そして、「マンガムテープ」はコクヨデザインアワード2016で「気持ちを送ることまでデザインしていること」が高く評価されて優秀賞を受賞し商品化。漫画の吹き出し、効果線が印刷されたビニールテープで、贈り物の背景にあるストーリーや想いを描くことで、気持ちを視覚的に添えることができるという、ユニークなアイテムです。
この2つの個性的なアイテムに、とっておきの女性が作品を描いてくれました。その女性とは、中川翔子さん。女優、歌手、声優、イラストレーターで漫画家…ひとことでは言い表せないほど多才な中川さん。漫画との出会いや、絵を描くことへの想いも聞きました。
◆少女漫画雑誌をまるごと模写!子どものころから絵を描くのが大好き
--中川翔子さんといえば、女優や歌手のお仕事以外に絵もお上手で、ネットでもたびたび話題になっていますが、絵を描くことが好きになったきっかけは?
中川さん:ひとりっ子で鍵っ子でしたし、大好きな漫画をよく買ってくれる親だったので、家にいるときは少女漫画雑誌の「なかよし」や「りぼん」などをまるまる1冊模写したり、楳図かずおさんの漫画を模写したりしていました。子どものころから通信講座でも学んで、ペン先とかスクリーントーン、墨汁など、道具も揃えていましたね。
楳図さんがアシスタントさんをあまり使わない、ということを何かで読んだのですが、背景まで全部、楳図さんが描かれているのだろうな…と思ってひたすら模写していたんです。だんだんと絵を描くことが写経みたいな感じで、精神統一ができて。いつの間にか絵を描くことが楽しくなっちゃって、テスト用紙やプリントの余白、広告チラシの裏にも絵を描きました。おばあちゃんに見せて褒めてもらうのが嬉しい!という子どもでした。今と変わらないですね。
◆原画が残る、生きた証が残るアナログの良さ
--今も頻繁に描くのですか?
中川さん:そうですね。すぐ描けるように文具もタブレット端末も持ち歩いています。テレビで「シン・ゴジラ」が放送されたときは、石原さとみさんの顔を描いたんです。Twitterやpixivに載せるとすぐに「いいね!」ってリアクションをもらえたり、「似てますね」「いいですね」と感想を書いてもらえたり、とても嬉しいです。
今日の洋服は私とBEAMSが共同プロデュースしているファッションブランド「mmts(マミタス)」の服なんですが、私が描いた「リュウグウノツカイ」が柄になっているんです。絵を描くのが好きなことが、大人になっていろいろな形で役に立っています。ライブのグッズの絵を描いたり、趣味と仕事がつながることもよくあって、すごく嬉しいです。毎月、映画の雑誌の連載で好きな映画の絵を描く仕事もやらせていただいているので、1か月描かないことはないですね。
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--物心ついたころから描くことが習慣になっているという感じですね。手書きとデジタルどちらが好きですか
中川さん:最近、エッセイ漫画を6ページ描くというお仕事があったんですが、デジタルだとトーンを一気に貼れて便利で「すごい時代だな!」と思ったんです。ただ、原画が残る、生きた証が残るっていうのは、やっぱりアナログの良さだと思うので、そういうことも忘れたくないですね。
たとえば、全部アナログは大変でも、線画だけはシャーペンで描いて、スキャンして、色つけをデジタルでするとかもできるじゃないですか。だから、原画は残るようにしていきたいなぁって思います。
--絵を描くときのお気に入りの文具はありますか
中川さん:アナログで描くときはシャーペンと、あとは細い筆ペンみたいなもので描くと、味わいが出て好きです。良さそうな細い筆ペンを見つけると買っちゃいますね。見た目も大切で、ピンクのスケルトン素材のペンとかは欲しくなっちゃいますね。世界堂に行くと爆買いしちゃいます。
--話題になった羽生結弦さんの絵は新聞にも取り上げられましたよね
中川さん:すごく恥ずかしいんですけど…。あれも趣味の一貫で、あまりに羽生さんが美しくて美しくて。絵に描きたくなる感じじゃないですか。羽生さんが完璧すぎて。その衝動をぶつけて描いたんですけど、拡散力があるとはいえネットで広がってビックリなことに、新聞にまで取り上げていただいて。その影響もあるのか、普段はあまり接点のない、すごく歳上の方々に「羽生くんの絵、見たわよ」とたくさん声をかけていただいて嬉しかったですね。
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--何かに感動して絵を描くことも多いのですか
中川さん:はい。あまりにもハマった映画やゲーム、漫画やアニメを絵に描くことが多いですね。
--描かずにいられない、というような
中川さん:はい。描きたくなるほどの作品に出会えることも楽しみですね。
--ポケモンのシェイミも描かれてましたよね
中川さん:絵を描くのが好きということと、ポケモンが好きということがつながって、ポケモンカードの絵を描かせていただいたんです。なんと20万枚も配ったらしいんですが、それだけの数の子どもたちの手に渡ったと思うとすごく嬉しくて。紙はいいなと思いました。
絵にまつわるお話は尽きないのですが…「紙はいい!」というお話が出たところで、いよいよ目の前で「ビワコミック」と「マンガムテープ」に描いていただきました!
