JEES教育シンポに若手教師ら約300名が参加…菊池省三氏が特別講演

 NPO全国初等教育研究会(JEES)は6月8日、ホテル椿山荘東京において第2回JEES教育シンポジウムを開催した。昨年の第1回に引き続きテーマは「授業力をつけよう、若手教師たち!」。

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第1部パネルディスカッション
  • 第1部パネルディスカッション
  • 進行役の東北大学大学院情報科学研究科教授 堀田龍也氏(左)と千葉大学教育学部教授 藤川大祐氏(右)
  • 筑波大学附属小学校教諭 盛山隆雄氏(左)と岡山県笠岡市教育委員会参事 高橋伸明氏(右)
  • 第2部は菊池省三氏の特別講演
  • 菊池省三氏
  • 堀田龍也氏を囲む若手教師ら
 特定非営利活動法人 全国初等教育研究会(JEES)は6月8日、ホテル椿山荘東京において第2回JEES教育シンポジウムを開催した。昨年の第1回に引き続き「授業力をつけよう、若手教師たち!」と題して、現場の教師や教育の研究者、教育委員会参事を招いたパネルディスカッションと、テレビや新聞でも紹介された著名な教師による特別講演の2部構成で行われた。運動会などの行事が重なる時期でありながら、定員を超える300名近くの若手教師らが全国から参加し、熱心に聞き入っていた。

 JEESは、年々厳しくなる学校現場の中で、志のある若い教師たちを応援することをミッションとして、昨年1月に発足したNPO法人である。各種教材の調査・分析や、イベントの開催、小中学校教師向けのフリーマガジン「wutan(ウータン)」の発行などの情報発信、賛助会員向けの直接サポートといった活動を行っている。現在、個人会員数は110名、法人会員は111社だ。

 今回のようなシンポジウムをはじめとしたイベントは、発足以来1年半で、JEES主催は計6回開催、集まった教師数は460名、さらに物的・人的協力を行った協賛事業は計14回開催し、766名の参加があったという。

◆立場の異なる教育のプロからのアドバイス…第1部パネルディスカッション

 JEES理事長 柳瀬修氏の開会の挨拶のあと、第1部「授業力をつける ~現場・教育委員会・研究現場から~」と題したパネルディスカッションが始まった。

 登壇したパネラーは、筑波大学附属小学校教諭 盛山隆雄氏、岡山県笠岡市教育委員会参事 高橋伸明氏、千葉大学教育学部教授 藤川大祐氏、進行役として東北大学大学院情報科学研究科教授 堀田龍也氏の4名。藤川氏と堀田氏はJEESの理事でもある。

 若手教師の増加とベテラン教師の減少は、首都圏ではすでに顕著になっているが、地方でも同様の状況となることは時間の問題だ。必然、普通教室にも多くなった多様な子どもたちへの対応を、若手教師が担わざるを得ない。教育困難な状況を迎えていながら、それを受けて立つ教師側に必ずしも十分なキャリアがあるわけではない。

 そうした喫緊の教育課題を踏まえ、堀田氏の進行・とりまとめのもと、「若い教師は何に困っているように見えるか」「若い教師のために何をしているか」「若い教師へのエール」の3点について検討がなされた。盛山氏は授業をする教師としての立場、高橋氏は教育委員会で若い教師を育成する立場、藤川氏は学校外の組織から若い教師を応援する立場から、それぞれ具体的事例を交えながら、経験が浅く、困っている若手を、どうやって助けていけばよいかが語られた。

 最後の「若い教師へのエール」では、盛山氏は「自分は何を大切にしたいか、信念をもとう。子どもの素直な言葉、笑顔が出る授業をしよう」、高橋氏は「若い時に一流に触れてほしい。一流に触れると、自分に何が足りないかわかる。またICTを活用し、工夫をすることで授業力を磨いてほしい」、藤川氏は「得意な教科を生かした学級作りをしてほしい」、そして堀田氏は「へこたれず、いい意味で遊びをもって続けてほしいが、ひとりで悩まないで」と、4氏から貴重なメッセージが送られた。

◆きちんと伝えていくことが大切…第2部特別講演

 第2部は北九州市立小学校教諭 菊池省三氏の特別講演だ。NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」や、朝日新聞「花まる先生」、読売新聞「ほめ言葉のシャワー」など、テレビや新聞で紹介されることも多く、言葉によるコミュニケーションを重視した指導で、崩壊したクラスを次々と立て直してきたことで知られている。

 菊池氏は、自身が受け持った子どもたちの写真やビデオ映像を交え、時々参加者に問いかけながら、きちんと伝えていくこと、コミュニケーションの大切さを切々と語った。

 また、学級運営、特に厳しい学級を受け持つ場合は、1年間をどう戦略的に動かしていくかを考え、年度の最初の日から、しっかりとした取組みが必要だと強調。子どもたちが落ち着き、自信をもち、安心できる教室=自分らしさを発揮できる環境を作るには、担任の教師が大事だという。さらに、学級の土台を作って、必要な技術を教えながらも、お互いの違いが生きるような学びを作っていかなければならないと提言した。

 「コミュニケーションとは、やはり『他者への思いやり』に尽きる」と菊池氏は言い切る。参加していた若い教師たちを見て、語りかけながらの講演のようすからも、その信念を十分に感じ取ることができた。

 シンポジウム終了後、堀田氏に、会場に来られなかった若手教師に向けてのアドバイスをお願いした。「若い先生は皆、さまざまな悩みを抱え、困っている。それなのに、今の若い人は周りの空気を読んでしまい、先輩や同僚教師に聞けずにひとりで悩んでいる人が多い。ぜひ、こうした場に実際に足を運び、同じように悩んでいる人、困っている人たちがいることを知って、悩みや思いを共有してもらいたい」とのことだ。

 JEESでは、教育シンポジウムを毎年同じこの時期に開催予定で、さらに授業力を育てる技術的な実践セミナーも順次開催、できるだけ多くの教師に参加を呼びかけたいとしている。若手教師たちが授業力を磨いていくためのJEESの支援活動に、今後も注目していきたい。
《鈴木良子》

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