「アクセサリーのようにファッションと合わせることで、自分らしさを表現してほしい」という思いが込められたKOKUYO MEのテーマ「Life Accessories」。取材時には、おふたりにご自身の洋服とKOKUYO MEをコーディネートしていただきました!


海外のトレンドを取り入れた文房具を試作
--KOKUYO MEの企画が始まったのはいつ頃で、どのような経過で発売まで進んできたのでしょうか。
府川:まず、コクヨ全体の今後の展開として、トレンドを捉え、改めてCMF(※)にこだわったモノづくりを文房具で実現していこうという方向性がありました。そういった流れのなか、フランス・パリで行われたメゾン・エ・オブジェというホームプロダクツの展示会を僕たちで視察することになったんです。そこで海外のリアルなトレンドを収集して、帰国後、現地で得たヒントをもとにしたプロトタイプを作って社内で発表したところ、その反響がかなり良くて。ユニセックスカラー、アクセントになる素材使いなどを取り入れて、まずはドットライナー(テープのり)やノートといった基本アイテムを試作したんですが、もうこれは製品化できるんじゃないかという社内の声に後押しされる形で開発がスタートしました。
(※)モノの表面を構成する3要素(COLOR:色、MATERIAL:素材、FINISH:仕上げ)


徹底したブランディングと独自のプロモーション展開
--第一弾として、ノートやペン、テープのりなど、アクティブワーカーが持ち歩いて活躍する機能を持った10アイテムがラインナップしています。開発にあたって苦労したこと、うれしかったことはありますか。
藤谷:苦労とは感じませんでしたが、とにかく忙しかったですね。社内でプロトタイプを発表したのが昨年(2018年)の12月。翌1月には商品化に向けて動き出し、そこから今年8月のコクヨメッセに向けて製品化を目指したので、実際の開発期間は半年もなかったくらいです。通常、ひとつの商品を開発するだけでも半年では短いのに、シリーズ化してイチから商品化するというのは…鬼のようなスケジュールでした(笑)。
府川:KOKUYO MEは「Life Accessories」をコンセプトに、文具を単なる道具ではなく、持つ人が自分を表現するためのアクセサリーとしての新たな価値を提案しています。プロモーションや営業担当が意図するような、“幅広く、どんな人にも使ってもらいたい”というものから少し見方を変えて、ミレニアル世代、ゼニアル世代に象徴される流行感度の高い方に届けたいという思いがありました。製品化にあたって、そこで食い違いが生まれないように、ブランディングを整理し、めざすものを共有していけるように社内での話し合いを重ねました。
藤谷:プロモーションも、これまでとは違うやり方に挑戦してみたんです。KOKUYO MEのキービジュアルとして人物モデルを使っていますが、人の顔が出てしまうとイメージが限定されるとか、ファッション的なことを文房具でやっても難しいのでは…というような消極的な考え方も正直あったのですが、理解を得られるよう話し合いました。
府川:ブランド名もKOKUYO MEですし、「自分と合わせる」というコンセプトなので、人を使うというのは自然なことだな、と確信していました。これまで文房具がファッション系のメディアに取り上げられることはあまりなかったんですが、女性ファッション誌の方からも注目してもらえたのはうれしかったですね。
藤谷:販売店でも、文房具ではないアイテムといっしょに陳列されたり、スタイリストにファッション小物と合わせたシーンを提案してもらったり。「アクセサリー感覚で文房具を選んでほしい」というコンセプトが受け入れられた、販売側の意識までも変えられたこともうれしいです。さまざまな試行錯誤を経ながら、最終的には思っていることが伝わったという実感があります。