◆集中力がすごい、丁寧さがすごい、速さもアイデアもすごい!
まず手にとった「ビワコミック」のページを開いて、少しのあいだ眺めていたかと思うと…下書きなしで描きはじめた中川さん。
取材しているこちらは気になり度々覗き込みますが、中川さんは絵の世界へ入ってしまったかのように集中。可愛い猫に続いて、2コマ目の女の子の髪の毛のツヤを描き込みます。「わーっ!漫画だ。少女漫画の世界だ」と、その技量にビックリ。次のコマが気になって仕方ありません。
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登場した猫は中川さんが飼っている猫のメポ。中川さんが「ビワコミック」に描いたメポはネクタイをつけて「メポ課長」に!眉毛があって、ネクタイが似合うだろうな、と思っていたとのこと。「朝起きると腕の中にいて、すごいかわいく、漫画に描きがいがあります」と、中川さんはメポにメロメロのようす。メポは中川さんのTwitter(@shoko55mmts)にも登場しています。
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小学生のとき、独学で絵を描くだけでなく、通信講座でも学んだという中川さん。下書きを一切せずに丁寧に繊細な線を描き続け、構想からわずか15分ほどで仕上げた作品には、さすがのキャリアを感じました。余った最後のコマには可愛いサインを!その機転の早さに驚きました。サインが入ったことでますます作品の価値が上昇しました!
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次に取りかかったのは「マンガムテープ」。こちらも少し考えると、再び集中して描きはじめた中川さん。琵琶湖のアシを原料に用いた「ビワコミック」とは異なりツルツルしている「マンガムテープ」は油性マジックを使用。
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これまた、かなり細かい描き込みをし、一筆一筆、絵に対する愛、漫画愛、猫愛があふれる中川さんでした。デジタルツールも駆使し、パソコン上でスクリーントーンを貼ったりするとのことですが、手描きのアナログ手法でも一切手を抜かないのです。
「オチはなくてもいいですよね?」と言いつつ、きっちりオチをつけていました。
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「ビワコミック」と「マンガムテープ」、それぞれ初めてに手にとったのに、制作時間はわずか15分ずつで傑作が完成。
すみずみまで細かく描き、明暗をつけたり、スミベタ部分も細いマジックで丁寧に塗ったり、趣味なのか仕事なのか以前に、とにかく絵が大好きという気持ちがあふれている中川さんでした。
◆漫画を描くハードルを下げて背中を押してくれる「ビワコミック」「マンガムテープ」
描き終えた感想をお聞きすると、こんな答えが返ってきました。
中川さん:絵を描くのが好きでも「漫画にする」って、ひとつエネルギーがいるじゃないですか。そう思うと「ビワコミック」はコマ割りしてくれているので、こうしてみようかな、という気持ちになりやすいですね。ひと手間加えて漫画にしたくなるというか、背中を押してくれる感がすごくうれしい。ノートですけれど、描いた漫画をブログにも載せたいなとも思いました。「マンガムテープ」は誕生日プレゼントなどのメッセージカードの代わりになりますね。自分ももらえたら嬉しいと思いました。
漫画ってブログに描くのはちょっと大変だけど、これに描いたものを載せると、その日の絵日記になる。4コマくらいだったら1日にあった出来事って、簡単にできる気がするし、それをブログに載せれば、生きた証が2つ、アナログとデジタルに残っていいですね。
--絵を描く道具について注文はありますか
中川さん:描きやすいシャーペンと、モンスターボールみたいに小さくなって収納できる進化したタブレット!絵を描くことがもっともっと身近になっていいと思います。
--さすが!先をいってますね。最後に今後の予定を教えてください
中川さん: NHKドラマ10「デイジー・ラック」が好評放送中です。アラサーの4人の幼馴染の仕事と恋との悩みがリアルで、どんどん展開が激しくなっていっています。私は極貧のカバン職人のミチルを演じているのですが、ミチルは好きなことを仕事にして、信念を貫いて生きてきたんですけど、貫いてきたからこじらせちゃって、なかなか恋がごぶさたでみたいな、私の人生とすごくかぶってる、みたいな(笑)。ミチルの恋が動いていくので、ぜひ見ていただきたいなと思います!
9月に渋谷にできるホールのこけら落とし公演をやらせていただけるので楽しみにしています。先日バースデーライブで66曲歌って、すごく元気に楽しくやれました。やはり歌うことも大好きなので、9月のライブも今から気合が入っています。夏にはロサンゼルスで開催される「Anisong World Matsuri at Anime Expo 2018」にも出演させていただくので、そちらもがんばりたいと思います。
Twitterとブログもたくさん更新しています!こういう漫画が登場するかもしれませんし、ぜひフォローしてください!
--女優、歌手、イラストレーター、漫画家。多才な中川翔子さんは、ご自身の持つさまざまな才能をつなげながら、常に一歩も二歩も先の未来を思い描いているようでした。ご活躍、ますます期待しています。ありがとうございました!