神奈川公立【高校受験2020】これから取り組むべきは過去問、問題慣れを心がける

 神奈川県の公立高校入試の概要や特徴、受験本番までをどのように過ごすべきかなどについて、湘南ゼミナール 教務支援部 進路情報戦略室長の秋山清輝先生と、教務支援部 作成グループ グループ長の神谷漠先生にお話をうかがった。

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神奈川公立【高校受験2020】これから取り組むべきは過去問、問題慣れを心がける
  • 神奈川公立【高校受験2020】これから取り組むべきは過去問、問題慣れを心がける
  • 湘南ゼミナール 教務支援部 進路情報戦略室長の秋山清輝先生
  • 湘南ゼミナール 教務支援部 教務英語グループ グループ長の神谷漠先生
 首都圏の中でも難易度の高い問題が出題される神奈川県の公立高校入試。その概要や特徴、これからの受験本番までをどのように過ごすべきかなどについて、湘南ゼミナール 教務支援部 進路情報戦略室長の秋山清輝先生と、同じく教務支援部 作成グループ グループ長の神谷漠先生にお話をうかがった。

2極化の進む神奈川県の公立高校入試



--神奈川県の公立高校の入試について試験制度の概要を教えて下さい。

秋山1次選考、2次選考と分かれており、1次選考がメインで定員の9割が確定し、残り1割を2次選考で決める形になります。1次は当日の試験の点数のほか、内申点、面接、一部の学校はそれに加え実技、特色検査のある高校についてはその成績を加味して合格者が決められています。

 なお、2次は内申関係なく、当日の得点と面接、特色検査のあるところは特色検査の点を加味して決められる形です。
湘南ゼミナール 教務支援部 進路情報戦略室長の秋山清輝先生

--教育改革・大学入試改革の影響は神奈川県の高校入試にもおよんでいるとお考えでしょうか。

秋山神奈川県は全国に先がけ、「特色検査」という科目横断的な試験を導入しています。大学入試改革では「思考力」を問う問題を取り入れるということで、記述を課すことなどが検討されていますが、特色検査に代表されるような思考力を問う問題については神奈川県は特に力を入れていると考えられ、公立高校入試の問題としては全国で一番難しいのではないかと思っています。

神谷英語に関して言えば、これは近年の傾向として神奈川県の公立高校の入試問題の特徴なのですが、量がとても多い。あと、リスニングの配点が以前に比べ少し上がっており、今後も増えていくと考えています。それに加え、単なる知識の詰め込みでは太刀打ちできない問題というのも増えていると感じています。

秋山入試問題とは別のところでの影響というのは出ていると思います。大学では今後、AO入試や推薦など教科の学力以外の部分をアピールする入学選抜の枠を増やしていく方針だと思われます。ところがそうした試験への対応で進んでいるのは私立高校が多い。一方、近年では国や県から就学支援金なども多く出るようになってきました。

 となったとき、トップ校や人気校でなければ私立でいいよね、というご家庭が増えてきた。その影響で、公立の中堅校や下位校で定員割れを起こしており、2019年度入試の定員割れの学校数は近年最多となっています。

--すると近年の出願傾向はどのようになっているのでしょうか。

秋山神奈川の公立高校は2極化が進んでいると考えられます。人気のある上位校と、定員割れしてしまう中堅・下位校。これが最近顕著になっている傾向です。2020年度の入試でも同じような傾向が続くと見ています。

 そうした現状にある中「ホットスポット」というべき、倍率の高い学校があります。それが横浜市立、川崎市立の高校です。中堅校ではあるのですが、倍率が高い。理由としては、横浜市、川崎市というのは財政的に豊かな自治体のため学校の設備が整っている、新しい校舎のところも多い。あとは、先生がいいという噂ですね、この2つが人気を下支えしています。

 また、川崎市のように人口流入の多い地域の公立校は倍率が高くなり易く、多摩高校や新城高校は人気が出てきているように見えます。新城高校は上位校の中でも特色検査を行っていないため、今までも人気が高かったのですが、今年はどれだけの倍率になるのか注目している学校です。

