また同アンケートの分析では、経験者であっても63.3%がプログラミング教育に対して「不安を感じている」とされる。その他の質問回答からも、学習到達目標の設定や、教材・サービスの選定、授業の進め方や指導方法の決定も十分には進んでいない状況がうかがえる。

そうした状況に加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大により、教育現場は混乱に陥ることになった。昨年度終盤から休校措置が取られ、その後の緩和も自治体の判断に委ねられた。そのため、今なお休校期間のしわ寄せを抱えている小学校が多いのが実情だ。
しかしその状況下でもプログラミング教育をスタートさせることができる方法がある。それが民間サービスの活用、そして民間企業との連携だ。先日リセマム編集部が取材した東京都八王子市のプログラミング教育もその一例で、同市はLINEみらい財団が無償提供しているプログラミング学習プラットフォーム「LINE entry」を、全市立小学校70校の4年生の授業において採用することを発表している。混沌とした昨今の教育現場において、民間企業の提供するツールやサービスは救世主ともいえよう。
導入ハードルを低く…充実のパッケージを無料提供
プログラミング学習プラットフォーム「LINE entry」は、子どもが楽しく学べる仕掛けはもちろんのこと、プログラミング教育を初めて導入する先生向けのサポートが充実しているという点で、教育現場に導入しやすく設計されている。
LINE entryは、
●プログラミング学習環境としてのオンラインプラットフォーム
●文部科学省の学習指導要領に基づいたオリジナル教材
●LINE entryオフィシャルインストラクターによる児童への出前授業、および先生方へのシミュレーション出前授業
の3つで構成されているのが特徴だ。
LINE entryはプログラミング教育の現場の声を反映しながら放送大学や千葉大学といった学術機関とLINEによって共同で開発され、LINEのCSR活動の一環として2019年12月に設立されたLINEみらい財団から無償で提供されている。使用するプログラミング言語は、マサチューセッツ工科大学で開発された「Scratch(スクラッチ)」を参考に独自に開発されたビジュアル型プログラミング言語だ。

オリジナル教材3点セット…そのまま授業に使えるスライドも
LINE entryが提供するオリジナル教材は、
・授業で使うスライド
・児童に配るプリント
・指導者用ガイドブック
の3点セットで、公式サイトから単元ごとにZipファイルで一括ダウンロードできる。

教材それぞれ小学4年から6年までの推奨学年別にレベル分けされているため、初めてプログラミング教育の授業を実施する先生も、順を追って段階的に授業を進行できる。教材の種類は順次拡充していく予定だ。

プログラミング初心者を全面サポート…授業の進め方も丁寧に解説
教材の一例を紹介しよう。小学校4年生の算数「プログラミングで角をかこう!」は、角の単元で学んだ「角の大きさ」「角のかき方」を生かし、子どもたちは授業の中のプログラミング体験を通していろいろな角度を作図する。角の大きさについて関心をもち、角の大きさについての感覚を豊かにするのが狙いだ。
これらの狙いや準備するもの、進行例などは「指導者用ガイドブック」にわかりやすく解説されている。進行例には、授業の時間配分や指導ポイントの記載もあり、児童の理解度や進捗時間応じた授業の進め方が提案されている。

授業は教材に含まれる「スライド」にそって進める。LINE公式キャラクターから届くメッセージと対話するかたちで進行するストーリーにオリジナリティを感じる。

子どもたちには楽しさを、先生には安心を提供する「出前授業」
LINEみらい財団では、LINEが認定するプログラミング教育のLINE entryオフィシャルインストラクターによる「出前授業」の申込みを受け付けている。新型コロナウイルスの影響により現在はオンラインによる遠隔授業だが、今後については状況を見ながら検討していくという。
出前授業は、児童向けの授業と、先生向けのシミュレーション授業の2つ。事前申込のあった全国各地の学校に対し、それぞれ提供している。
出前授業の遠隔実施にあたっては、担当の先生とともに事前に接続テストを行うほか、先生に実際にLINE entryを体験してもらいながら基本操作を事前に説明するなど、準備段階から連携を図る。プログラミング教育やオンライン授業の実施経験のない先生も不安を感じることのないよう、丁寧にサポートを行い、本番の出前授業に臨む流れだ。

悩みやノウハウを共有できる「プログラミング教員コミュニティ」発足
LINEみらい財団では「プログラミング教員コミュニティ」を2020年4月に発足。全国各地でプログラミング教育を推進する小学校教員等27名が、月に1回程度オンラインで情報を発信、共有している。最新の話題や各教員の知見、実践例を知ることができる貴重な機会だ。このプログラミング教員コミュニティは現在も参加者を募集している。
また、LINEみらい財団では2020年11月8日、これからプログラミング授業に取り組む先生に向けて無料オンライン講座「授業実践から学ぶ小学校プログラミング授業」を開催する。

教材開発にも携わった千葉大学教育学部附属小学校の小池翔太氏がLINE entryを使った実践授業とポイント解説を行うほか、全国各地のプログラミング教員コミュニティメンバーによる意見交換や、オリジナル教材の紹介も行われる。
本イベントは「日本の小学校プログラミング教育の授業準備をしっかりフルサポートし、教員の皆様の不安を解消したい」との思いから開催する。これから取り組む方や、取り組みに不安を感じている方は、参加してみてはどうだろうか。
締切りは11月5日で、事前申込制。オンラインにて開催。教員・学校関係者のほか保護者など、プログラミング教育に関心がある方は誰でも無料で参加できる。
無料オンライン講座への参加申込はこちら