5月20日に開幕した第6回教育ITソリューションEXPO(通称EDIX)では、教科書会社がデジタル教科書を展示。今年2015年は、4年ごとの改定で小学校の教科書が改訂されたことを受け、デジタル教科書も機能を一新した。◆バリアフリーのEPUB3版デジタル教科書 東京書籍では、2015年に改定された小学校向けの教科書について、従来のFlash版にくわえ、新たにEPUB3版の提供を開始した。 同社では「教科書の誌面構成において、デザインのバリアフリー化を努めていた」(東京書籍 取締役 ICT 事業本部長 兼 出版事業本部長 内田宏壽氏)一環として、ACCESSが開発した教材向け電子書籍を採用。EPUB3版の特徴としては、タブレットの画面を指でなぞる(ピンチイン/アウト)だけで、文字の縮小/拡大が簡単に行えるほか、デジタル教科書の画面に手書きのメモを残すことも可能だ。弱視をはじめとする特別支援を必要とする生徒に向けた仕様となっている。 会場では、大画面の電子黒板を使って、デジタル教科書に掲載されたパノラマ動画をデモしている。迫力のある海辺の映像に、来場者も足を止めて見入っていた。◆いよいよCoNETS規格のデジタル教科書がスタート 昨年に引き続き、教科書会社など全13社が結集したデジタル教科書のコンソーシアム「CoNETS」が出展。参画各社がデジタル教科書を展示し、電子黒板やタブレットを用いたデジタル教科書の模擬授業を実施した。 CoNETSではデジタル教科書のスタンダードを目指し、EPUB3対応の共通プラットフォームを利用して教科書を出版している。今年3月より大日本図書ほか全8社が、指導者向けのデジタル教科書とビューワの提供を始めた。 今後は教科書の改訂時期に合わせ、2016年に中学校用、2017年には高等学校用のデジタル教科書の提供を予定している。◆デジタル教科書や教材を使用するメリット デジタル教科書以外でも、教材のデジタルコンテンツを採用する利点は多々ある。そのひとつが、学習でのつまずきを早期発見するデジタル教材だ。文部科学省の委託を受けて学研教育みらいでは、多層指導教材「MIM(Multiplayer Instruction Model)」を開発している。同社によると、「小学校の普通学級に通う生徒のうち、特殊音節などの読みでつまずく生徒が意外と多い」という。MIMでLD(学習障害)の早期発見をし、個々の読みの流暢性を高めて読解力を深めていくのがねらいだ。 そのほか、NTTソフトウェアが開発した「こえみる」は、授業中の発話を音声認識でリアルタイムに電子黒板や生徒のタブレットに表示できる。「こえみる」を導入したろう学校などでは、記録に残すための復習もしやすくなり、授業の効率が良くなったという声もあるという。◆メインの使用はまだまだ電子黒板 「一人一台タブレットPC」とうたわれるようになったものの、まだその実現にはほど遠く、デジタル教科書も現在の段階では「まだまだ電子黒板で先生が使用することがメイン」と想定している。 「もちろん、仕様的には生徒全員が使えるように準備はしているが、まだ数年はかかるだろう」というのが、教科書会社の見方だ。 実際、指導者用のデジタル教科書しか用意していない会社も多く、生徒版については機能を限定したものを無料配布する対応をしている会社も多い。会場では、「無料配布はできればしたくないが、他社が始めてしまうのであればやらざるを得ない」という意見もあった。 デジタル教科書は、今後の学校へのタブレット端末やPCの普及率によって、仕様も使い方も大きく変わってくる。来年以降も改定に合わせて、大きな変化があると予測される。