門」の入賞者一同
  • 最終選考に臨んだ作品名と応募者
  • 最終選考は一次審査をくぐり抜けた学生たちが、自分の作品・アイデアをプレゼンテーションして競う
  • 『会話お助けアプリ プロフィールメーカー』にて、アイデア部門最優秀賞を受賞した県立広島大学・藤田弥希さん
  • 作品部門で優秀賞に輝いた、『世界をちょっと変える勇者の物語』の作者、広島県立大学・塩出拓也さん(右)と『広島観光コンシェルジュ~「おしい広島」から「おいしい広島」へ』の作者、県立広島大学・田邉幸祐さん(左)
 岡山県立大学にて17日、「学生ケータイあわ~ど」の最終選考会および表彰式が開催された。主催は電子情報通信学会中国支部学生会。すなわち、中国地方5県の大学等に所属する学生が企画・運営する、学生による学生が主役となるモバイルアプリコンテストである。このイベントは2007年から毎年開催されており、筆者も2008年から審査委員として参加させていただいている。応募資格は中国地方の小中高・高専・専門学校・大学に所属する学生、生徒。またアプリ作品を競う「作品部門」の他に、ユニークなモバイルアプリの企画を競う「アイデア部門」も設けられ、学生ならではの視点でモバイルを楽しく有効に活用するアイデアに溢れている。学生ならではの気づきに驚かされることも多く、恒例の審査会は筆者も楽しみにしている。

 今年のコンテストにおけるメインテーマは「世界をちょっと変えるモバイルアプリ」。これを実現させるための作品として、アイデア部門に130作品、作品部門に7作品の応募があり、一次審査でアイデア部門7作品、作品部門5作品に絞り込まれた。その12作品の応募者がこの日の最終選考会のプレゼンテーションに臨んだ。

 最終選考会は、まずアイデア部門の作品プレゼンテーションからスタート。アイデア部門の最終選考に残った7作品について、その企画のコンセプトが各応募者からプレゼンテーションされた。プレゼンに臨んだのは、大学院生1名、大学生2名、高専生徒4名という構成。プレゼンテーションのユニークさでは、松江工業高等専門学校3年生・川本真輝さんの『振り込め詐欺ワクチン』が際立ってユニークで会場を笑いの渦に誘っていた。

 審査委員による厳正な評価の結果、アイデア部門では県立広島大学・藤田弥希(みき)さんの『会話お助けアプリ プロフィールメーカー』が最優秀賞を射止めた。対面会話の内容を分析し会話相手のプロフィールを自動生成して相手の嗜好などを自動記録できるというアイデア。音声入力が実用的なものになってきたことを受けて、さらにスマートフォンを傍らに置いておくことで会話内容を自動分析し、対話相手のプロフィールや趣味嗜好までを自動保存してくれるというもの。同時に会話の中の重要キーワードに関連する情報を自動表示し、会話を交わしている最中に活用できるようになるという。こうしたアプリが実現できれば、会話の最中に話題が途切れて困るようなこともないだろうとしていた。
 藤田弥希さんは実体験として、友人たちと会話をしていて、スマホで関連情報を検索しながらさらに面白い検索結果が見つかると、その画面を友人と一緒に見ながらさらに盛り上がることが多いということで、こうしたアプリの着想に至ったという。さらに「たとえば取引先相手の情報を記録して活用するといった、ビジネスでの活用できるはず」と自信を見せた。一方、審査委員からは「会話の最中にスマホの画面を見ることが多くなるので、相手に失礼ではないか」といった講評もあったが、GoogleがGoogle Glassを発表しているが、こうしたシースルー型のヘッドマウントディスプレイが普及すれば、このような「リアルコミュニケーションを情報武装で補完するアプリ」というのは大いに実現可能性がありそうなアイデアといえそう。

 一方、実際に開発したアプリを競う作品部門で最終選考のプレゼンテーションに臨んだのは5名。審査結果では、残念ながら最優秀賞は該当なし。優秀賞では広島市立大学・塩出拓也さんの作品『世界をちょっと変える勇者の物語』と、県立広島大学・田邉幸祐さんの作品『広島観光コンシェルジュ~「おしい広島」から「おいしい広島」へ』の2作品が選ばれた。

