「夏休みにも活躍」シャープに聞く中高生の電子辞書最新事情
英単語の意味を調べたり、言葉の意味を調べたりするならインターネットでもできる。スマートフォンがこれだけ学生や社会人に普及したにもかかわらず、電子辞書という製品の市場ポジションはゆるぎないように見える。
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中高生が電車の中で、ノートや参考書に赤や緑のシートを乗せて勉強しているのはよく見る風景だ。色のついた文字(重要単語、暗記項目)をマスクして、知識や記憶の定着を確認しする勉強方法だ。
これと同じ機能が電子辞書にもある。「暗記ツール」と呼ばれるブレーンの機能だが、表示したコンテンツの重要キーワードなどに色がついており、タッチ操作で画面上のカラーシートを上下させ、色付き文字をマスクできる。このツールに対応しているのは、「でる順」や「キクタン」など英語、英検関連のコンテンツや日本史・世界史の「年代暗記」シリーズなど。
暗記ツールは、中高生が普段参考書などで勉強している方法をそのまま電子辞書上に再現したもので、勉強スタイルをうまく製品に取り込んでいる。このようなこだわりポイントが中高生に支持されているようだ。
◆ネットとの差別化はノイズのない検索精度
電子辞書とインターネット検索の決定的な違いは、検索精度にあるといえる。インターネットは膨大な情報の中から検索が可能だが、検索エンジンのアルゴリズムが、参照頻度の高いもの、情報の新しいもの、あるいは個人ごとの検索履歴などによって、検索結果を変えてくるため、ほしい情報が確実に検索できるとは限らない。ブログやまとめサイトなど、調べたい項目によっては「ノイズ」でしかない情報が多数ヒットしてしまう。
これに対して、電子辞書は検索対象が収録コンテンツに限られるが、ヒットしたものがほしい情報ではないということはまずない。学習効率を考えた場合、電子辞書の検索精度の優位性は高い。
「以前の電子辞書は検索キーワードが収録されているキーワードと完全に一致させる必要がありましたが、現在はあいまい検索にも対応しています。ネットの検索では、スペルミスがあったり、すべてを入力しなくても、正しい検索語を表示してくれたり、検索語の候補をリスト表示してくれたりします。これと同じことが電子辞書でも可能になりました。覚え違いをしていた単語でも候補を表示してくれるので、調べられないということがありません。たとえば、依存心という単語の正しい読み方は「いそんしん」です。以前の電子辞書は「いぞんしん」と入力しても単語が見つかりませんでしたが、今は正しい読みとともに単語が表示されます。」
◆長文読み上げ機能で新しい利用スタイルを提案
辰巳氏はもうひとつ興味深い機能を教えてくれた。
「単語の発音や文章の読み上げ機能は、これまでもありましたが、いまは長文の連続読み上げにも対応しています。長文というのは、たとえば本体にも内蔵しているOxford Bookworms等の電子書籍を朗読させることもできます。夏休みのように時間があるときは、この機能で英語の集中リスニングをするのもよいでしょう。「リトルチャロ」のようなストーリーのあるコンテンツを毎日再生するというのも面白いと思います。」
連続読み上げ機能は、テキストベースのコンテンツなら基本的にどれでも対応しているという。連続読み上げ機能に対応したコンテンツのみではなく、ブレーンライブラリーからダウンロードした青空文庫などを読ませることもできる。
読み上げは段落ごとに文章を解析しているため、単語のつながりや発音はごく自然だ。単語をつなぎ合わせたような合成音声ではなく、録音のような読み上げが実現されている。
電子辞書は、インターネットが一般に普及する前からある製品だ。そのため設計や商品企画で、インターネットを直接意識することはない。あくまで辞書の延長として、学生の使いやすさや勉強スタイルを追求する独自の進化を遂げている。
技術トレンドやインターネットを後追いするのではなく、スタンドアローンにこだわり、中高生目線で使いやすさを追求する設計コンセプトが、ネット時代になっても使われ続ける理由のひとつなのだろう。