--「作文」「読書」「思考力」「野外体験」など、花まる学習会の授業で大事にされていることを教えてください。高濱氏:「作文」や「読書」を取り入れているのは、一般的に国語力はすべての基礎だからです。長文になると要点を読めない、著者が言いたいことに焦点を当てられないなど、いろいろな意味で国語力は子どもの一番の課題です。 また、数理的思考力も必要です。医学部を志望する子で、立体問題が苦手な生徒がいました。図形の補助線が思い浮かばないのです。補助線が浮かんだあとの説明はわかるのに、自分で補助線を思いつけない。これをどう伸ばせばいいのかというと、経験しかないのです。そこで、経験を重ねるためにも、小学生の頃から「思考力」に重点を置くようにしています。 さらに、川遊びや海や山などでの野外体験は、生命力を育むことにつながります。私は日本三大急流のひとつ、熊本県の球磨川で川遊びをして育ちました。川は流れが速くなっている部分があったり、急に冷たくなっていたり、まさに「生きて」います。溺れそうになったこともあるし、遊ぶときは真剣そのもの。だからこそ、生命力が磨かれるのです。子どもたちに川遊びを体験してほしかったことも、花まる学習会をスタートさせた理由のひとつです。--花まる学習会を卒業されたお子さんや、保護者の方の反応はいかがですか。高濱氏:「算数に自信がつきました」といった生徒からの声ももちろんありますし、勉強以外でいうと、人と仲良くする力、すなわち他者とうまくやる力や、自己肯定感が持てるようになったという反応が多いです。 また、卒業生で引きこもりになったという子は聞いたことがないですね。3泊4日の野外体験もあるし、花まる学習会へ通ううちに子どもたちは家族や親戚のようになります。サマースクール(野外体験)には発達障害やさまざまな障害を持った子どもも参加しますが、そのうちのひとりのお母さんから「うちの子は植木屋として就職して頑張っています」という話を聞いたこともあります。 我々が目標としているのは、簡単にいえば、子どもが生命力、つまり人間世界を生き抜く力をつけることです。社会へ出たあと、仕事をバリバリやって、家族を幸せにする。世の中に今ある仕事の3分の2がなくなってしまったとしても、じゃあこれを仕事にしよう、とパッと思い浮かぶような力をつけてほしいと考えています。