 反対に、横須賀方面は人口が減っており定員ギリギリという高校も多い中、横須賀大津はちょっと抜き出てきたかなという感じがします。

 このほか、普通科の高校の中でも、たとえば授業力向上推進校、ICT教育推進校など特色のある学校の中で、そこをうまくPRできているところは人気が出る兆しがあります。

理科・社会は他県に類を見ない難しさ



--神奈川県公立高校入試の出題傾向について、特徴がありましたら教えて下さい。

神谷まず、神奈川県の公立高校の入試の傾向として言えるのは、すべての科目で量が多いということ。5教科の試験問題を全部合わせると、文庫本1冊ほどの情報量になると言われています。50分という限られた試験時間の中で膨大な情報を適切に処理し、回答していくことが必要とされます。

 その中でも特に社会が難しいというのはホットな話題といえるでしょう。公立の学校の入試なので教科書の範囲外の内容は出ないのですが、選択肢の作り込み方や地歴公民が融合された内容だったりと、塾講師としても「こんなに上手に問題を作るんだ」と感銘を受けるくらいです。

湘南ゼミナール 教務支援部 作成グループ グループ長の神谷漠先生

秋山私は社会を教えていますが、記述問題よりも選択問題のほうが難しいと思っています。他県の多くのところでは選択肢は4択が多いかと思います。4択ですと2つまではある程度絞れるものなのですが、今の神奈川の社会の問題の選択肢は8や12もあるのです。きちんと理解をしていないと正解を導けない。だからかなりレベルの高い作問だと思います。

 こうした傾向が顕著になったのが、2年前の2018年度からです。社会の平均点が100点満点中41.8点だったこともあり、神奈川県の教育関係者の間に衝撃が走ったのも記憶に新しいところです。社会だけでなく、理科でも同じような傾向の問題が出題されるようになり、難易度がぐんと上がりました。

神谷理科・社会は暗記で勝負できるから、ある程度の時期からラストスパートをかければいいという時代ではもはやなくなっています。理科も、細部まで完全に理解していないと解けないような出題が見受けられます。ただし昨年度(2019年度)は理科の平均点は上がりはしたが、今年は簡単ではない、と我々は見ています。

 ただ忘れないでいただきたいのは「教科書の範囲外からの出題は絶対にない」ということ。教科書をしっかり勉強すれば、わからない問題はなくなるはずです。

気になる内申点と合格判定



--内申点は合否判定にどれくらい影響するのか教えて下さい。

秋山内申点と入試得点の比率は、横浜翠嵐は当日試験の割合が高く2:6と振り切っています。しかし4:4もしくは3:5のところが多く、残りは5:3。この3パターンで9割方を占めます。上位校ほど得点重視と思って間違いありません。

 この内申点ですが、中2の学年末の内申点と中3の12月の内申点の2倍、合わせて135点満点の数値を「A値」といい、それに入試、面接、特色検査の得点を足した「S値」で入試の合否が決まります(1次選考の場合)。

 しかしS値に換算するときに、横浜翠嵐のように比率が2:6だと、A値の1ポイントは入試得点の1点や2点にしかならない。通知表の成績を4から5に1つ上げるのはとても大変ですが、それが入試当日の得点ですぐに追いつけてしまうのですね。1~2点ですと漢字1問程度の差です。これが比率5:3の学校だと、A値1ポイントが入試得点の5点くらいになってしまいます。ですので、この入試制度は自分の強みを生かした受験ができるもの、と言えます。

神谷とはいえ進路決定の際は、行きたい学校を「比率」で選ばないでほしいです。その学校に行きたい根拠というのは必ず見つけられるはずで、それがあるからこそ勉強も頑張れるものです。志望動機が大事ではないでしょうか。

 また、中3の夏まで部活に打ち込んだ子というのも塾生には多いですが、それまで部活に打ち込んできた子というのは対象が部活から勉強に変わるというだけ。だからそういう子たちはこれからの時期に強い、と感じています。

思考力が問われるという入試問題、対策は?



