どうなる?東京都立【高校受験2018】進学指導重点校はここからが勝負

 進学指導重点校である日比谷、西、戸山、青山、国立、八王子東、立川の7校の人気はますます高まっている。いよいよラストスパートがはじまるこの大切な時期に、重点校への合格に必要な対策とはどのようなものなのか。

教育・受験 中学生
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伊藤俊平氏と高橋淳氏
  • 伊藤俊平氏と高橋淳氏
  • SAPIX中学部 教育情報センター課長の伊藤俊平氏
  • SAPIX中学部 教育情報センター部長の高橋淳氏
  • 伊藤俊平氏と高橋淳氏
 近年の大学進学実績の向上もあり、都立の「進学指導重点校(以下、重点校)」である日比谷、西、戸山、青山、国立、八王子東、立川の7校の人気はますます高まっている。いよいよ入試に向けたラストスパートがはじまるこの大切な時期に、重点校への合格に必要な対策とはどのようなものなのか。平成30年度(2018年度)からは自校作成問題が復活し、重点校の入試における難易度への影響や傾向も気になるところだろう。

 今回は、SAPIX(サピックス)中学部教育情報センター課長の伊藤俊平氏に、2018年度における重点校の入試予想や自校作成問題の傾向を、同教育情報センター部長の高橋淳氏には、ラストスパートにおける学習方法を中心に科目別のポイントやアドバイスを聞いた。受験直前の中3生のみならず、これから難関校を目指す中2・中1生にも参考にしていただきたい。

進学指導重点校の激戦必至



進学指導重点校を中心とした都立校入試の傾向を教えてください。



伊藤氏:重点校の人気は総じて継続していくのではないかと考えています。たとえば、日比谷高校の受験者数の推移をみると、2015年は561名で実は近年のピークとなっています。2016年は462名、2017年は468名ですから、ピーク時からはおよそ100名程度が減っていることになります。

 ただし、これは日比谷の人気が下がったことを意味しているわけではありません。SAPIXの模擬試験における志望状況をみると、実力上位層での変動はなく、むしろチャレンジ層が減少しているのではないかと考えています。実力者の中での入試ということになりますから、やはり激戦は必至でしょう。

SAPIX中学部 教育情報センター課長の伊藤俊平氏
SAPIX中学部 教育情報センター課長の伊藤俊平氏

進学指導重点校と国立・私立難関校との併願



重点校との併願が多い難関の国立・私立を含めた入試の傾向を教えてください。



伊藤氏:都立の重点校の志願者には、各校の特色というものが色濃く影響を与えているといえるでしょう。日比谷高校ならば長い伝統があり、勉強もしっかり指導、行事にも積極的に参加といったカラー、西高校ならば、生徒の主体性を重んじた自由な校風といった特徴もあります。

 こうした各校の特色を学校説明会などで把握し、難関国立・私立を含めて、自分に合った学校はどこなのかを選択していくことになるでしょう。また、戸山高校では、医学部進学者を増やそうとする特別な取組み(チームメディカル)もはじめています。こうした取組みの効果が見えてくると、志願状況の傾向にも今後、変化が出てくるのかもしれません。

 難関校の入試では、私立の主要難関校の受験日程が2月10日と11日に集中します。このため、受験校の決定には多くの選択肢があり、都立の重点校もあわせて、ある意味人気どおりの入試になるのではないかと予想しています。事前に余裕をもった戦略を立て、落ち着いた状況で入試に臨むことが大切だろうと考えています。

重点校で復活する「自校作成問題」



「自校作成問題」の特徴や影響を教えてください。



伊藤氏:自校作成問題は、2001年に日比谷高校からスタートしました。「思考力・判断力・表現力」を問う入試にする、また学校の求める生徒像を、学力検査問題を通して生徒に示すことを目的として、自分の学校で入試問題を作成するものです。

