福地君が全日空機で帰国する際、機長の谷田邦彦さん(51)が機内アナウンスで祝福。それまでの記録は、谷田さん自身が1982年に打ち立てた15歳という記録だったことを明かすサプライズがあったことも、ニュースになった。今回の快挙をきっかけに、世界を目指せる競技として「オセロ」が注目されている。
オセロは日本発祥のゲーム
オセロは、日本ではほとんどの人が「一度はプレイしたことがある」というほど、日本人には馴染みがあるゲームではないだろうか。ところが、外国ではまだまだ知られていない。オセロは、実は日本発祥のゲームということをご存知だろうか。
考案したのは、長谷川五郎氏。1973年に長谷川五郎氏により「日本オセロ連盟」が設立、1977年からは世界オセロ選手権が開催され、今では世界選手権に30の国と地域から参加者が出場する大会となっている。とはいえ、歴代世界チャンピオンには日本人の名前が並び、日本は今なお、世界最強国だ。
覚えるには1分、極めるには一生
オセロの特徴といえば、やはり、シンプルなルールだろう。黒と白が交互に石を打ち、相手の石を挟むと、自分の石の色に変えることができ、最終的に石の多いほうが勝ち。オセロは将棋、囲碁などの盤上ゲームに比べ、ルールが簡単で、3歳ぐらいの小さな子でも楽しめる。
一方で、あまり知られていないのがオセロの奥の深さ。とにかく、最初からたくさん石を取っていけばいいと思われがちだが、実はそうではないのだ。勝ち負けは、偶然でも運でもなく、将棋と同じように名前が付けられた定石もある。オセロのキャッチコピーは「A minute to learn, a lifetime to master.(覚えるには1分、極めるには一生)」。
勝つためには、先を読む力、深い思考力、集中力が必要となる奥が深いゲームなのだ。途中まで優勢でも、後半で逆転されることもあるため、粘り強さ、メンタルの強さも必要だ。将棋や囲碁と同じように、級や段があるので、実力が上がっていくことを実感できるのが嬉しい。
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オセロ指導者に聞く「オセロが強くなるには」
では、オセロは、どうすれば強くなるのだろうか。日本オセロ連盟東京都本部長で、1999年世界選手権準優勝も果たしている中島哲也八段に、どうやってオセロがうまくなったのかを伺った。
中島八段は、4歳の誕生日に、お姉さんからオセロ盤を贈られたことがきっかけで、毎日のように、おばあちゃんとオセロを打っていたそうだ。幼稚園のころには、近所で開催されたオセロ大会で入賞。中学生のときには、全国大会に出場するも予選敗退。その帰りに、母親に「森田オセロ」というコンピューターオセロを買ってもらったことが転機となり、本格的にオセロに没頭したそうだ。オセロの本などでも独学した中島八段だが、「指導者がいたら、もっと効率よく学べたのに」という思いから、現在は、東京・品川で小学生向けのオセロ教室を開催。小学生グランプリなどで活躍する子どもたちを多く輩出している。
世界を目指すためには、何歳から始めるのが良いのか。中島八段は、「早ければ早いほど良い」という。4歳の子どもでも、先生の解説を理解して強くなっていくそうだ。オセロにも強くなる「素質」というのがあるのだろうか。
「ある程度強くなる子かどうかは、勘のよさ、飲み込みのよさでわかります。ただズバ抜けて強くなる子は、オセロが大好きで夢中になれる子。そういう子は、受け身の姿勢ではなく、自分でも強い人の棋譜を研究したり、オセロの本を読んだり、ネットで対局しまくったりするので、あるとき、そうした知識・経験がストンと腹に落ちて、グンと強くなります。」(中島八段)
本人が好きであることが一番大事。どんな習い事でも同じようだ。
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オセロで鍛えられるさまざまな能力。モテる子になる!?
もし、子どもがオセロにハマったら? 夢中になれることが見つかったなら、応援してあげたいものだ。しかし、強くなる子は、時間があればずっとオセロ…という。となると「そんなにオセロにハマって、大丈夫?」と不安になる親もいるのでは。そんな親のために、中島八段に、オセロが子どもにもたらす良い影響を聞いた。
「オセロがきっかけで、学校の成績が良くなることも珍しくないそうです。たとえば、オセロが強くなりたい一心で本を読み漁った結果、読解力や作文力が向上したり。オセロでは、定石を暗記する必要があるので、社会や歴史の暗記が得意になったり。さらに、自分が打つ手により局面がどう変わるか、全体から細部まで慎重に検討する必要があります。結果として「変化に敏感」になる。たとえば、奥様が髪を切ったとか、シャンプーを変えたとか、そういう変化も逃さなくなったり。」(中島八段)
変化に気づく…そんな男の子は、女の子にモテること間違いなしかもしれない。とても奥が深いオセロ。とはいえ、一番の魅力は、シンプルで楽しいこと。ぜひ、まずはご家族で楽しんでみてほしい。
(取材協力:日本オセロ連盟品川支部長・中島哲也氏)
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インタビュアー&ライター。兵庫県芦屋市出身。関西学院大学を卒業し、関西経済連合会・国際部に5年間勤務。結婚後は、ワシントンD.C、北京、東京を経て2018年夏からニューヨーク在住。ライターとして、会社役員からメダリストまで、約3年間で250人以上を取材し、企業パンフや専門誌等に幅広く執筆。現在もニューヨークで取材やライティングの仕事を続けている。インターナショナルスクールに通う男女2児の母。http://namazumiki.com