--特色検査とはどのようなものなのでしょうか。

神谷科目の融合された内容というのが一番わかり易いと思います。ただし、これまでは「学校独自」に作成していた問題でしたが、昨年度から「共通特色」という形に変わったことで、科目試験に内容が寄った印象があります。

秋山たとえば、特色検査導入期の4~6年前は、古文が英語で書かれていて、それの論理的矛盾を答える、といったような問題だったり、楽譜を数学で解くといった問題があったりで、科目が融合しているという感が満載の出題でした。非常に難しく、横浜翠嵐や湘南レベルの子でも点数がなかなか取れないものだったんです。

 そもそも特色検査導入前の神奈川県の5教科の問題はそれほど難しくなかったので、差をつけるためにこうした難しい問題を作りはじめた面があったと思われます。それが5教科の問題が難しくなり差が出るようになったこともあり、特色検査でそこまで難しくしなくても良いのではないか、という考えが働くようになったために、特色検査が易化したとも考えられます。

--では、特色検査のある学校を志望しているお子さんは、どのような対策を取るべきでしょうか。

神谷これからの時期は多種多様な問題に触れておくことが大事です。どんな変化球が来るかわからないので、ほかの都道府県の問題に触れておくのも良い経験になると思います。

 大切なのはとにかく基本をしっかりと身につけること。受験生でまだ何も対策をとっていないとしたら、今すぐにでも2019年度の過去問を解いてみましょう。さまざまな問題を解いて問題慣れをすること。「経験値を積むこと」が大事かなと思います。

 中2以下のお子さんでしたら、対策は早ければ早いほうが良いでしょう。でも、思考力だけを鍛えればいいのではありません。知識があることが前提での思考力を問う出題ですので、やはり日頃の勉強をしっかりとやりつつ、時間をかけて「思考する方法」を身につけるべきと思います。

秋山今後は傾向が変わるかもしれませんが、今までの経験から、5科目の偏差値に比例しづらいのが特色検査の問題でした。自分で興味を持って問題文を読み、考え、自分の言葉で表現をするところを得意としていない子は、たとえ偏差値が高かろうがなかなか点数が取れないという特徴があるのです。テクニックだけではうまくはいきません。

神谷傾向として、読書が好きな子は特別な対策をしていなくても、特色検査の問題を解ける子が多いと感じています。過去の教え子に、5科の試験はずば抜けて点を取るわけではない生徒がいました。内申点もそれほど高いわけではなかったけれど、横浜翠嵐に受かった子がいました。この子は読書が好きで、もともといろいろと考えることが好きなタイプの子だったんだろうと思います。だから試験の問題もじっくり読んでそれを楽しんでいました。こういうタイプの子は特色検査に強い「特色型」と言えるのではないか、と思います。

秋山確かにいますね、特色型と言えるような子が。だから早いうちから対策というのは難しいと考えられるかもしれませんけれど、早期であれば自分の好きなことに打ち込むとか、興味の幅を広げるとか、そういうものも特色対策と言えると思います。

受験本番を迎える受験生と保護者へのアドバイス



--2020年度入試に特徴的なトピックスはありますでしょうか。

秋山入試制度自体は大きな変更点はありません。しかし今年度は、学力筆記型の特色検査を行う学校数が過去最大で、約20校で行われます。

--私立高校の併願をする受験者がほとんどかと思われますが、どのような対策が必要でしょうか。

秋山神奈川の私立併願校の場合は「併願確約」という制度があります。ですので極端なことを言えば、普段から内申対策をしっかりと行ってさえいれば大丈夫と言えます。

 しかし、オープン入試で受ける場合、確約はありません。また東京の私立を併願する場合は「併願優遇」という、確約ではない形です。これらの受験を考えている場合は過去問を解くなど準備が必要です。このあたりは学校によって度合いが異なるので、学校や塾の先生に相談すれば安心できると思います。