 2013年まで15校が自校作成問題を実施していましたが、2014年にグループ作成問題へと変更しました。これは、学力検査問題の質の向上や結果分析を複数校で効率的に実施すること、志望校の選択肢の幅を広げることなどが必要とされたことが背景でした。しかし、受験する生徒のレベルも各校で大きく異なるため、入試の難易度をどう設定するか、また入試を通じて自校の特徴をどのように伝えるのかに課題があり、グループ作成問題であっても一部の問題は学校による差し替えが行われていました。そうした経緯から、2018年度からは「自校作成問題」が重点校を中心に復活することになったわけです。

 自校作成問題の当初の目的である「思考力・判断力・表現力」の向上は、2020年度にはじまる大学入試改革にも通じるところがあります。そして、各校ともに自分たちの求める生徒像を今までよりも示しやすくなったといえるでしょう。

入試本番までのラストスパート



学習を進めるにあたって、特に注意すべき点を教えてください。



高橋氏:重点校に合格することを考えた場合、受験の倍率は2倍未満。単純な話で半分以上が受かるということになります。したがって、平均点を取れば合格は見えてくる。「平均点を取る勉強」が合格するための勉強方法になるだろうとは思います。

 自校作成問題については平均60点を目指すことがよく学校からは言われています。今までのグループ作成問題で平均点が高かった学校、たとえば70点台の学校でいえば、日比谷高校の2017年度の英語の平均が75.5点、国語の平均が72.8点です。西高校は英語が73.9点、国語が70.7点なので、これらの学校は自校作成問題の平均を60点台にするために、必ず難度を上げてくるものと思います。この点では、過去の自校作成問題で対策してほしいと考えています。

 その他の重点校では、過去のグループ作成問題をベースにしながら勉強を進めることも対策として有効だと思います。また、難易度の観点だけではなく、その学校のカラーを知るためにも、過去の自校作成問題を解くというのは大切なことだと思います。

重点校の2018年度入試における科目別の傾向と対策を教えてください。まずは理科・社会よりお願いします。



高橋氏:理科・社会については、都立全校で共通問題となっており、上位校ならば高得点での勝負になると思います。都立全体の平均点は50点台ですが、重点校レベルになると85点、その中でも上位の学校であれば90点になります。そのため重点校の理科・社会では、高得点を取るための勉強が必要です。

 一番は過去問の練習です。その際に、まず100点を目指すことが重要です。

 また学校の教科書に取り組むことも重要です。学習指導要領から逸脱した出題はないわけですから、教科書レベルで掲載されている内容を完璧に勉強することは、今の時期くらいまでにやっていてほしいと思います。それが第一段階です。

 都立の入試では特有の問題形式があります。たとえば社会では地図、年表などの資料を活用した問題、理科では実験と観察を題材とした出題が非常に多くなっています。都立独特の問題形式に慣れる時期に入ってきていますから、過去問を数多くこなしていくことが、やはり直前の勉強方法になってくるでしょう。

 また、マークシートが導入されて、理科・社会は記述式が減ってきていますが、それでも記述式の問題は出ています。他の科目でも同様ですが、記述対策ではやはり「添削」が必要になりますね。これから直前までが記述対策を仕上げていく時期になります。

SAPIX中学部 教育情報センター部長の高橋淳氏
SAPIX中学部 教育情報センター部長の高橋淳氏

次に国語について教えてください。



高橋氏:国語のポイントは「時間配分」と「記述対策」です。試験時間は50分で試験の内容や分量の割に長くはありません。長文読解は3題で、現代文と古文が融合した文章も含まれます。

 作文も必ず出題され、文字数は200~250文字と決して短いものではありません。したがって、それらを50分で解き切るスピードを養うことも大切です。記述力は、書きながら実力をつけていくことが必要です。都立は記述がメインと考えて、面倒くさがらずに書く力を養ってほしいと思います。

伊藤氏:記述をはじめとして、国語はやはり「添削」が有効ですね。最終的には、解答例と自分の答えを見比べて、ここまで書けていたから◯、ここは抜けたから△などと採点できるようになれば、実力がついてきた段階といえるでしょう。

高橋氏:長文は内容が堅く、捉えづらい問題が出題されます。過去問でどのような長文が取り上げられているのかを演習していくことは非常に意味があると思います。これはグループ作成問題の過去問含めて同様だと考えています。

