マンガの聖地「トキワ荘」があったことで知られる豊島区は、マンガを生かしたにぎわいを創出するイベントを多数開催している。11月はそんなイベントが目白押しだ。
11月5日には、「トキワ荘のまち マンガビブリオバトル」や「マンガ教室『マンガのチカラ』」などのイベントが催され、トキワ荘があった椎名町、東長崎付近には多くの人々が集まっていた。
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マンガを愛する人々が書評で競い合う!
「トキワ荘のまち マンガビブリオバトル」は、マンガを愛する人々が、その思いをプレゼンしあう書評合戦。自分の好きなマンガをひとつ選び、制限時間いっぱい使ってその魅力を観客に向かってプレゼンし、観客が審査するというイベントだ。
会場となったのは、トキワ荘通り昭和レトロ館。ここは、地域文化の発展及び活性化に寄与することを目的に作られた施設で、会場となったマンガピット(有料施設)の中にはマンガが所せましと置いてあり、昭和レトロな雰囲気漂う空間だ。
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マンガ限定ビブリオバトルは、まだ全国でも開催実績は少ないそうだが、マンガの聖地であるトキワ荘の街でもこれが初開催。参加者は一様にそれぞれのお気に入りのマンガを、熱を込めたプレゼンで語っていた。
会場には小学生くらいの子どもからお年寄りまで幅広い世代が集まっており、みな熱心に参加者のプレゼンに聞き入っていた。バトルは5分のプレゼン時間と3分の質問時間とに分かれ、会場からも熱心に参加者へ質問が寄せられていた。
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マンガ教室で子どもたちが四コママンガに挑戦!
区民ひろば富士見台では、子どもたちにマンガの描き方を教える「紫雲荘プレゼンツ マンガ教室『マンガのチカラ』」が開催されていた。
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赤塚不二夫がトキワ荘と並行して部屋を借りていたアパート紫雲荘は現存しており、豊島区と地域団体「トキワ荘協働プロジェクト協議会」が共同で若手マンガ家の支援・育成事業「紫雲荘活用プロジェクト」を展開している。このマンガ教室は、そのプロジェクトに参加しているマンガ家のたまごたちと卒業生が講師となって、子どもたちにマンガの描き方を教えるというものだ。
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このプロジェクトは人気が高いそう。当日は保護者同伴で参加した子どもたちが熱心に講師の言葉に耳を傾け、マンガを描く様子が見られた。
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今回は、四コママンガの描き方をメニューに、起承転結の物語の構成の仕方などを伝授。キャラクターの設定などを考えるためのプロフィールを書き込む用紙や自由に使えるメモ用紙やハンドブックなど、講師たちが手作りで用意した教材を活かして、子どもたちが自分たちの物語の創作に打ち込んでいた。参加した子どもたちの中には、自分でマンガを描いたことのある小から、初めて挑戦する子まで経験は様々だったが、子どもたちのマンガに対する姿勢は真面目そのものだった。
マンガイベントに合わせて地域の催しも
この日は、これらマンガ関連イベントの開催に合わせて、地域の人々主催で「トキワ荘昭和レトロ市」がトキワ荘公園で開かれていた。昔懐かしい射的の屋台などが出展しており、トキワ荘でマンガ家たちが切磋琢磨していた時代にタイムスリップしたかのような雰囲気を味わうことができた。
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なかでも、「バクダン」の異名を持つ「ポン菓子」製造の実演には、多くの人が集まっていた。ポン菓子とは、米などの穀物に圧力をかけた後に一気に開放することによって膨らませた駄菓子のことだ。開放する瞬間に爆弾が爆発するような大きな音がするため、このように呼ばれている。子どもたちにとっては物珍しい機械に米を入れて、中で圧力をかけて開放すると、大量の菓子が出来上がる。出来上がった菓子は無料で配っており、筆者もいただいたが出来立てで温かくとても美味しかった。
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そして、公園内にある「トキワ荘マンガミュージアム」では、「トキワ荘のまち 4コママンガ大賞」の受賞作品が展示されていた。トキワ荘のマンガ家たちの部屋を再現されているので、そうした歴史的な資料と一緒に、受賞者の作品に触れることができるものとなっている。トキワ荘マンガミュージアムでの展示は11月26日まで。
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これらの催しは、この地域にマンガが根差していることを強く実感させるものだった。トキワ荘公園とトキワ荘通りには、マンガに関連する施設やマンガ家ゆかりの飲食店などもあるため、マンガ好きには訪れる価値の高い場所だ。町を散策するだけでも楽しいので、一度訪れてみてはいかがだろうか。