学校再開、親ができる4つのポイント

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除され、少しずつ元の生活へ戻りつつある。学校も長い臨時休校が終わり、再開し始めている学校が増えている。学校再開にあたり、親の立場から子どもの育ちや学びのためにできることは何だろうか。

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学校再開にあたり親ができることを鈴木邦明氏に聞いた(画像はイメージです)
  • 学校再開にあたり親ができることを鈴木邦明氏に聞いた(画像はイメージです)
 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除され、少しずつ元の生活へ戻りつつある。学校も長い臨時休校が終わり、再開し始めている学校が増えている。学校再開にあたり、親の立場から子どもの育ちや学びのためにできることは何だろうか。

 神奈川県と埼玉県で計22年、小学校教諭として教壇に立ち、クラス担任として豊富な経験があり、現在は大学で教員養成、保育者養成に携わっている鈴木邦明氏に、学校再開にあたって保護者が留意したいポイントを聞いた。

学校の休校・再開は、地域差・学校差が大きい



 今回の新型コロナウイルスの流行による学校の休校、そして再開は、それぞれの子どもの置かれている状況によって違っています。地域によって流行のタイミングが大きく違っていました。もっとも早く流行が始まったのは北海道でした。感染者数が多かったのは東京都でした。結局、現時点まで感染者が出ていない岩手県もあります。このように地域によって流行に濃淡があったことが子どもの生活に大きく影響を与えました。

 学校の対応に関しても地域差、学校差が大きいものでした。今回の休校が2月の末から5月までというタイミングであったことも、さまざまな違いが出たことに影響を与えています。年度末、そして新年度は、子どもの進学、進級と共に教職員の移動のタイミングでもあります。今回は、タイミングの難しさもあり、当初はあまり計画的な宿題が出されていない学校が多かったようです。4月の末から連休明けには、逆に大量の宿題が出される学校が多かったです。これは文科省が休校の長期化を踏まえ、家庭学習を授業時数としてカウントができるという通知を出したこととも関連があります。その通知では、家庭学習が計画的、意図的になされている場合は、授業時数として捉えても良いというものでした。その結果、時間割に細かな課題の指示が書かれたものが配布された学校が多数ありました。そのうえ、「宿題は評価の対象になる」と書かれており、SNS上では保護者の悲鳴のような言葉が多数見られました。

 また、熊本市や渋谷区のように今回の休校以前からタブレットなどの機器の導入を積極的に進めていた自治体では、休校になってもスムーズな形でオンラインでの授業が始まっていました。一部の私立学校も同様でした。

親ができる具体的なこと その1:生活リズムを整える



 学校が再開されるにあたり、親として大事にしたいことは「生活リズムを整える」ことです。家庭によっては子どもの生活リズムが乱れてしまっている場合もあると思います。それを整えていく必要があります。その際、注意すると良いのが、学校が再開されても登校をしない日の過ごし方です。登校する日は、少し眠くとも、決められた時間に起きてくる子どもが多いと思います。そのような学校に行っている時のリズムを学校に行かない日にも続けていくと良いでしょう。学校へ行かない日は少し起きる時間を遅くしてしまうとそれを戻すのが大変になります。そういったことを繰り返すと、身体的にも精神的にもストレスが発生します。一度、学校に行くようになったら、そのリズムを維持することが、子どもにとっても親にとっても負担が少なくなるでしょう。

 また、学校に行った日、特に初日は子どもの疲れも大きなものになることが予想されます。学校まで歩いていくことで体力を使いますし、久しぶりに友達などに会うことは嬉しいことである反面、色々と気疲れもあります。疲れているのですが、帰宅後には、できるだけ昼寝をさせないように意識をしたいです。昼寝をしてしまうと、夜に寝る時間が遅くなってしまいます。それが生活リズムを崩すことにつながります。私は小学校の教員をしていた頃、長期休業明けの初日には「早寝早起き、昼寝をしない」という宿題を出していました。生活リズムを整えることは子どものさまざまな活動の質を良いものにしていく上でとても重要なことです。

親ができる具体的なこと その2:学習の理解度を把握する



 学習内容の理解の現状を把握することも早めにしておきたいことです。休校の間、家庭での学習のようすはある程度把握していると思います。それがきちんと身に付いているのかどうかを把握するようにしたいです。これは、学校の教員も同じことを考えています。それぞれの子どもの学習の状況を最初に確認をするはずです。それぞれ子どもの理解の状況の把握ができないと次に打つ手を考えることが難しいからです。