 ただ、私立は学校ごとに特徴がまったく違います。入ってから「こんなはずじゃなかった」と思わないよう、点数ありきで併願先を決めるのではなく、実際に説明会などに参加してみる、塾の資料を見ておくなど、下調べをしてから決めたほうが入学してから充実した高校生活を送れるはずです。

--これから受験日その日までラストスパートをかける受験生と、保護者へのアドバイスをいただきたく思います。

神谷苦手分野を切り捨てるという感覚は、これから先どこかのタイミングでは必要になってくるとは思います。でも今はまだそのときではありません。年明けの1月くらいまではすべての分野に取り組むべき、と思います。

 とはいえ、「自分ができないこと」に目が向いてしまいがちになると焦りに繋がります。すると焦燥感から勉強に集中できなくなることもあり、良いことはありません。そんなときほど、「自分にできること」「こんなときには自分はできた」といったことに目を向けてほしいのです。すると、「ここができるんだから大丈夫」という自信に繋がります。

 それは保護者の方にも同じことが言えると思います。できないところに目を向けるのではなく、できたところを認め、最後の最後はお子さんのすべてを受け止めてあげてほしい。「よく頑張っているね」と声をかけてあげてほしいんです。

 親御さんがそう言ってあげるだけで、お子さんの心理面は違ってくると思います。特にお子さんが男の子だと「うるさい」なんて言われるケースもあるかもしれないですけど(笑)、最終的にはお子さんは声をかけてもらうことをうれしく感じているはずです。

秋山日々、些細なところでも「やればできた」という成功体験を積み上げていってほしいと思います。その経験が受験では重要だと考えるからです。そしてそれは希望にも繋がると思っています。

 学力の図り方は沢山あります。模試1つとっても、母数が違えば簡単に偏差値は上下します。また、最終的に合否というのは、倍率やその学校を受ける子たちとの相対的な力関係で決まってくるものなので、本人がいかに努力してもどうしようもない場合もあるのです。

 そして、できないことに目を向けがちになっても、1年生2年生の頃と3年生になった今の自分とを比較すれば、確実に成長しているところがあるはずです。苦手な科目でも手をつけるようになった、宿題を提出するようになったとか、できなかった部分を解き直すようになった、複雑な条件を図表で整理するようになった、など、高校に入ってからの生活にも繋がるような習慣は、どの子もこの1年間で大いに違ってきたはずです。

 入試は結果に目を向けがちになりますが、それよりも入試を通じて自分やお子さんが「成長できた」と感じることができれば、それは良い入試だったといえるのではないでしょうか。

 ですから「やればできた」を1つでも多く経験し、「自己肯定感」や「自己効力感」というべきものを積み上げてほしい。それが人間の成長する過程で、このあたりの年齢の子にもっとも重要なことと考えるからです。高校受験を通じ、合否を超えた「成長」のところを見てあげてほしいと思います。

--ありがとうございました。

 受験生にとってはいよいよこれからラストスパートの時期を迎える。自分が「できたこと」を自信に変え、決して焦ることなく、着々と力をつけて入試本番を迎え、身につけた力をいかんなく発揮してほしい。

冬期講習



 湘南ゼミナールでは小中部の「冬期講習」を受け付けている。また、湘南ゼミナールが初めてのお子さまは冬期教材教材費とテスト費のみで12月授業と冬期講習を無料で受講できるキャンペーンを実施。このほか、小学生限定で、冬期体験後の1月に入会すると1月の授業料が無料となるキャンペーンも行われる。

対象:小4生~中3生
・12月授業:2019年11月26日(火)~12月21日(土)
・冬期講習:2019年12月26日(木)~2020年1月6日(月)
※教室により満席になる学年などがありますので、お早めにお問い合わせ下さい
《鶴田雅美》

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