夏休みの「自由研究」。今年は何を題材にしようかと、考えているご家庭も多いだろう。
子供に「あるある」な場面から理科への興味を引き出し、楽しく知識をつけられる高橋書店刊『マンガとクイズで楽しく学べる すごい理科』(辻󠄀義夫著)は、学校の授業につながる学びからサバイバルの知識まで、理科ネタがたっぷり詰まっている。高橋書店の協力により、書籍の一部を紹介するので、自由研究の題材選びの参考にしてほしい。
海水から真水を取り出せ!(化学:蒸留)
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どうしてそうなるの?
みなさんは、海水に塩分が溶けていることは知っていますね。海水に溶けている塩分の濃さは、およそ 3.4%です(海域によって少しちがいがあります)。つまり、海水1kg 中に、塩分が 34g 溶けているということになります。日本は雨が多く、水にめぐまれた国といわれていますが、もし、もっと雨が少なく、年中水不足だったら、どうすればいいでしょうか。
「周りを海に囲まれているんだから、海水を飲めばいい」と思いますか? 海で泳いだことがある人ならわかるかもしれませんが、海水を少しなめてしまっただけで、「うわっ! しょっぱい~!」とびっくりするほど、塩からいですよね。
では、のどがかわいて水を飲みたいけど海水しかない、というとき、海水から真水をどうやって取り出せばいいか考えましょう。海水も真水と同じように、蒸発するのですが、水蒸気になるのは水だけで、塩分は海水中に残ったままです。この水蒸気をつかまえて、水にもどしてあげればいいのです。理科の実験室にある器具を使うなら、次のような装置がいいですね。
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おうちにあるもので海水から真水を取り出すには、下の図のように鍋とコップを利用します。鍋に海水を入れ、真ん中にコップを置きます。鍋のふたを逆さにしてかぶせて火にかけると、鍋のふたについた水滴をコップに集めることができます。
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海水を飲むと、どうなるの?
それでも「のどがかわいたから海水を飲む!」と、塩からいのをがまんして飲み続けると、どうなるでしょう。人の体の 70%は水分でできていて、その水に塩分が溶けこんでいますが、濃さは0.9%ほどです。その体内に3.4%の濃さの海水を取り入れると、塩分をとりすぎた状態になりますね。すると、その塩分を体外に排出するために、取り入れた水分よりも多い尿がつくられるんです。
だから、海水は飲みすぎると、逆に脱水症状になって命に関わることになります。また、塩分のとりすぎは、高血圧やがんなどの原因にもなります。ただ「飲みすぎると」と書いたのは、ある程度の量なら飲んでも大きな問題がない、と確かめた人の記録が残っているためです。その人は実験のためにわざと漂流したんです。海水を真水でうすめるなど工夫して真水を節約したり、つかまえた魚の体液から水分をとったりして、漂流を乗り切った……などの記録があります。大きな問題がないとしても、緊急時以外は試さないほうがよさそうですね。