不登校経験者の高校進学率が大幅に増加…文科省調査

 文部科学省は7月9日、「不登校に関する実態調査」として行っている2006年度不登校生徒に関する追跡調査報告書を取りまとめ、公表した。2001年に実施した調査と比較して不登校経験者の高校進学率が大幅に増加していることがわかった。

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 文部科学省は7月9日、「不登校に関する実態調査」として2006年度不登校生徒に関する追跡調査報告書を取りまとめ、公表した。2001年に実施した調査と比較して不登校経験者の高校進学率が大幅に増加していることがわかった。

 文科省は不登校生徒の状況を把握し、今後の支援策の参考とするため、不登校であった生徒の5年後の状況などについて追跡調査を実施、2011年度より調査研究会を設けて調査・分析を行っている。また、1993年度の不登校生徒への追跡調査を2001年に実施しており、本調査と比較できる調査内容となっている。

 調査は過去に不登校であった生徒で2006年度に中学3年生に在籍し、学校基本調査において不登校として計上された約4万1,000人を対象として、在籍していた中学校に対する基礎的な調査(A調査)、対象者本人に対し在籍当時の中学校卒業後と現在の状況について無記名のアンケート調査(B調査)、そしてアンケート調査内容をさらに掘り下げたインタービューによる調査(C調査)の3つの調査を実施。A調査2万8,388人、B調査1,604人、C調査379人から回答を得た。

 調査結果の主な特徴は、不登校のきっかけが「無気力でなんとなく学校へ行かなかったため」(43.6%)、「身体の調子が悪いと感じたり、ぼんやりとした不安があったため」(42.9%)、「いやがらせやいじめをする生徒の存在や友人との人間関係のため」(40.6%)、「朝起きられないなど、生活リズムが乱れていたため」(33.5%)など複雑化・多様化しており、生活習慣の乱れの割合も高い。

 また、不登校が続いてしまう理由から「無気力型」「遊び・非行型」「人間関係型」「複合型」「その他型」の5つに類型化することができるとされ、一旦欠席状態が長期化するとその回復が困難である傾向がわかったという。さらに、学校を休み始めた時期と長期化した時期との間にタイムラグがあることから、一定の「潜在期間」を経て不登校になると推測され、その時期にひとりひとりに合った支援をすることが望まれる。

 中学校3年生時に受けていた主な支援として、「学校にいる相談員(スクールカウンセラーなど)」(34.0%)、「学校の先生 」(29.5%)、「病院・診療所」(24.1%)となっており、学校にいる相談員を利用する割合が高い。学校の先生だけでなくさまざまな支援の手が広がりつつあるようだ。

 高校進学状況は高校進学率85.1%(前回調査比19.8ポイント増)、高校中退率14.0%(前回調査比23.9ポイント減)。前回調査と比べ、高校への進学率が大幅に増加し、中退率も大きく下がっており、不登校経験があっても勉強が続けられる環境が整備されてきていることがわかる。

 20歳現在の就学・就業状況は「就業のみ」(34.5%)、「就学のみ」(27.8%)、「就学・就業」(19.6%)、「非就学・非就業」(18.1%)となっており、就学している人が47.4%と約半数にのぼる。就学先は「大学・短大・高専」(22.8%)、「高等学校」(9.0%)、「専門学校・各種学校など」(14.9%)で、「大学・短大・高専」への就学割合が前回調査から6.3ポイント上昇した。
《田邊良恵》

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