【共通テスト2024】東大生が英語・国語・地理歴史を解いてみた

 今回、東大生10数名が各科目を解き、例年との比較を行った。今回は、13日に実施された科目(英語・国語・地理歴史)に関して、その結果を共有したい。

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試験会場に向かう受験生たち
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 2024年1月13日・14日にかけて、大学入試共通テストが実施された。センター試験から共通テストへと変更されて4回目だが、その中身はどのようなものだったのだろうか。

 今回、東大生10数名が各科目を解き、例年との比較を行った。今回は、13日に実施された科目(英語・国語・地理歴史)に関して、その結果を共有したい。

 まず、東大生が解いて感じたのは、国語・英語ともに文章の中身の解釈を求める問題が急増したことだった。たとえば国語の第3問の古文・第4問の漢文では、和歌の解釈の問題・漢詩の解釈の問題が問われた。特に漢文では、「問6 【資料】を踏まえた【詩】の鑑賞としてもっとも適当なものを、次の(1)~(5)のうちから1つ選べ」というものが出題されており、【資料】と【詩】を交錯させて読解することを求める、かなり高度な読解を受験生に求める問題だったと言えるだろう。その資料のすべてを反映させた選択肢を選ばなければ正解が来ないものであり、実際、東大生でも今回の漢文は解きにくかったという感想もあった。ただし、解いた東大生の中からは「テクニックとして消去法が使えて、選択肢を先に読みながら解けば解きやすかった」という声もあり、難易度は調整されているものと推定できる。

 また、第1問の評論・第2問の小説に関しても同様であり、特に第1問の問6ではこのような問題があったことが印象的だった。

 「授業で本文を読んだSさんは、作品鑑賞のあり方について自身の経験をもとに考える課題が与えられ、次の【文章】を書いた。その後、Sさんは提出前にこの【文章】を推敲することにした。このことについて(i)~(iii)の問いに答えよ」つまり、そもそも作品の鑑賞に関する向き合い方に関する文章が出題され、その上で与えられた文章の感想・解釈をどう表現するか、そしてどう修正していくのか、という問題が出題された。

 この問題に関して東大生からは「見たことのない問題であり、かなり新鮮だった」という感想があった。文部科学省が新学習指導要領で焦点としている「思考力・判断力・表現力」のうち、かなり「表現力」にフォーカスが当てられた問題となっており、選択問題で構成される共通テストの対策といっても、記述力が求められることがおおいに現れた問題だったと言える。

 これだけ国語で「文章・作品をどう解釈・鑑賞するか」が問われた上で、英語でも同じように、新しい解釈についての問題が出題された。

 英語リーディングの第5問において今回課された問題文はほとんど英語の小説と言って良い内容の文章であり、その問題の中身も、今までに例を見ないほど深い解釈を求める問題だった。

 第5問の問4・問5では「Interpretation of key moments」=「ストーリー上重要なシーンの解釈」が求められた。

 「なぜここで2人は押し黙ったのでしょうか?考えられる選択肢を4つのうちから1つ選びなさい」「なぜカスミは『皮肉』という言葉を使ったのでしょうか?4つのうちから1つ選びなさい」というものであり、これは過去の共通テスト・センター試験と比べてもかなり特殊な問題だったと言える。通常、エッセイ風の問題が出題されたとしても、回答の論拠は直接描かれている場合が多く、「英文の○行目にこう書いてあるから正解は(1)」というように選べるものがほとんどだった。しかし今回の問題では、小説のように、文章全体の登場人物たちの心情を読み解かないと答えの出ない、深い解釈を求める問題だった。実際この大問5には東大生たちも苦戦しており、「東大入試の第5問を思い出した(注:東大英語の第5問では、毎回英語小説が課され、その読解を求める問題が出題されている)」という発言もあった。

 英語・国語ともに、今までよりも数段「深い」解釈が求められるようになったと言って良いだろう。

 そして、やはり意見として多かったのは、どの科目も分量が多いということだった。

 社会は、世界史B・日本史B・地理Bともに難易度としてはそこまで高くはなく、1年以上のブランクがありながらも例年よりも高い点数が取れたという東大生もいた一方で、時間に関しては「60分フルで使った」「例年は時間が余っていたが、今回は余らなかった」という感想があった。これは、単純な知識問題の数が大幅に減り、資料を読解させてもっている知識と照らし合わせて解く問題の出題が増えていることが要因だと考えられる。

 その上で、いちばん多く出た意見としては、「英語リーディングの分量がとても多い」ということだった。

 実際、共通テスト英語リーディングのワード数は年々増加傾向にあり、今年は例年よりも200~300語も増加した。ページ数も40ページと例年よりも多く、過去20年(センター試験時代の分量も含む)で見ても、いちばん多い分量となっていた。

参考:共通テストの英語リーディングのワード数・ページ数推移

  • 2021年 約5,500語・37ページ

  • 2022年 約6,000語・35ページ

  • 2023年 約6,000語・39ページ

  • 2024年 約6,300語・40ページ

 東大生でも時間が足りない人も多く、「すべての文を読んではおらず、あやふやでも次の問題に進んで、後から戻る解き方をした。自分が受験したときはそのようなことはしなかったので、今年の問題の難易度の高さを感じる」と述べる人や、「今年の問題で受験していたらと思うとゾッとする」という人もいた。

 一方で、10分時間を残して終わっている東大生もおり、本質的な勉強を積み上げてきた受験生であればきちんと終わるように作っていると言えるのかもしれない。

 総括して、全体的に難易度は高くなってきていると言えるだろう。特に国語・英語に関しては「記述力」「英語小説の読解」という新しい能力を問うものが出題されており、今後受験生たちは今までの受験生と違う能力も求められるようになっていると言える。今後の動向にも目が離せない。

《カルペ・ディエム》

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