若い世代にもコクヨを知ってほしい
--「KOKUYO ME(KOKUYO ME)」という名前はどのように決まったのでしょうか。
府川:「自分らしい組み合わせを選べる」というコンセプトだったので「ME」という名前はイチ押しでした。もうひとつの狙いとして、じつは「キャンパスは知っていてもコクヨは知らない」というように、若年層のあいだでのコクヨの認知度が低いという課題があったんです。企業名を使うことで、若い世代にコクヨを知ってもらうこと、知っている人にはさらなる信頼感を得てもらいたいという思いもありました。
藤谷:今回、紙製品、筆記具、貼る、持ち運ぶといった文房具の用途すべてを網羅していているのもポイントです。文房具の総合メーカーとして、これだけのシリーズを一度に作れるのはうちだけという自負もありましたから、社名を使う案というのは当初からありました。ただ、社名をブランディングした商品の場合、普通は企業ロゴを入れますよね。KOKUYO MEは、デザインに合わせてロゴもオリジナルのものを入れています。このあたりのこだわりは、社長にも思いを伝えて理解してもらいました。
自分の持ち物とのコーディネートを楽しんで
--KOKUYO MEのここをみてほしい、ここがポイントというところを教えてください。
藤谷:ブランディングの打ち合わせの中で「赤い服は着られないけど、赤いマウスは持てる」という例え話が挙がり、文具って新しい色やデザインにチャレンジしやすいんだと、僕自身も改めて気づきました。気軽に、自分らしさを表現するひとつの手段としてKOKUYO MEを選んでほしいという思いがあり、さまざまな組み合わせをしやすいようにデザインを統一しています。
府川:アクティブワーカーをターゲットにしているので、持ち運べる機能性も重要。ノートも、B5よりもひと回り小さいA5サイズ、テープカッターもコンパクトサイズに、ペンケースもスリムさを重視しています。

「ちょっと個性的に見える」色、素材、仕上げへのこだわり
--眺めているだけでも楽しくて、選び甲斐がありますね。色や素材については、どのようなこだわりがあるのでしょうか。
府川:まず「COLOR」へのこだわりですが、「TOFU WHITE」「GRAYISH BLACK」「SMOKY SKY」「GOLDEN GREEN」「SHELL PINK」「CHIC PLUM」、どの色を組み合わせてもマッチする色合いを6種類選びました。セレクトのポイントは年齢や性別でターゲティングしない、男性も女性もどちらの色も選べるユニセックスカラー。落ち着いた色合いを意識し、ピンク色も、オレンジ味を入れることでガーリー感を減らし、男性も選びやすいようにと考えています。
藤谷:リングノートのリング部分にも色が付いていて、ノートを開いたときでもオシャレなんです。消去法で色を選ぶのではなく、どの色を選ぼうか組み合わせに悩んでほしいですね。SNSの投稿でも何色かを複数買いしてくれる人もいて、自分たちのコンセプトが伝わっているんだな、とうれしくなります。

府川:「MATERIAL」(素材)は、シンプルになり過ぎない様、アクセント効果を狙った使い方をしています。ノートブックの背クロスやペン先等の金属色に、トレンドカラーのカッパー(銅)色をアクセントとして使っています。実は新たに色を起こすことが難しい部材もあったのですが、多くの方に尽力頂きこのアクセントカラーを実現できました。
FINISH(仕上げ)は、素材の安っぽさから如何に脱却できるかを意識しています。高光沢のツヤ仕上げはいっそう色を鮮やかに見せる効果を狙い、細かいシボは手に吸い付くような触り心地を狙っています。ノートの表紙も一見、立体的に見えますが、触ってみると平面。これは疑似エンボスといって質感や柄が層に見えるように工夫することで色に奥行きを出しています。
チャレンジの先駆けになれたらうれしい
--最後に、KOKUYO MEの展望を教えてください。
府川:これまでコクヨは、道具としての文房具の価値を高めるような機能面でのチャレンジはたくさんしてきました。そのベースがあったうえで、魅せる、コーディネートするなど「ACCESSORY」としての価値を提供していくのがKOKUYO MEです。素材やテクスチャー、仕上げプロセスなどにおいても、もっといろいろなチャレンジをしていきたいですね。
藤谷:今後も、常にそのときのトレンドを追いながら、デザインやアイテムを追加・入れ替えて展開していきたいと思っています。常にお店で新鮮に見えることが大切ですから。また今回、デザインからロゴ作り、商品名、色選び、プロモーションまでのアートディレクションが一貫してできたという達成感もあります。僕たちのような若手の感性でチャレンジできるんだ、売れるんだ、という社内のモチベーションアップにもつながればと思っています。

--ありがとうございました。
現在、KOKUYO MEシリーズは店頭限定で販売中。その理由は、「色や質感といったデザインを実際に見て、アイテムを組み合わせることの楽しみを体感してもらうため」。コクヨのデザイナーや開発者のこだわりが詰まったKOKUYO MEを日々のスパイスとして取り入れて、自分らしさを表現してみてはいかがでしょうか。