 『世界をちょっと変える勇者の物語』は迷路上のダンジョンをクリアするゲームなのだが、本来ダンジョンゲームであれば画面上に目で見える空間が広がるが、このアプリでは画面はキャラクター以外ブラックアウトしており、上下左右のカーソル操作によって、進行方向で生じる「音」で壁や通路を判断し、操作方向と音でクリアしていくゲームとして作られた。「ブラインドタッチでも操作できるゲーム」というこれまでに無かったゲームといえそう。イヤホンなどを使って音さえ聞ければ遊べるので、たとえば電車の中で周囲に迷惑をかけることなく遊ぶことができるという着想から生まれた。

 開発した広島市立大学の塩出拓也さんは、「じつはこのアプリははじめてスマートフォン用アプリのプログラミング事例として取り組んだもので、ある程度基礎的なプログラミング技術を学んでいれば、こうした応用はだれでもできるはず。身近なスマートフォンで自分が開発したプログラムが動くのはとても面白いもので、ぜひ多くの人にスマートフォンアプリプログラミングを体験してほしい」と語る。

 一方、『広島観光コンシェルジュ~「おしい広島」から「おいしい広島」へ』はテキスト感情認識の技術を使って、ユーザーの感情に応じた適切な広島観光スポットを紹介し、そこまでの経路などをなどを表示するものとして開発した。観光ガイドは多数あるが、観光客の感情をアプリ内のエージェントとのテキスト対話によって、適切にユーザーの感情を分析し、より興味を持てそうなスポットに誘導するということを目指した。今後観光サービスの活性化につなげるものになるとプレゼンテーションされた。

 いずれも、多数の応募の中からすばらしい作品に絞られ、プレゼンテーションまで進出できた優秀なものが多かった。筆者は5年に渡ってこのアワードの審査員を務めている。少なくとも数年前は大多数がフィーチャーフォン向けアプリに関する作品であったが、今年はついに全ての作品がスマートフォンで動作するアプリの応募となった。昨今のスマートフォンシフトを象徴している。『広島観光コンシェルジュ~「おしい広島」から「おいしい広島」へ』を開発した県立広島大学の田邉幸祐さんは、「日頃からテキストベースの感情分析を研究テーマにしていたが、このアプリはそうした研究成果を元に、実質的に一夜漬けで作ったようなもの。日頃の研究成果を手軽にスマートフォンアプリに展開できた」とコメントしてくれた。「スマートフォンアプリ開発はプログラミングの基礎を学んでいれば誰でも取り組めるし、とても楽しい。ぜひ多くの方がスマホアプリの開発に取り組まれるとモバイルサービスの活性化にもつながる」とも。

 スマートフォンはいわば「持ち歩けるコンピュータ」であり、アイデアを練る学生にとっても「コンピュータの延長」という認識が一層強くなったと感じる。同時に、「モバイル」という視点に欠けるアイデアも多くなってきたという印象も受けた。スマートフォンは、手のひらで利用するコンピュータといっていいが、その一方で持ち歩いて利用し、移動しながら通信できることに価値のある機器である。アプリの企画においてこういう特性を活かすという視点が徐々に薄らいでいるように感じた。

 またアプリを「サービス」として提供した場合、どういうビジネスモデルなら実現できるのかといった視点も欠けているという意見もある。しかし、この点に関しては、ビジネス観点からの運用の制約のために若者ならではの新鮮でユニークな着想が制約されてしまうのは本末転倒であって、あくまで若者の「欲しい」とか「面白い」と感じるアイデアが集約してくることにこのアワードの面白さがあるはず。若者の新鮮な発想や視点をこれからも大切にするために、今後も継続して実施されることを期待したいイベントであった。

【木暮祐一のモバイルウォッチ】第19回 若者のアイデアの宝庫「学生ケータイあわ~ど」の表彰式が開催

《編集部@RBB TODAY》

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