伊藤氏:長文では、その学校というよりも「年度」による流行りがあります。極端な例えにはなりますが、志望校の国語を30年分やるよりは、最近のものを30校分やったほうが、現在話題になっているテーマを粗方カバーできるのではないかと思います。

 初見で理解するのは厳しい、たとえば生命倫理、自然科学や社会科学分野などにおける複雑系であっても、一度やったことがあれば余裕をもって取り組めると思います。

高橋氏:長文の中でも特に、説明的文章、いわゆる論説文や物語文では、学校ごとのこだわりが強く出てきます。2017年度のグループ作成問題でも、これらを差し替えた学校が目立ちました。具体的に言うと、重点校7校のうち日比谷、国立、戸山、立川、青山の5校が差し替えを行ったものと思われます。おそらく学校のこだわりとか、求めたい力や学校の方針が色濃く出る分野なのだと思います。

続いて英語について教えてください。



高橋氏:英語は圧倒的な読む量の多さが特徴です。都立の問題の場合、長文も長いですが、設問も長いので、読む力がないと対応できないと思います。おそらく長文の分量は私立トップ校よりも多いですね。こちらも同じく50分で対応しなければなりません。学習指導要領の範囲を超えるところからは出題できないので、習っていない単語にはすべて語注がつきますが、時間内に語注を見ながら英文読解するのは難しいと言えます。したがって高いレベルの語彙力が求められています。

 中途半端な英語力だと本当に対応できないレベルになってきていますので、志望校に受かるための勉強ということよりは、本当に英語の力をつける勉強に意識して取り組むべきだと思います。

 英文の題材に関しては、学校のカラーが題材にも反映されます。その点では、その学校の過去問を解くことがやはり有効な対策にはなるでしょう。

 英作文があることも特徴のひとつです。まず英語を書くために必要な文法や動詞の活用法などを理解したうえで、それが使えるかどうか、文章にするときにどう使えるかが問われます。英作文は、これからの入試直前期に力をつけられる分野です。そして、ここでも重要なのは「添削」です。間違いを繰り返しながら点数を取るところまで仕上げていくことが大切です。

最後に数学について教えてください。



高橋氏:数学もやはり記述が都立の特徴です。解法を記述させる問題も必ず入りますし、証明も入ります。答えを出せればいいという勉強をしている場合には、なかなか対応が難しくなると思います。

 都立では、記述であっても、あえて難しい問題ではなく、ある程度みんなが取り組める問題を選んでいます。解ける解けないだけではなく、ある程度は解けるけれども記述ができるかどうかの勝負になるわけです。採点でも解法欄を丁寧に見ているようすが感じられます。答えまで行き着けなくとも、部分点での積み上げで合格できるケースがありますから、これをかなり意識して勉強することが必要だと思います。ここでも、記述の力を高めるにはやはり添削が効果的だと思います。

 数学の時間配分もとても大切です。正答率でいえば30%を切るような難しい問題と、確実に取らなければならないものの見極めが重要になります。難問に対して必要以上に時間を取られると得点になりません。選球眼を養うためにはやはり問題演習しかないと思います。演習を重ねることで判断もできるようになるので、過去問は直前まで対策の中心になると思います。

 また、「作図」が出題されることも都立の特徴となっています。私立の場合、作図が出題されない学校も多いので、後回しにしがちですが、年内には少なくとも教科書レベルの作図問題を仕上げておきたいところです。

 最後に全体をまとめますと、都立のトップ校は、昨今の大学入試改革でも叫ばれている「思考力・判断力・表現力」に対して、自校作成問題を始めた頃からずっとこだわりをもって入試問題を作成してきているといえます。したがって、きちんとした実力をつけることが本当の対策になるのです。そして、その実力が高校に進学したあとの大学入試にも、必ず生きてくると思います。