 家庭においては、学校が再開する前後で、子どもの学習の理解度の把握をすることをお勧めします。学校が再開したら、そういったことを学校の教員と共有できる事が望ましいです。学校でも先ほど書いたように理解度の確認テストのようなものはするのですが、クラスにおいてはたくさんの子どもに対応する必要があります。そういった中で、それぞれの子どもの状況の把握が十分にできていない場合もあります。家庭で把握できている状況を情報提供し、学校側が把握しているものを教えてもらう事で、今後の学習における方向性が見えてきます。

 その際、特に注意すべき教科は「算数」です。「算数」は学習の積み重ねが他の教科以上に大切になります。一桁同士の引き算が理解できているから二桁同士の引き算を理解する事ができます。九九が理解できているから二桁×二桁の計算をする事ができます。このように積み上げが大切な教科なので、どこかの部分が抜けてしまうと後々の学習で支障が生じることになります。今回の休校では、子ども達の学習理解に差が出ていることが予想されます。学校だけでなく、親もそういったことを意識して取り組んでいきたいものです。

親ができる具体的なこと その3:無理をさせない



 「無理をさせないこと」も親にとっては大事なことです。子どもの自殺は通常の年では、夏休み明けに多いという統計があります。約1か月の休みである夏休みでも、それが終わることは子どもにとって精神的な負担となる場合があります。今回は、場合によっては約3か月の間、学校がなかったことになります。子どもによっては精神的不安が大きくなっているケースもあると思います。

 こういった状況では、できるだけ子どもの不安を聞いてあげたいものです。「勉強が嫌だ」「朝起きるのが大変だ」などの理由が多いと思います。特に気を付けたいのが「感染を恐れている子ども」です。ニュースなどの報道によって、世界中でたくさん人が新型コロナウイルスに感染し、多くの人が亡くなってしまっていることを子どもたちも知っています。新型コロナウイルスは目に見えないものなので、どれだけ手洗いやマスクなどの対策をしても、それで万全ではないことも年齢によっては、理解できています。そういった子どもが、人がたくさん集まる学校、学級行くこと、そのために電車やバスに乗ることを恐れているということは十分考えられます。丁寧なケアが必要でしょう。

親ができる具体的なこと その4:長期戦であることを意識する



 今回、少しずつ学校が再開されていきます。長かった休校が終わり、子どもが学校に行き出すことで、ほっとする親も多いかもしれません。ただ忘れてはならないのは、今回の新型コロナウイルスへの対応は「長期戦になる」ということです。現時点でも第二波の広がりが疑われ、対応に苦慮している自治体もあります。どこの地域であっても、今後、特に秋から冬にかけて再流行があるのではという懸念があります。

 少しだけ落ち着きつつある今の時期に、先を見通して親としてできることは何なのかということを考えておくことは大切なことだと思います。それぞれの家庭で今回の休校期間を振り返り、購入しておくと良いものをリストアップしたり、感染のリスクを下げる生活のあり方を考えたりしておくことが良いでしょう。今回の休校は、2月の末に前触れもなく、急に始まったものでした。その時とは違い、秋、冬の流行に向けての対策は、少し余裕を持って取り組む事ができます。備えるものは、それぞれの家庭で少しずつ違ってくるでしょう。万全でなくとも、ある程度の準備ができていることで、再流行時の対応に大きな差が出てくるでしょう。

 今回、学校再開についていくつかの視点でまとめました。先ほども触れたように今回の状況は多く人が初めて経験しているものです。それは子どもにとっても、学校(教師)にとっても同様です。子どもに関わるすべての人が、そういった状況において、より良いものは何であるのかという真剣に考え、共有していくことが大切なのだと思います。そういった1つ1つのことが新しい教育のあり方を作り上げていくのだと思います。第二波、第三波が心配をされています。日本に、世界に、穏やかな日々が戻ってくることを心から願います。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
平成7年 東京学芸大学教育学部 小学校教員養成課程理科専修卒業。平成29年 放送大学大学院文化科学研究科生活健康科学プログラム修了。神奈川県横浜市、埼玉県深谷市で計22年、小学校教諭として勤務。現場教員として子どもたちの指導に従事する傍ら、幼保小連携や実践教育をテーマとする研究論文を多数発表している。こども環境学会、日本子ども学会など、多くの活動にも関わる。平成29年4月からは小田原短期大学特任講師、平成30年4月からは帝京平成大学講師として、子どもの未来を支える小学校教諭、幼稚園教諭、保育士などの育成や指導に携わる。
《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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