遠隔授業で制限となる著作権、国立大が文化庁に対応要請

 東京大学など国立7大学と国立情報学研究所は2020年3月31日、文化庁に対し、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた 「授業目的公衆送信補償金制度」の早期施行について要請。オンライン遠隔授業の加速のため、迅速な対応を求めている。

教育ICT 先生
 東京大学など国立7大学と国立情報学研究所は2020年3月31日、文化庁に対し、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた 「授業目的公衆送信補償金制度」の早期施行について要請。オンライン遠隔授業の加速のため、迅速な対応を求めている。

 国立大学法人は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、学生の安全を最優先として確保するとともに、教育機会の提供においては学生の不利益にならないよう対面授業に代えてオンラインでの遠隔授業を実施することとし、そのための準備を全力で進めている。オンライン遠隔授業では、講義用資料の著作権による制限が大きな問題となる。2018年5月の著作権法改正により、公布日から3年以内に授業目的公衆送信補償金制度が開始され、補償金を支払うことで著作権者等の許諾を得なくても授業目的の公衆送信が可能となる予定だが、3月の時点ではまだ施行されていない。そのため、現状では授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)が著作権や著作隣接権を管理する著作物を教材として公衆送信する場合は、著作権者等の許諾を得る必要がある。

 SARTRASは、新型コロナウイルス感染症が及ぼす影響などを鑑み、3月5日に「新型コロナウイルス感染症対策に伴う学校教育におけるICTを活用した著作物の円滑な利用について」を発表。緊急措置として特別に配慮し、ICTを活用した著作物の円滑利用については可能な限り協力することを表明している。

 北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の国立7大学と国立情報学研究所による要請は、今回のSARTRASの配慮はあくまで緊急避難的な措置であり、一刻も早く2018年の著作権法改正による「授業目的公衆送信補償金制度」を教育現場の窮状を踏まえた形で利用できるようにすることを求めるもの。

 文化庁に対しては、至急、授業目的公衆送信補償金制度の施行期日を定める政令を制定することに向けた準備や、補償金額の認可に関する手続きを進め、2020年4月中から正規の利用を可能とすることを強く要請。また、文化庁とSARTRASに向けて、諸事情を勘案しての迅速な対応を要望している。
《黄金崎綾乃》

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