私立中高一貫校・全寮制名門校だらけの一流卓球選手

 2020年の東京オリンピックを1年後に控え、世界で活躍するスポーツ選手たちの姿を目にする機会が増えてきた。幼いころから活躍する選手たちはどのように育ってきたのだろうか。「世界卓球解説者が教える卓球観戦の極意」(ポプラ社)より、育成秘話を紹介する。

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 2020年の東京オリンピックを1年後に控え、世界で活躍するスポーツ選手たちの姿を目にする機会が増えてきた。幼いころから才能を伸ばし、小学生、中学生、高校生、大学生と選手生活を送りながら学業と両立し、頭角をあらわす選手たちはどのように育ってきたのだろうか。

 日本卓球協会常務理事、強化本部長、Tリーグ理事、前・JOCエリートアカデミー総監督、前・男子日本代表(ナショナルチーム)監督の宮崎義仁氏の著書「世界卓球解説者が教える卓球観戦の極意」(ポプラ社)より、日本の顔となる選手の育成秘話を紹介する。

日本の卓球選手の育成システム



 一流の卓球選手が辿るルートには、どんなものがあるだろうか。まず、幼少の早い時期からラケットを握り、地域の卓球クラブに通うことが多い。卓球クラブには「名門クラブ」と呼ばれるものが全国にあり、城山ひのくにジュニア(熊本)や、城山ジュニア(栃木)、石田卓球(福岡)、マイダス(埼玉・千葉・東京)などが有名だ。

 中学生からは、多くの選手は、私立の名門校と言われる学校でみっちり練習するが、そのほとんどが全寮制だ。今現在、トップクラスで活躍する選手で、中学時点で親元を離れていない選手というのはほぼ聞いたことがない。さらに中高一貫校が多いので、そのまま高校までの6年間を過ごすといったケースがほとんどだ。

 具体的には、愛工大名電(愛知)、遊学館(石川)、東山(京都)、明徳義塾(高知)、野田学園(山口)、希望が丘(福岡)などだ。大学になると、明治大、早稲田大、専修大、愛工大、中央大、日大、筑波大といったところが伝統校だ。

 大学卒業後は、日本リーグで実業団と言われるチームで社員としてプレー。男子は協和発酵キリン、東京アート、シチズン時計、リコー、女子なら日本生命(休会中)、サンリツ、日立化成、十六銀行、デンソーなどが名門として知られている。また、海外のプロリーグで生計を立てる選手もいる。

 この流れのなかで、各カテゴリのナショナルチームに選ばれ、日本卓球協会としての強化も行われている。

無名の選手が突然大活躍することはほとんどない



 現在トップで活躍している選手達は、ほぼ例外なく幼少時から卓球を始め、名門校に通う、というルートを辿ってきている。そういったルートを辿らず、中学生になって突然卓球を始めた子がある日突然試合に参加して、全国大会で好成績を収める、ということは卓球の場合まずあり得ない

 たとえば全国中学生大会であれば、予選までを数えると16万人の選手が出場する。16万人の中でチャンピオンになろうと思ったら、日々血のにじむような努力をして、さらに大舞台での心身が擦り減るかのようなメンタル勝負を何試合も勝ち抜かなければならない。

 また、卓球で無名の公立高校がインターハイ優勝というのは聞いたことがない。数年に一度、ベストに入るかどうか、というので精一杯だろう。

 それだけ小さいときから始めて早期に必要な練習を行うということが強くなるためには重要だということである。

一番背の低い子でも一番強くなる



 また、それまで全く別の競技をやっていて、卓球に転向して大成したという例もほとんどない。大島祐哉選手が陸上と卓球を両方やっていて、卓球専門になったという例はあるが、全くの卓球未経験者が転向して成功というのはまずない。卓球は肉体競技ではない。俊敏性と巧緻性という、神経系の能力がものを言う競技なのだ。1秒間に150回転するボールを、ラバーでぐっと抑え込む感覚。これは巧緻性というものだが、これは卓球をやっていないと絶対に身につかない感覚だ。他の競技で卓球のための巧緻性が鍛えられるなんていうことはないし、多少筋力が発達していようと、あまり役に立たない。

 卓球は、100m走が一番遅い選手でもチャンピオンになれる。むしろ、100m走が一番遅い選手から順に強くなるし、さらに言えば、一番背の低い子でも一番強くなるようなスポーツだ。

 なぜなら、背の低くて足の遅い子は、自分にリーチもなければ運動能力もないことを自身が最も分かっている。だから、なるべく無駄に動かずに済むように、卓球台から下がらずに前でへばりついてプレーをすることに徹する。卓球台から下がれば、ボールが地面に落ちるまでに時間があるので、返球する余裕が生まれる。ただし、下がれば下がるほど、広範囲をカバーしなければならないので、足の速さ、つまり運動能力が必要になってくる。

 逆に、運動能力のある選手は、自分が動けるので、台から下がりがちだ。下がると自分に余裕ができるが、打ち返したボールが相手コートまで届くのに時間がかかるので、相手にも余裕ができるということになる。そして下がっていると空いたスペースが大きくなり、そこを狙われて、また大きく動かないといけない、という悪循環に陥る。卓球台からは極力下がらない方がいい。

 背の低くて運動能力の低い子は卓球台の前から一歩も下がらず、高い打球点(ボールの跳ね返り)を保って良いテンポで、相手に時間の余裕を与えないように戦う。ただし前でプレーするということはそれだけ俊敏性が必要になってくる。だからこそ、12歳までの神経系を伸ばすことが重要なのである。

 では背の高い運動能力のある子は全く日の目を見ないかというとそんなこともない。高校生くらいになってパワーがつき始めた頃から、運動量とボールの威力で足の遅い子を抜き去っていく、ということがある。中国男子の許昕選手などはまさにそのタイプだろう。ただし、それで成功するには背の低い子たちよりは時間がかかるし、成功する例もそれほど多くない、というのが実状だ。

世界卓球解説者が教える卓球観戦の極意

発行:ポプラ社

<著者プロフィール:宮﨑義仁(みやざき よしひと)>
 公益財団法人日本卓球協会常務理事、強化本部長。一般社団法人Tリーグ理事。世界卓球解説者。前・JOCエリートアカデミー総監督。前・男子日本代表(ナショナルチーム)監督。
男子日本代表監督として、2004年アテネオリンピック、2008年北京オリンピック、2012年ロンドンオリンピックで指揮をとる。監督退任後は、強化本部長としての選手育成やTリーグの創設などに尽力する。テレビ中継のわかりやすい解説が評判で、「リオオリンピック」、「世界卓球」「グランドファイナル」などの解説を担当する。くわえて、「Going!」「上田晋也の日本メダル話」「中居正広の6番勝負」(以上、日本テレビ)「ビートたけしのスポーツ大将」「とんねるずのスポーツ王は俺だ?」(以上、テレビ朝日)などのメディア出演多数。


《リセマム》

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