この授業では、生徒それぞれがすでに習得した単語、熟語、構文などの範囲が英文の質を左右する。特に物語全体を自分の言葉で英文にまとめるという課題では、限られた単語・熟語を活用し、どの程度物語を表現できたか、という実践力が試されているようだった。◆中2理科では仮説の検討(検索)と実験結果の集計にiPadを活用 中学2年の理科の授業は、電池の実験が行われていた。最初にガルバーニの実験(カエルの標本から電気が発生する実験)から、液体に材質の異なった2つの金属をつけると金属の両端に起電力が働き電流が流れるという現象を説明し、それを実験で試すというものだ。 実験には、6種類の金属と4種類の水溶液が用意され、班ごとにどの組み合わせで電気が発生するかを考える。どれが一番電気を発生するかも予想する「仮説」と、どれが一番電圧が高かったか実験結果を表にまとめるという「仮説の検証」が授業内容となった。実験結果は、班ごとに教員が設定したGoogleフォームに入力する形で提出された。 実験のポイントとして、薬品や金属の扱いのほか、電流の方向を予想するためのヒントが予め説明された。生徒たちはiPadを通じて、インターネットサイトや電子教科書などを駆使し、6種類の金属と4種類の水溶液のどの組み合わせがもっとも電気を発生するか、仮説を組み立てていた。 その後、実験を通じて仮説が立証されたかどうかを先生が設定したGoogleフォームに入力し提出。単元の学習内容だけでなく、科学研究には仮説を立てる段階と、実験を通じた仮説の検証、そして報告が一連の流れとして必要なことを生徒は学んだ。◆高校生は最先端の学術論文を読む授業 高校生の研究授業は、チームごとにテーマを決め、大学や研究機関の実際の論文(英語)を読んで、その内容をプレゼン資料とともに発表するというもの。ここでの発表は、同校の文化祭(けやき祭)での発表にもつながるという。 この日の発表は、病気に対する植物の免疫機能(植物チーム)、色素増感太陽電池(化学チーム)、インフルエンザの拡散に関するSIRモデル(現象数理チーム)、がん幹細胞のニッチ条件(がんチーム)の4つだった。 それぞれの論文は、Google Scholarなどを利用して生徒たちが調べて探してくる。すべて英語で書かれている論文だが、生徒たちはその内容をかなりのレベルで理解し、プレゼン資料を入念に作成する。発表の場では、さまざまな質問が飛び交い、発表者がそれらに答えるためには、論文筆者同等レベルで研究を把握する必要がある。 今回の高校生の授業では、高度な英語力をベースにした調べ学習が公開された。研究論文という高度な内容を噛み砕いて日本語で説明する能力は翻訳の域を超えており、研究作業に必要不可欠な先行研究の把握に生徒の目を向ける。単元で習得すべき知識の伝授ではなく、大学入学後やその後に必要なスキルを伝える授業だった。◆ICT活用授業とは、機器を利用することではない 今回の公開授業は、全国私学教育研修大会東京大会のICT活用部会として実施されたが、振り返ればICT活用事例以上に授業内容が際立っていた。調べ学習、プレゼン、課題の提出など、iPadやノートPCを活用する生徒たちの姿は常にあったが、各授業が1人1台環境を前提にデザインされていたため、当たり前のように端末が授業に溶け込んでいた。 端末を活用する生徒のリテラシーの高さも影響している。生徒たちは、必要に応じてインターネット上の検索機能、電子教科書、辞書などのアプリを使い分け、学んだ内容をプレゼン資料に落とし込むまでは、紙のノートにメモを残していた。 今回の公開授業で改めて明らかになったのは、学校におけるICT導入の必要性ではなく、ICT導入が可能にする授業レベルの向上だということだろう。ICT機器ありきの教育ICTに一石を投じる意味でも参加者に刺激的な内容だったのではないだろうか。