第4回「キャンパスアートアワード2018」グランプリは高校3年生

 2018年10月26日、読売新聞社東京本社内(東京都千代田区大手町)で、第4回「キャンパスアートアワード2018」の最終審査会が行われました。審査員の苦悩の叫びが飛び交う熱い審査会のようすをお届けします。

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長時間の審査を経て、映えあるグランプリが決定



 開始から30分を経過して、6作品まで絞られました。続いて、1人2作品選び、やっとのことで4作品にまで絞り込みました。審査員全員、息することも忘れるほどの集中力で、真剣に審査を進めます。最後は全員で「これこそグランプリ」と思う作品を「せ~の!」で指差し。
1時間半におよぶ審査の結果、グランプリが決定しました。

 今回は、中部地区代表である愛知県・名古屋市立工芸高等学校3年の久保山莉恵さんによる「赤い電車の春」がグランプリに輝きました。初の関東地区以外、かつ高校生による作品がグランプリ受賞となりました。読売中高生新聞賞は「夜の航空公園」(埼玉県/東星学園高等学校1年/筋野古都美さん)、コクヨ賞は「大好きな町 鎌倉」(神奈川県/横浜市立美しが丘中学校3年/竹野綾さん)が受賞しました。

 作者の皆さん、受賞おめでとうございます。約2時間の審査を終えて、ほっとしたようすの審査員の皆さん。作者の思いを汲みながらの厳正なる審査、お疲れ様でした。

審査員に聞く「この作品のここが好き!」



 審査員の皆さんに、選考理由を聞きました。


<グランプリ>
「赤い電車の春」(中部地区代表・愛知県/名古屋市立工芸高等学校3年/久保山莉恵さん)


作者のコメント:名古屋の人にとって身近なこの赤い電車はどんな景色にも合って街に彩りをくれます。最近では新型車両の導入が増え、赤い電車が減りつつあるのでいつまでも名古屋の街を走ってほしいという思いで描きました。

芦沢さん:個人的にも一番好きな作品です。まず画力がすごい。でも、よく見ると、名古屋名物のエビフライや手羽先が絵の中に隠れているんですよ。皆さん気づきましたか?「大人を楽しませてやろう」という策略が見え隠れして、見ていて飽きない絵ですね。

ベックさん:そうそう。楽しいですよね。こんなところに手羽先が描かれているなんて、誰も思わない。ほかにもなにかあるんじゃないかなと探したくなる。ワクワクする絵です。

林さん:電車の赤と空の青という鮮やかな色彩のコントラストが目を引く印象的な作品ですね。電車の緻密な描写から察するに、電車好きな男子の絵かと思ったのですが、これが女子生徒の作品ということにも驚きました。圧倒されるくらいのテクニックと表現力があります。


<読売中高生新聞賞>
「夜の航空公園」(関東地区・埼玉県/東星学園高等学校1年/筋野古都美さん)


作者のコメント:航空発祥の地という有名な公園でも、幼稚園生からお年寄りまでのおさんぽ道になる憩いの場所です。ライトアップされた飛行機ときれいな星が見え、昼間の余韻の僅かに残った夜の航空公園が、私の地元のイチオシです。

ベックさん:明るい空を飛ぶ飛行機はよく見るけれど、夜にライトアップされた飛行機を描いているところに意外性があり、幻想的で好きです。これからどこに飛んでいくんだろうと想像が広がりますね。こんな表紙のノートがあったら、勉強用だけでなく、旅の記録用ノートにしてみたいですね。

芦沢さん:この公園には何度か行ったことがあるのですが、実物よりカッコイイ(笑)。絵って見たとおり描けばいいわけではない。きっと作者は、この風景、この時間、このアングルで見る飛行機が一番カッコイイと思って、魅力を最大限を表現したかったんだと思います。気持ちが伝わってくる作品ですね。空の表現もとても上手です。空って難しくてなかなかここまで描けない。

林さん:そうなんです。普通、この年代の子どもたちが夜景を描くとしたら、空を黒や濃紺で描くと思うのですが、この作品は空を鮮やかな青で描いているんです。他の対象の色合いとのコントラストの効果で、ちゃんと夜景に見えるように工夫しているのがすごい。それに、飛行機の造形を描くのって想像以上に難しい。とくにこの作品のモチーフになっている機種って難しいんですよ。作品全体の雰囲気のよさと画力の高さがそなわった、レベルの高い作品ですね。


<コクヨ賞>
「大好きな町 鎌倉」(関東地区・神奈川県/横浜市立美しが丘中学校3年/竹野綾さん)


作者のコメント:鎌倉は家族や友達とよく訪れる大好きな場所です。町を見守るように座っている大好きな大仏や江ノ島の美しい海、華やかに咲く紫陽花、それらによって構成される鎌倉の伝統的な雰囲気全てが私のイチオシです。

ベックさん:色使いがすごくきれい。構図もよく考えられていて、中学生の作品とは思えないですね。鎌倉の魅力がストレートに伝わってきて、ここに行ってみたい!と思いました。

林さん:大仏、江ノ島、江ノ電、紫陽花など、異質なモチーフをうまくコラージュしていて、構成の巧みさを感じさせます。江ノ電がこちらに走ってくる構図も迫力があります。デザイナーとしてのセンスがあると思いますよ。

芦沢さん:僕は鎌倉出身なのでついひいき目に見てしまいますが(笑)それを差し引いても、力のある作品だと思います。絵の中に描かれた大仏、江ノ電、紫陽花なども、「地元のイチオシ」のテーマに沿った納得のチョイスです。

第4回「キャンパスアートアワード2018」激戦の末、グランプリに選ばれたのは…?

《石井栄子》

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