この時期にはどの科目も過去問演習が重要になると思いますが、自校作成の過去問は入手できるのでしょうか。



高橋氏:市販の各学校の過去問題集では、長くても5年分程度しか掲載されていません。また、グループ作成問題以前の「自校作成問題」を入手できないのが現実です。そこでSAPIXでは、日比谷高校と西高校の英数国3教科における自校作成問題の予想問題集(リスリングCD付)を発売しています。十分な演習量を担保するという意味では、この予想問題集をぜひ活用してほしいと思います。

 この予想問題集では、日比谷や西の入試と同じ形式で演習ができますが、日比谷と西だけでなく国立(くにたち)や戸山を目指す場合にも十分活用できると思います。

創業時から「思考力・判断力・表現力」の向上を目指すSAPIX



SAPIX中学部の特徴をお聞かせください。



高橋氏:SAPIXは、昨今の大学入試改革で叫ばれている「思考力・判断力・表現力」の向上を重視した指導方針を、創業時から徹底しています。ここまで述べてきたとおり、これらは都立トップ校の指導方針に通じていますから、やはり合格することにも当然つながっています。

 SAPIXは合格させることに徹底したこだわりをもちながら、知識や技能だけではない「幹」の部分を大切に育ててきました。これが現在、時代の要請にマッチしてきているといえるのかもしれません。

2019年度以降の受験生の志望校選択



これから志望校を決める中1・中2生に志望校選択のアドバイスをお願いします。



伊藤氏:受験直前になると、どうしてもその学校に受かる受からないという視点だけになってしまいますが、一方で多くの高校が、将来に向けた取組みをますます加速化してきているのではないかと感じています。志望校の中身をきちんと見たうえで、自分の進路を決めることが今後ますます重要になるのではないでしょうか。

 たとえば、海外研修や留学の制度をどのようにもっているか、将来を見据えたキャリアに関する教育はどう行われているかなど、進学しようとする学校独自の教育理念や教育方法をまずは知ること、そして将来を見据えて自分を高められるような環境をしっかり整えるという観点が必要でしょう。

高橋氏:SAPIXでは、「SAPIXフォーラム」といったイベントで、SAPIX中学部を卒業した高校生・大学生に座談会形式でいろいろなことを話してもらっています。やはり受験経験者としてのアドバイスはとても心強く、生徒たちにもさまざまな刺激があるようで、とても重要なものとなっています。また、卒業生のインタビューや高校紹介などの記事が掲載されている情報誌「SQUARE」なども進路選択には役立っていると思います。

 大学入試改革の話が出ましたが、この改革の柱のひとつに、英語の4技能(聞く・読む・書く・話す)を重視する方針があります。英語については、早めに取り組んで中2のうちに得意科目にしてしまうことも有効な手段であると思います。SAPIXでも、スピーキングを強化するための英語音声トレーニングアプリ「MyET」を家庭学習用に導入し、4技能の獲得のために対応を強化しています。

伊藤俊平氏と高橋淳氏
インタビューに答える伊藤俊平氏と高橋淳氏

ありがとうございました。



SAPIX中学部のイベント



<模擬試験>
中3生対象
・都立日比谷・西高入試プレ:12月3日(日)
・慶應志木高入試プレ/早大学院入試プレ:12月17日(日)
・開成高入試プレ/慶應女子高入試プレ/慶應義塾高入試プレ:12月23日(土・祝)

中2生対象
・都立進学指導重点校入試プレ:12月3日(日)
・早慶高入試プレ:12月17日(日)

<受験相談会>
・中1・2生のための受験相談会(英数診断テスト付):12月9日(土)
 ※SAPIX生以外の高校受験を考えている中学1・2年生およびその保護者の方を対象

2018年度 東京都立高等学校入学者選抜スケジュール



<一次および分割前期>
 願書受付:2018年2月6日(火)・7日(水)
 学力検査:2018年2月23日(金)
 合格発表:2018年3月1日(木)
※ インフルエンザなどが原因で受検できなかった場合には追検査が3月9日に実施される。

<分割後期>
 願書受付:2018年3月6日(火)
 学力検査:2018年3月9日(金)
 合格発表:2018年3月15日(木)
《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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