「大学における障害学生の受入状況」受験可能大学が減少

 全国障害者学生支援センターは「大学における障害学生の受入状況に関する調査2023」の結果を公表した。自らも大学で学んだ経験をもつ障害当事者の手によって編集・発行された「大学案内2025障害者版」より、在籍状況や受験可否などについてまとめている。

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受験可否の調査結果および過去からの推移
  • 受験可否の調査結果および過去からの推移
  • 受験可大学の割合の推移
  • 受験時配慮ありの割合の推移
  • 大学案内2025障害者版

 全国障害者学生支援センターは「大学における障害学生の受入状況に関する調査2023」の結果を公表した。自らも大学で学んだ経験をもつ障害当事者の手によって編集・発行された「大学案内2025障害者版」より、在籍状況や受験可否などについてまとめている。

 「大学における障害学生の受入状況に関する調査」は、障害学生の進学情報を得る負担を少しでも軽減し、自立と社会参加を促進するための情報提供を目的に1994年より開始。2023年の調査で29年、のべ15回目となる。今回は2023年7月3日~12月5日、全国すべての学校教育法に基づく大学(学生の募集を停止している大学を除く)、放送大学、および文部科学省所管外大学校820校(大学810校、大学校10校)を対象に実施した。回答数386校(回答率78%)。

 調査結果によると、障害学生の在籍がある大学は307校に達し、回答数の80%で前回(2022年)調査時より2ポイント増加。在籍者の総数は1万5,000人を超えた。また、障害学生が在籍する1大学あたりの障害学生の数は平均51.7人であり、前回より増えているという。

 しかしながら、受験可否の状況についてみると、すべての障害で前回調査時より受験「可」が減少。過去6回(2017年・2019年・2020年・2021年・2022年・今回)の推移をみても、2017年から下落し続けている。障害別でみると、特に受験できる大学が少ないのは知的障害139校(36%)、視覚障害166校(43%)だった。

 受験可否を「未定」とした大学にその理由を尋ねると、どの障害種別でも「事前協議後に対応を検討するから」(54%)がもっとも多く、「統一した見解がまとまっていない」(8%)、「設備に問題」(5%)などと続いた。また、「合格しても受け入れられない」(1%)と事実上の受験不可ともいえる選択肢への回答も、視覚で4校、聴覚で2校、肢体で2校、発達で2校みられた。

 受験時の条件について、聴覚障害では「事前相談」が196校(51%)と過半数に達したものの、「試験変更なし」12校(3%)、「新設備設置・購入なし」10校(3%)、「誓約書の提出」「入学後の補助者 大学は関与なし」もそれぞれ3校(1%)みられた。また、肢体障害では「事前相談」が202校(52%)と半数だったものの、「入学時自分で身辺処理」24校(6%)、「入学後は自分で身辺処理」18校(5%)と条件をつける大学もみられた。

 受験時の配慮については、視覚障害(69%)、聴覚障害(72%)、肢体障害(70%)、発達障害(62%)で前回とほぼ変化がなく「配慮あり」と回答。精神障害では「配慮あり」(59%)が2ポイント増加、内部障害(61%)については2ポイント減少した。今回初めて調査した知的障害は「配慮あり」が53%と、ほかの障害と比較し配慮が少ない状況にあることがわかった。

 調査結果の詳細は、全国障害学生支援センター機関誌「情報誌・障害をもつ人々の現在」(ISSN 1883-1532)で公開しており、今回の分析は123号(2024年3月28日発行)に掲載されている。また、大学ごとの回答の詳細は「大学案内2025障害者版」で公表している。なお、データのほとんどの項目は、大学案内障害者版 Webサービスにて公開。全国障害学生支援センターーの「お客様アカウントサービス」でアカウントを作成すると、調査の質問・選択肢ごとに、回答した大学の数(統計情報)が表示される。

◆大学案内2025障害者版
発行:2024年2月13日 
体裁:A4版642ページ 
定価:6,930円(税込)※障害学生割引3,465円(税込)
書籍コード:ISBN978-4-9911821-4-3

《木村 薫》

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