武蔵美生が大賞受賞、デザイン学生の卒業制作177点の頂点決まる

12月7日、「MITSUBISHI CHEMICAL JUNIOR DESIGNER AWARD 2015」の受賞作品が決定し、東京国際フォーラムで授賞式が開催された。このアワードは「日本の教育機関で学ぶデザイン学生の卒業制作」を対象としたもので、デザイン振興とデザイナー育成を目的として開催されている。

教育・受験 大学生
13人の受賞者と審査員
  • 13人の受賞者と審査員
  • 孫思嘉さん(右)と水野誠一審査委員長
  • 最優秀賞を獲得した、孫思嘉さんの「14:31pm.2013.7.3」
  • 最優秀賞を獲得した、孫思嘉さんの「14:31pm.2013.7.3」
  • 堀越真魚さん(右)と三菱ケミカルホールディングスおよび三菱化学の冨澤龍一特別顧問
  • MITSUBISHI CHEMICAL賞を獲得した、堀越真魚さんの「Design for living better.」
  • MITSUBISHI CHEMICAL賞を獲得した、堀越真魚さんの「Design for living better.」
  • 佳作に選ばれた、田嶋晃子さんの「ある豆の話」
12月7日、「MITSUBISHI CHEMICAL JUNIOR DESIGNER AWARD 2015」の受賞作品が決定し、東京国際フォーラムで授賞式が開催された。このアワードは「日本の教育機関で学ぶデザイン学生の卒業制作」を対象としたもので、デザイン振興とデザイナー育成を目的として開催されている。

主催は同アワード実行委員会で毎年開催され、三菱化学が特別協賛、三菱ケミカルホールディングスが協力する体制となって今回で10回目となる。ユニークなのは、デザイン全般の卒業制作を対象とした日本で唯一のアワードということだ。

今回の応募総数は177点。このなかから大賞に選ばれたのは、孫思嘉さん(武蔵野美術大学大学院造形研究科デザイン専攻修了)の『14:31pm.2013.7.3 -in Tamagawa Aqueduct』。これは「2013年7月3日の午後2時31分から1分間、散策し、体験した玉川上水の小径周辺にひろがる自然、人工環境から視覚、触覚、聴覚、嗅 覚に関する情報を記録し、数値化したり、図化したり、別の物質に置き換えたり、あるいは近似する匂いで再現した」というもの。

非常に難解かつ哲学的なアプローチだが、「膨大かつ精緻な研究・分析結果を、洗練された、非常に美しいプレゼンテーションにまとめた点」が評価された。作者の特別な感覚と感性、表現力が示され、「根気強く丁寧に、徹底した姿勢で取り組んだ様子が伺える点でも、大賞にふさわしい」という選評となっている。

またMITSUBISHI CHEMICAL賞は堀越真魚さん(京都精華大学デザイン学部プロダクトデザイン学科卒業)の『Design for living better.』が獲得。「人々の生活を少しだけ便利にするアイデアを具現化すること」が作品テーマで、タンザニア滞在中に閃いたアイデアを形にしたという。

「日本で事前に考えいたデザインは、現地では全く役に立たないことが分かった」とのこと。現場に赴いて全身を使って考え、デザインすることが重要ということの証明だ。考案したのは水運搬用のドラム、保冷バスケット、日干しレンガ製作キットという3アイテムで、その高い社会性が評価された。

このほか佳作は2点。田嶋晃子さん(東京藝術大学美術学部デザイン科卒業)の『ある豆の話』と、佐藤仁美さん(武蔵野美術大学大学院造形研究科デザイン専攻修了)の『Sense of Field』が選ばれた。また審査員がそれぞれ1点ずつ選ぶ審査員特別賞は9点が選出されている。

審査委員長の水野誠一氏は、審査の過程を「これはアート作品か、それともデザイン作品なのかという論議も含めて、最後まで活発なディスカッションが繰り返された」と振り返った。これは「デザイン」という言葉の意味や解釈の幅広さ、そして可能性の大きさを示すものだろう。

しかし残念なことに、このアワードは今回をもって休止されることが授賞式会場で明かされた。もしかすると、三菱ケミカルホールディングス傘下企業の合併や統合といったビジネス面の変化が影響しているのかもしれない。

しかしこのユニークで、若いデザイナーのポテンシャルを示す機会が消えてしまうのは惜しい。一企業グループでの支援が無理ならば、複数の企業の支援を募るなどして継続されることを望みたい。

デザイン学生の卒業制作が対象のアワード、審査結果発表

《古庄 速人@レスポンス》

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top